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ひなた  作者: ひまじん
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ギターとマシンガンと女の子

 ギターとマシンガンと女の子


 という題名が思いついたので、ここからストーリーを考えようと思う。

 まず栃木県だな(話がそれるけど、なぜ栃木県は残酷な事件が多いんだい?みんなたまっているのかい?)。 

 そして多分、彼女は映画が好きだ。それも、けっこう玄人肌だ。Mystic River超ふけえ、とか言っちゃう。おれはあの映画、救われなさ過ぎて苦手だ。でも、それはおれの主観だ。

 でも意外と、あたし、アルマゲドン泣いたよ、とかそういう直進的な部分もありーのだ。

 彼女はシャチが好きだ。

 いや、おれみたいに、ちょっとあの子は残念やわー、みたいに後ろ指さされる感じじゃなくシーワールド(あんまり発音したくない。できればシひワールド、とか嫌味ったらしくわざと違う風に発音したい。でも、それはおれの主観だ)で、うおーとか言ってシャチでけえ、とか背びれ折れとるーとかって感じだ。

 ちなみに彼女は、すごく栃木弁が強い。後ろ を 裏 といい、 だいじ を多弁する。どっちかっていうと引っ込み思案な方とは本人談だが、なまりの激しさあいまってどうもそうは聞こえない。PARCOいくべやー、が口癖だ。おれと同じだ。


 事件である。路上で、(ちなみに彼女は高校生だ。あの福田屋の裏の学校。うん、誰もわからないよな。そこが彼女の高校だ。でも考えてみたら、あそこ中学か。いいや、中学滅びた。今、高校。まあいい。)犬が倒れていた。 

 けっこうに彼女は冷たい人間なので、犬が倒れていたところで、犬が倒れているな、以上のことは思わない。発見する前と、発見したあとで、彼女の歩幅もペースも変わらない。そのことが、それを証明している。だが、彼女のリズムを崩す驚くべき、(いや、そうでもないかもしれない。あくまで彼女にとってだ。他の人にとっては、100人中、87人は取るに足らないことだと捕えるだろう)「実際」がそこには在った。その犬、ものすごく眼が充血していたのだ。

 雷に打たれるような衝撃に、彼女は襲われた。

「おい、この犬、眼が充血してんじゃねえべかっっっ」

 宙空に彼女は、彼女のフルヴォリュームを発した。うるさかった。昔、眼の病気を患ったことのある彼女の経験から、眼の具合の悪い相手(動物、人間を問わず)に、どうしようもない母性を発揮してしまうのだ。

 犬の種類は、ハスキーだ。たぶん、1歳半くらいだ。もう、おっきい。


 気付いたら、自分の家に連れ込んでいた。 

 もう何日も食べてないんだろう、一言、その犬の状態を形容するなら、「骨」だった。やつれていた。オンラインで、犬は何を食うのかを調べながら、結局駅前のペットショップで買ってきたドッグフードで間に合わせた。犬は食べた。彼女の気持ち的には、人間でいう風邪のときの「おかゆ」的なものをこしらえてやりたかったのだけど、と自分自身に言い訳を繰り返す彼女に、ぽんぽん、と落ちてくるものがあった。

「は?」

 ここは室内だ。地震が起こっているわけではない。背の高いタンスなどもないから、その上に置いてある不気味な日本人形なども、あり得ない。反射的に、不気味なものを感じた彼女は、即座に部屋を出た。

 自分でも、その行動の早さと、やばい、という、状況判断には彼女自身があきれた。ふと、我に返った彼女は引き返す。どこから何が落ちてきたのか確認してからでも、逃げ出すのは遅くねえべや、なんもなかったら、ちなっちゃん連れてPARCO行くべや

とか思った。 

 この時、部屋を出ていなかったら、彼女の未来は180度べつのものになっていただろう。それがこの娘の人生に、いわゆる幸せをもたらしていたかは、別として。 

 部屋を開けると、彼女は仰天した。しかし、その部屋の中には、自分を見る「眼」があったので、とっさの彼女の動物的反応で、その仰天を表には出さなかった。頭のなか、彼女は今までの自分の人生は普通だったんだなあ、と思うでもなく思っていた。

 ギターがあった。

「鶴の恩返しという話を知っているかね」

 低く響く声があった。さっき落ちてきたのは、ややぼろっぼろ気味のミニサイズのギターだったのだ。もうひとつは、彼女は声と、眼の発信源に、恐れとは違う、眼を向ける。 

「わたしはあれは、非常に」

 そこからさらに、5秒ためた。

「非常にいい話だと思うのだよ」

 声の主は、シャチだった。ただ、彼女は話を聞いていた。

「わたしの名前は、マシンガン。この犬公に、人間の素晴らしき習性、恩返し、というものを実践させてやるために、」

 彼女は話を聞いていた。部屋の中央に居座る、長さ30cmのシャチ(らしきぬいぐるみらしきシャチ)に。

「やってきたのだよ、けい」

 彼女は話を聞いていた。

 間を置いて、お母さんが「けい~、ちょっと夕飯の支度手伝ってちょうだ  言い終わる前に、彼女は返事をする。

「はーい」

 いつもと同じ間で、同じ音量で、何も悟られることはなかっただろう。

 彼女は話を聞いていた。

 そして、彼女のお母さんは、原因不明の割れ目が、テーブルに置いてある彼女の娘のメガネにはしっていることに気がついた。あれまあ、とこのあと起きる仰天とは比べ物にならない、軽い驚きに眼を丸くした。

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