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ひなた  作者: ひまじん
12/19

魔王とマシンガンと女の子

「おい早く来いっつったろうがぁ!!!」

 突然の、猛り声に一同、身を固くするのみである。場所は、ただの公園_普通の午後_すぐそばで園児が、公園のバネ付きおもちゃに夢中に、なっている。たった今聞こえた、鋭い怒号にびっくりしている様子は、特にない。

「、、、とは、言わないけどっも!」

 眞弥は、言いながら、両腕を腰に置いた。

 えらくえばり調子である。

 その前には、兎瓦けい(確認しておくと、現在は惑星巫天・桂)、一匹のアマガエル、そして、一人の礼儀良さそうな長髪の女の子である_名を 木村優美と、いった。はたから見ると、一匹のカエル(わずか親指ほど)と歳もそんなに、離れていなそうな、女の子3人が何か、重々しい雰囲気で立っている。

 園児の面倒を見ながら、主婦らしき女性は、それを見て呟いた。

「?あら、確かあの子、兎瓦さんとこの、、、。」


 ホオジロザメのビデオを見ながら、坂口浄介は、それと同時に、<世界の神々>をペラペラと高速で、怖い程の集中力でその内容すべてを、頭に入れようとしていた。

<好きになっちゃった>

 邪念が頭をよぎるが、絶対に騙されているの一言で、それを吹き消しながら、の、途方もない作業である。

「ああああ!わかんねえ!載ってねえよ!」

 浄介は、ビデオデッキの扉、その透明に映る、自分の目のクマを確認した。呟いた。

「、、、どこだよ、あさりがわって。」

 ビデオで、今、一匹のホオジロザメの歯によって、ずたずたに引き裂かれたサーフボードの写真が、生々しく映っている。ショッキングなのは、わかったが何秒も、固定し過ぎじゃねえか、この画面に、と浄介は、殴るような怒りの思念を送った。

 なにか、自分がどんどん変人に近付いてる、と怖くなり始めた。やっぱ全部、嘘だと思おう、と思った。

 奈良の彼女は、精神病になったのだ。ああ、かわいそうだ。誰より、奈良がかわいそうだ。あの、変な彼女のめんどう

<好きになっちゃった>

 めんどう、、、。


「、、、どこだべ、ここ。」

 成功した様である。

 あの変な花男が、元の時代に帰してくれたようである。ようであるが、来たことのない場所であった。間違いなく、自分は、この体は兎瓦けいである、と思った。にぎにぎ、と足を触り、すりすりと二の腕をもんだ。あまりに集中して、その作業を行っていた為、行き交う人々は、ほほえましそうにウケた。けいは、真剣だったが。

 制服の女子高生は、街で、眩し過ぎる太陽の光に邪魔されながら、目の前のショッピングウィンドウに映る自分の恰好を見た。

 兎瓦けいだが、

「いや!」

 スカートの先20cmが、めくり上がり腰のゴムにしっかり挟み込まれてある。

 自分が笑われている理由がようやく、わかった。ダサい以前に、これ痴漢じゃねえか、と誰かに謝った。半泣きで、スカートを戻している最中、通りの向こうに目に入るものが、あった。

<スタジオ・HURRICANEPUSH>と書いてある。ミュージシャンが、楽器をガシガシ、鳴らす場所だろう、と思った。けいは、それについて考えることは、それ以上は、なかった。 


 奈良は、本日二度目の呼び出しを喰らっていた。彼の親友にである。

「もう許してやっからよ!お前早く病院行けよ!クマすげえぞ。」

「うるせえよ!もうちょっとで解りそうな気がしてんだよ。」

「いいけどさー。止めた方がいいぜ、宗教は。」 

「宗教じゃねえ!」

 坂口は、それだけはねえ、とばかりに否定した。同じカフェである。奈良は、よく彼女とも来る場所なだけに、ちょっともう飽きてきていた。

 ああーあの、おっちょこちょいで、勘違いしいで、涙もろい馬鹿な、自分の彼女は元気だろうか、と思った。思わず、声に出していた。

「好きだ、けい。」

「しってるしってる。」

 坂口浄介と奈良さとしは驚きで、飛び上がった。

 目の前に現れたのは、ここ最近忽然と姿を消していた、女の子の姿である。

「けい!おめえ、携帯通じねえしよ!?そういうことすると、おれ心配するっていつも言ってっぺよ!」 

「ごめんて。いやよ?いろいろあったんだって。坂口君!よっす。野球部楽しい?」

「、、、!あ、、、!」

「?」

 どうしたのだろう。坂口は、<世界の神々>を読み進めることで、忙し過ぎるようであった。忙し過ぎて、まともな反応を、けいにできなかったようだ。おまけに、顔が真っ赤だ。おそらくよほど根を詰めて、このリサーチ作業に励んでいるのだろう。まったく、感心することだ。


