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3.愚痴から自分を探ろう

 あの2話から1週間。人に合わない日などなかったが、答えをみつけて僕は楽になった。物凄く。だけど、それは楽になっただけで、辛さはまだあるし、そもそも新しい問いがまた生まれたんだ。自分を考えるってなんだって? 僕はそういえば、今まで、生まれてから僕を考えられてなかった。早く答えを見つけなけらば、今後、僕は社会を生き抜けられない。僕は僕であり続けられない。そんな思考がぐるぐると回った1週間。

 そんな1週間で起きたことを、ちょっと愚痴ろうと思う。最近、仲のいい友達に何について悩んでるのといわれた。2話でも話した、電話がかかってきた相手。その相手、彼女と呼ぶ。彼女に直接会う日があって、結局なにについて悩んでいるの? といわれた。僕は大丈夫だとしか答えられなかった。だって、そうだろう。僕は側面的に君のことについて悩んでいて、それを言ったところで彼女は何も出来ないし、僕に気を使うだけだ。そう思って、言わないことを貫き通していたら、一言。「私は貴方のことを物凄く信頼しているのに、貴方は私のことを信頼してくれないんだ。それって凄く酷いことだよね」と。僕はやるせない気持ちと、何か心残りが残った。やるせない気持ちは分かるんだ。僕は彼女のことでも悩んでいるのに、なんでそれが言えるんだって。

 あとの心残りはなんなんだ? ってずっと考えて、そこに僕の何かがあるそう思ってた。

 そして、自分を考えるを考え続け、答えが出ないまま、今週には4日間泊まり込みで、彼女達とのフィールドワークがある。僕は自分を考えるのの答えを出さないと、死んでしまうと思った。だから、僕は大人に相談した。その人は先生とも呼べる人。先生ではないけど、先生なんだ。僕はその先生の教室に通っていて、色々学んでいる。フィールドワークもその先生が企画したものだ。彼女達ともその先生の教室で出会った。

 僕は先生に、事細かく、今回に陥った原因と要因と今の状態を書いた紙を渡した。すると、先生はこんなに気にするのは、君のルーツにあるよと言った。ルーツ? って僕はいうと、君は家族思想が強いでしょ? と先生は言う。僕は頷く。

 君の母親はとても強い性格で、父は母親に共鳴するし、兄とは歳も離れていて、末っ子の君は家族の中ではとても弱い。弱い立場で生きてきたんだ。君の意見なんて母親と兄の意見で毎回折られてきたし、君のその流れやすい性格と、他人を尊重する……。いいや、他人を尊重するなんていい言葉じゃない。自分が弱っちいから、他人を気にして、いい言葉を見つけて、いい言葉を言って、仲間を作ろうとしてるんだよ。敵を作らないようにしてるんだよ。だって、そうでしょ。君は弱っちいんだから。何を言っても家族の意見を通されて、そこで自信を失って、家族に順応的なって、そうやって生きてきた。そういう生き方でしか、生きてこなかった。だから、他人を気にしてしまうし、他人を考えてしまう。自分に自信が無いから、自分が弱っちいから。

 君が、彼女達に悩みを言わないのも自信が無いんだよ。彼女達を「信頼」していないんだよ。だって、君は彼女達にそれしきなことを言うだけで、君のことを気にしてしまうと思っているんだろう?

 君は彼女達が変わると、思ってしまってる。信頼なんて全くしてないんだ。君は自信が無いから。

 僕はそう言われただけで、はっとする。先生が言ってることは合ってるって。僕は最近、全ての根本を探ると家族が出てくると気づいていた。今回のことでは出てこないと思っていて、考えてはいなかったが、先生に家族だよって言われて、物凄く納得してしまった。いや、そうなんだ。僕はそうやって、生きてきたんだって。僕はいつも言葉を選ぶ。僕はいつも僕の意見を言わない。僕はいつも否定的なことをいわない。いや、否定的なことなど考えない。否定的なことを考えていうと、人が嫌がるからだ。敵を作るからだ、仲間を失うと思ってしまうと思うからだ。友達を失ってしまうと思うからだ。僕に自信がないから、友達を信頼できない。

 僕は言う。じゃあ、何をすればいいんですか? 分からないんです。僕はどうやって、自分を変えていけばいいのか。

 先生は言う。

 簡単だよ。君は流されやすくて、すぐ頷き、理解もしてないのに、理解した気で友達と話す。友達と話す時に、これは共感できる、これは違う、これは嫌だなって一つ一つ考えるんだ。自分の意見を自分の中で出していくんだ。この世に全ていいことなんてない、自分には自分の考えがあって、他人の発言を聞いて違うと思うことなんて当たり前なんだ。そして、そう思ったことを言う。君が思ったことを言えば、彼女達も本当の君を理解してくれると思うし、そこから君は自分を考え、自分の発言に自信を持てると思うよ。

 僕は苦笑いをして、うわ無理だと言ってしまう。

 その時、先生には言わなかったけど。僕には失敗談がある。今までいい子で皆と接してしまっていたから、彼女達はいい子の僕しか見たことがない。いつの日か、僕は何気に思ったことを言ってみた。ウザがられた、驚かられた、引かれた。その後に、はぐらかした、嘘だよ嘘、冗談だってと。その時から僕はまた殻に籠ったんだ。だから、あれ以来僕は自分を隠している。あれ以来、僕は自分の意見を言う時、深海にいるような感覚になる。音が聞こえなくて、手が震えて、息をしているかも分からない。気づいた。全員だ、全員に僕は意見を言う時、深海の中に入ってしまう。

 だから、僕が否定的なことを言ったら、僕の意見を言ったら、彼女達はどう思うんだろう。今からでも凄い怖い、彼女たちはどんな顔をするんだろう。

 そもそも僕は否定的な考えを持てるのだろうか。いい子が染み付いた僕に。でも、僕はそれが自分を考えるなんだろうって思った。

 僕は今、僕を考えられてる。僕は先生にありがとうございますって言い、その10分後、僕の友達が教室に入る。もちろん会話をする。もちろん考える、共感できるのか、否定的な考えが生まれるのか。そう考えてる時は本当に話しずらいし、ドキドキする。

 でも思ったんだ。僕は僕と向き合えてるし、僕は友達のことを考えられてるって。

 そして、いつか彼女達にも愚痴をいえるようになりたい。この小説で書いたことを赤裸々に。


 前話で僕は僕を見つけられたけど、僕はまだ恥ずかしがり屋だ。だから、僕は僕に自信をつけさせる。その方が、この世界生きていくのに、幾分か楽になる。そんな気がして。

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