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優しき大男ギイヤに助けられ、案内されるがまま10分、砂漠の中に囲まれた街に着いた。
どうやら、街は近くにあったようだ。
門番に声をかけられる。
「許可証はあるか?」
ギイヤは懐からカードを取り出し門番に見せた。門番はうなずくとこちらに目を向けた。
俺は焦った。街に入るのにも証明書がいるみたいだ。
少ししてギイヤがバツの悪そうに助け舟を出してくれた。
「すみませんこいつ、記憶喪失みたいで、何も持ってないんですよ。」
「そうか…入場料は払えるか?1000ゼニだ。」
「金もねぇんだわ…」
「俺が立て替えてやるよ。」
またギイヤに借りをつくってしまった。
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その街は砂漠の中にあるとは思えないほど活気に満ちていた。
「砂漠の街 ポキンチへようこそ!名物ミルミルワームの串焼きはいかがですか~??」
いい香りのする屋台からおっちゃんの呼び込みが響く。「暇人の食卓」と書かれた屋台の裏で料理の仕入れをしているのが見える。よくみると、串焼きにしているのは 先ほど追い掛け回されたでかいミミズだった。
「おーい、そこのお前ぜひ買ってけよ!どうせ暇だろ?あん!?金持ってねーのかよ。」
屋台のおっちゃんは道行く人にダルがらみしていた。接客する側としてどうなんだろうかと思うが、ああいうほうが親しみやすいのかもしれない。それか、もともとデリカシーとかないタイプの人間なんだろう。
そんな時、ギイヤに声を掛けられる。
「すごい街だろ!シルフの加護のおかげでこんなに潤ってるんだからな!」
「シルフ?」
「おい、もしかして四大精霊も知らないのか?」
ギイヤに教えてもらった話では、この世界には火水風土の四大精霊が居て、人や地域はその恩恵を受けているらしい。この町も絶えず吹く風をエネルギーとして栄えているようだ。
「ちなみに俺もシルフの加護で風魔法が使えるんだよ。」
その時、突風にさらされた。俺は腕で顔を囲った。
「大丈夫だよ。ほら。」
恐る恐る腕を下げてギイヤを見る。なんと、ギイヤを囲うように風が吹いている。俺は驚いて口をあんぐりと開けていた。
「おい、魔法見たことなかったのか?こんなこともできるぜ。」
ギイヤはナイフを取り出すと、空中で手を離した。しかし、ナイフは落下せず、ふわふわと漂っている。
「どうなってんだこれ!?」
「すげえだろ!5本まで同時にできるんだぜ。」
ギイヤは誇らしげに言った。
俺にははっきりした記憶がないが、魔法なんて存在しないと思ってた。でもなぜか目の前の光景をすんなりと受け入れていた。魔法は存在する、それは当たり前のことだと思える不思議な感覚だった。
「それよりお前、これからどうするんだよ?」
ギイヤに言われて、俺はハッとした。実はさっき門番に止められたから考えていたのだった。
「とりあえず仕事探そうと思うんだが、ハロワってどこにある?」