「なあ、あたしってさ、あんなに坂口君に嫌われてたっけ?そんなに喋ったことはねえけどさ、、、。」

「何言ってんだ、おめ!大洗のファミレスでふっつーにあいつと、いちゃいちゃやってたべ!あれな。ああいうのな。おれ束縛とか、そんなん嫌いだけど、あれまたやったら、今度こそ本当に」

「坂口君、彼女できたん?」

「、、、な、は??お前、覚えてねえんけっ?どんだけビッチなんだべか、おめえ。」

「?」

 けいは、とりあえず嘘をつくのが上手な人間ではないことは、誰より奈良が知っていた。奈良は、こいつ、知らばっくれる腕上げたな、と思った。 

「ま、許してやるよ! 一回だけならな!うわあ、まじおれ彼氏の鏡だっぺよ!おれの器、これ銀河系なみだわって話聞けよ、おめえ!」

 けいは、自販機の前で、ジュースを選び始めた。鼻歌である。直感で、思った。

 奈良は、もしかして、あのとき見たのは、けいのそっくりさん、なだけだったのかもしれない。

「、、、おれは、いつものファンタグレープな?」

 けいは、答えた。

「あいよ、ご主人様。」

 夕暮れは、遠くから聞こえる犬の遠吠えと、相性が良かった。一方_。


 眞弥は、あんぱんを食べながら、2人と一匹を自分の部屋へ案内していた。

 チュッパチャプスを分け与えた。一人、三本であった。買い過ぎであった。

 桂は、言った。

「、、、?ねえ、地球様なにこの<殺人禁止>って!」

 ぎょっとしている。人外の存在でも、ぎょっとすることは、あるようである。

 眞弥は、洗い物をする手を止めない。 「、、、。」

「ええええもう一人殺っちゃったんかよ、わたしだったらそんな酷いこと、絶対しねえ。」

 眞弥は、洗い物をする手を止めない。

 カエルは、しゃべった。柚宇の声である。

「桂。あんま言うな。眞弥ちゃん、なんかされたんだろそいつに。」

「、、、殺すかね。それにしても。ひっどいな、ほんとに。」

 木村優美は、にこにこしている。チュッパチャプスうめえ!が脳内を永久ループ三段ジェットコースターだった。言った。

「眞弥、このアメおいしいね?」

 眞弥は、洗い物をする手を止めない。


「あれ??」

 自宅に戻ると、玄関先で、ちなつと自分の母親が、真剣に話をしている。

 けいは、直後に、ちなつに見事なブラジリアンラリアットを喰らわせられることに、なる。

「ぎゃふん!」

「どぉこ行ってたんだ!ばか。死ぬほど心配したっつうの!」

「ちなっちゃん、ごめんて。いろいろよ?あったんだって。あの話したじゃん?変なペットできたって。あいつら野生に帰してきたから。」

「知んねえよ、もう。」

 しかし、眞弥に話は聞いていて、ただごとじゃないことに巻き込まれていることは、知っていた。ただ、我慢できなかった。

「奈良っ。けいを軟禁しなさい。縛り上げて、どこへも行けなくさせなさい。」

 真面目に取って赤くなる、さとし。けいは、即座に反応する。

「いや、そんなんされたら別れるし。てか、もう別れたんだったっけ?な?さとしくん。」

「また、それ!?」

 さとしは、もういいよ、と言わんばかりだった。みさきは、普通に感動して、普通にいい料理を作ってやろうと、思っていた。あれだけ、天地裂けるほど、怒鳴り散らそうと思っていた自分が嘘のよう、である。


「魔王さとざくら。、、、。ほうほう、久しぶりに聞いたわ、その名前。」

 兎瓦けいの外見が、完璧に崩れ始めた<それ>は、今は全くべつの女の子だった。花びらのような、長く太い髪を頭上からたらし、真っ黒いローブに身を包んでいる。かや。あの、ピアノ線娘と顔が酷似している。同じ顔をしていた。コピーした様に同じ顔であった。

