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渡り世のストレンジャー  作者: 瓜橙 南
鬼の国/セツの責任
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第51話 前倒しの休息


 カライ国の都、『ヤマワリ』。

 城下町が広がって出来たこの都市はカライ国の中心だ。

 

 ここで言う中心とは、島のという意味ではなく、天下の中心という意味だ。

 常に人通りが多く賑わっており、またそれに合わせてカライ国のあらゆるものがこの都市に集っている。カライ国で手に入るものであれば、ヤマワリでも手に入ると言っても過言ではないだろう。


 それくらい都であるヤマワリは、華々しい発展を遂げていた。




───そんな、見る者を圧倒する様な都に来た4人だったが。

 彼らは今、『甘味処』の看板を掲げた店先にいた。



「いやぁ〜。港にいた時から、すごいすごいとは聞いてたけど……クランタとは比べ物にならないね」

「流石にクランタと比べちゃダメでしょ。こっちは首都なんだしさ」

「とは言え気持ちは分かる。ここに来るまでの賑わいを直接肌で感じたわけだからな」

「噂に違わぬどころか、それ以上の活気がありましたね」


 4人は既にあちこち歩いて来た後であり、休憩がてらに小腹を満たそうと甘味処に寄っていた。


 庇のついた屋外席に座り、談笑しながらお茶と団子を頂く。

 脚に溜まっていた疲労が飛んでいく様だ。


 これも旅の醍醐味。

 絶え間なく往来する人だかりとは裏腹に、満足度の高いまったりとした時間を過ごせていた。



「───そうそう。みんな、この後はどうするの?」


 そうして団子もおおよそ食べ終わった頃だ。

 そろそろ休憩も終わりといった雰囲気の中、お茶を片手にセツが尋ねる。


「……取り敢えず予定は前倒しになるな」

「ねー。そりゃ当然嬉しい誤算だったけど……どうしようね?」


 アハハと笑うリンシーの、喜びと困惑が同時に見てとれた。


 だがそれはそうもなるだろう。

───まさか、あんなにあっさりと目的の物が見つかるだなんて。



 元々はガネッタに聞いた通り、北部の港町まで行って素材を手に入れる覚悟をしていた。

 しかし蓋を開けてみればこの通り。


 ヤマワリだけで全て手に入ると来た。


 流石は天下の中心と言うべきか。鉱石は勿論のこと、資源として使われている素材も当然の様にあった。

 これはなんとも、嬉しいやら拍子抜けやら……複雑な心境だ。


 少なくとも当初立てていた予定はすっかり崩れ去っていた。



「まあでも。こうなった以上、ボクはヤマワリで引きこもるかなー。またかって感じだけど」

「リンシーはそうでしょうね……」

「しばらくは適当にこづかい稼ぎしながら、色々買い漁るつもり」


 カライ到着までの道のりに続いて、ここでも引き籠り生活。しかしこればかりは、そもそもの目的がそれのため妥当だろう。

 聞く前からそんな気はしていた。


 諸々が落ち着くまでは、買って、研究して、稼いで、また買って。

 その繰り返しになっているリンシーの姿が目に浮かぶ様だ。


「なら必然、俺はリンシーの共だ。"館"が必要になる」

「ありがとー。頼らせてもらうね」


 そして研究するにあたり、無くては困る"館"の所有者が居ない訳にはいかない。

 ヴォルスは当然リンシーに着いていくだろう。


 ここまでは概ね思っていた通りだ。


「2人は一緒に行動ね。それじゃアスロンは?」

「私は……ふむ。ヴォルス様が動かない以上、手持ち無沙汰になりますね」


(……うん。こっちも思ってた通り、っと)


 アスロンに関してはもう聞くまでも無かったかもしれない。

 呆れるのも通り越すくらい分かりきっていた返答だ。



 ただそれゆえに、手持ち無沙汰になった後のアスロンがどう動くかは考えていなかった。


「―――ですので、セツに手伝うことがあるのならご協力しますが、どうです?」

「わたし?」


 思ってもいなかった提案に、つい聞き返してしまう。


 何とも意外な……でもないか。流石にそれは失礼。

 ヴォルス第一過ぎるのは否定しないけど、それだけの奴じゃない。

 今もこうして何か手を貸せることはないかと、気にかけてくれている。


「はい。どうでしょう?」



 セツは少し、考える素振りを見せた。


 別に無しではない。

 実際やりたいことはあるし、手伝って貰えそうな部分もある。

 だが、心は決まっていた。


「気持ちだけ貰っとく。わたし1人でしたいことだから」

「そうですか。では陰ながら応援してしますよ」

「うん。ありがとう」


 今回ばかりは、自分の力で成し遂げたかった。




 ◇


「───それじゃ、わたしは暫く単独行動するわ」

「オッケー。がんばってねー」


 店から出た4人は早速、それぞれの目的のために別れようとしていた。


「……3人とも分かってるだろうけど、消息を絶つのはやめてね? 絶対に連絡は入れること。わたしも定期的に宿には顔出すから。特にヴォルスね」

「分かった。何かある時は連絡を入れる」

「よろしい」


 この親子かと言いたくなる様なやり取りも慣れたものだ。

 旅先で別行動をする前はいつもこうしている。


 自分でしておいて何やってんだ、と思わなくもない。だが毎回言っておかないと、自由過ぎて唐突にフラッといなくなる奴ばかりなのだ。


 だからこうして釘を刺しておく。

 ……全く、子供が出来た様な気分だ。こう思うのもしょっちゅうではあるのだけど。



「では、私もこれで」


 そうこう話してるとアスロンも別れを告げてきた。

 アスロンも、セツ同様に単独行動をする予定だそうだ。


「先程話しました通り、私は観光地や名物など諸々調べておきますので、皆さんは気の済むまで成されたい事を為されて下さい」

「いつも助かるよ」

「ありがとねー、アスロン! ちょくちょく帰ってきて報告聞かせてよ? 息抜きにもなるし」

「お気になさらず。私がしたいと思った事ですので。リンシーも、毎日夜までには戻りますから」


 快く、といった様相で頷いていた。




「―――2人共、また後でな」


 ヴォルスにそう言って見送られる。

 横にいるリンシーと一緒に手を振っていた。


「ええ、また後でね」


 セツも手をヒラヒラと振る。


 アスロンの方は進む先が反対方向だ。

 振られた手に一礼を返すと、遠ざかっていく。



 それに背を向け、セツもその場を離れる。


 ここからは1人。

 旅先で別行動を取ること自体はよくあるが、今回はいつもとは心持ちが違う。


「ふぅ……気合い入った」

 

 自分の信念の下、成し遂げたいことがある。




「よし、行こうか───『剣術大会』!」

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