 桂は、続けた。

「で?そいつが、この時代に何しに来たの?ゆしにフラれた?」

 眞弥は、口をへの字に曲げて、ゆっくり言葉をつなげた。まるで、しつけのなってない子供を相手にするような表情である。

「たぶん、ヒマ潰し、、、。」

 木村優美は、ぐしゃっとチュッパチャプスをかみ砕いた。まだ、2秒しか舐めてないアメだった。にこやかだが、眉間のしわと、内に潜む怒りは隠し切れていないようだった。

 桂は、「ふうん。」とだけ、言ってまた、<殺人禁止>を見た。


「ねえ、レノン。」

「なんだよ、かや。」

「ねえ、ツチノト。」

「?」

 3人は、遊園地に来ていた。平日開園とともに、やってきていた。この遊園地の売りは、遊園地なのに、動物を観賞できることである。

 かつて、残念なガチャピンの恰好をした少年は、現在は、まったくふつうに決めている。歳相応の恰好だ。ただ、銀を強調しすぎなファッションに見えた。

 かやは、普通にワンピースである。生えていたはずの、二本のピアノ線は、ない。代わりに両耳たぶから、線とその先にマガ玉が、それを象ったものが付いている。

 なんということだろう。ツチノトは、タンクトップに、カエルベルトのままである。ツチノトとは、己と、書く。まさに、己を貫く、ゲイボーイであった。男が惚れる男の鏡である。もう、いい。気持ち悪くなって、きたからである。

「お前はさ!でも、ちゃんとしたの着て来た方がよかったと思うぞ。」

 しかし、ツチノトは黙ったままだった。果たして、彼ほどの漢がいようか。しつこいことを深くお詫びする。

「ねえ、レノン!」

「うるせえっておめえは!用件を言え、ばか。」

「楽しもうね、今日は!」

 ツチノトは口を開いた。

「、、、いい男はいないかしら。」

 残念な内容だった。

 この三人は、この惑星の所謂、生態系を統括する、存在、非生物である。この場合の生物の定義とは、繁殖する能力を持ち、ある程度時間が経つと、老い、やがては死に、腐る。その構成物質を再び大地に返す存在を、指す。

 この三人、もとい惑星守護色期巫天には、当てはまらなかった。ひたすらに、生物の使用、捕食、利用する、すべての惑星資源を、その循環を円滑にし、それぞれの化合物が、元あるべきところに返し、生まれいずる命にそれを分け与える。そんな存在である。

 この度は、事情があって、合計9人のそれは、意識を「従え」今は、ある者は、人間の恰好、ある者は動物の恰好そしてある者は、マシンガンの恰好をしていた。ミニシャチのことである。

 だが、一人まだ登場していない惑星巫天がいた。名を、神岡浄介と、言う。坂口浄介と同じ名を持つ、太陽を丸ごと司る最強の具象である。

「ねえ、レノン!」

「っせえっよ!アホ毛ぇ!」

「大好きっ」


 坂口は、だんだん自分は、頭良くなってきたのでは、ないかと自惚れた。そうでもしないと、もういろいろ「嫌」だからだ。わけがわからない。死ぬほど、煙たいと思った奈良の彼女のことが、頭の隅でやたら、気になるしあの女に聞かされた、フレーズが次々と悪夢のように押し寄せてくるのであった。

 今回の中間テストの結果は本当にひどかった。坂口は、携帯をにぎり、また奈良にうっぷんを晴らしたくなったが、やめた。奴は、今、彼女と楽しくやっていることだろう。あの女、おれを弄びやがった。

<好きに、なっちゃった。 かみさま。>

<この世の、すべては、音。>

<あなたの名前は、私達全員のリーダーと同じ名前なの。>

<デートしようぜ>

<地球様とは

 は、とした。

 もう一回思いだそうとした。

 頭の中の、巻き戻しを連続で押した。

<地球様とは神岡眞弥様のことよ。>

 疲れも頂点の坂口は、もう一度外に出ようと、決めた。今は昼である。もう、学校などどうでもよかった。背中を打つ、母親の切なげな声も全く耳に入らない。近くの公園に向かった。その公園には、草むらがあった。カマキリがいた。坂口は、言った。

「お、おれにケンカ売る気か!?カマキリのくせに、」

 その少年の後ろに、一つの影があった。兎瓦けいであった。

「あっれ、坂口君なにしてんの、こんなとこで!」

「けいちゃん!」

 何かもう、何も悟られたくない。自分の一切の記憶が信じられなかった。

「、、、。 そんな怖い顔しねえでくれよ。なんか、わたしらデートしたんだって?」

 けいは、意地悪な顔で、坂口を見た。

 坂口は、頭に血が昇った。

「やっぱあれおめえだったんけ!!は!もう、いいよ死ね!」

「し、、、!」

 冗談で言ったつもりだったのに、けいは本気でびっくりしてしまった。

「、、、!」

 言ったことを後悔したようだったが、もうよくわからなくなり、坂口浄介は、その場を逃げるように離れた。

 けいは、ひどく、傷ついた。

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