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突き刺しから始まる恋?


「はぁ……やっちゃった」頭を抱えながら少女は呟く。


 真島高校一年三組。そこに在籍している久地 アイ

は自席で自責の念にかられていた。


 先ほど、しょくぱんをくわえながら走っていた少女だ。


 刺す相手を間違えた。本来はあの後ろにいるスーツの男を刺す予定だったのだ。あの少年が飛び出してきたからそのまま勢いでヤッちゃったのだ。


「あ〜どうしよどうしよ……」もし死んでたりなんかしてたら、大変なことになる。ただ、刺したあとにドスを思い切り捻ってはないから死んではないかも……。それでも重傷なのは間違いない。


 しかもしかも。しょくぱんを現場に置きっぱなしにしてしまった。なんで拾わなかったんだろう……。


「あたしのばかぁ……」机にゴンゴンと頭を打ち付け、

更に落ち込む。


 放課後にでも、自首しなきゃ……間違えたとはいえ無罪な一般人を刺してしまったんだもの……。


「はあぁ……」更に深いため息をつく。


「よ、朝から元気ないね。どったの?」


 そう話しかけてきたのは一年二組の芽里家めりけ さくだった。友達……というよりは腐れ縁的な幼馴染だ。小中高一緒なのと、放課後食事に行くだけの中だ。


「いや……ちょっとヤリ違えちゃって」私はつい喋ってしまう。


「ほほー! 朝からお盛んですわね〜」サクは何かを勘違いしてニヤつき出した。


「いや違……まあいいや」勘違いさせておこう、そっちのほうが都合がいい。


「まあ、これ喰って元気だせよ」とサクは口にココアシガレットを差し込んできた。


「ありがと……朝ご飯食べるの忘れてたわ……てか今日の格好なにそれ」私は顔をあげてサクを見る。


「お、よくぞ気づいてくれました。似合うっしょこれ」彼女はスカジャンを着ていた。ちょっとした不良が着ていそうな奴だ。黒を基調として両腕には白い1本線の模様がはいっている。


「ほら、この虎ちゃんもいいっしょ」サクは後ろを向いて見せつけてきた。たしかに背中には虎の絵が刺繍されていた。ただその虎はニ頭身にかわいくデフォルメされ、招き猫のポーズをしている。さらに吹き出しで「がお〜」と刺繍がついている。

 

「えっ、かわいい……じゃなくて。よくそんなの学校に着てこれるね……先生に取り上げられない?」真島高校はおおらかな校則で私服は許可されている。けれど教師がダメと判断した服装は取り上げられる。


「まーそんときは逃げればいいっしょ」


「それで何回捕まって取り上げられてんのよ」


「ほらおまえら〜朝のHRはじめっぞ〜」ガラガラ、と担任が教室に入ってきた。


「あ、やっべ先生来ちゃった」とサクは私の隣の空席に座る。一月前に席替えしたとき、転校生が来るからと空き席が作られていた。


「いや自分のクラスに帰りなさいよ」私は軽くツッコむ。


「おはようございます」担任が挨拶をする。ガタイが良い体育教師で、通称ゴリ先と呼ばれている。見た目からしてすぐ怒りそうだけれど、全然怒らない。


「「「「「おはようございます〜」」」」」教室の生徒全体が返事をする。


「声が小さいな。まあ返事してるからヨシ。ちゃんと朝飯はたべたか? もし食べ忘れた奴いたらキャロルーメイツやるぞ。腹ぺこで授業受けても身につかないからな〜」と携帯固形食料の箱を振りながらゴリ先は言う。


「はい!」サクが勢い良く手を上げる。


「お前クラス違うからやらん。てか二組に帰れよ」


「あ~私じゃなくて、隣のアイが朝ご飯食べてないっす」


「はい?」急に呼ばれた私はキョトンとする。


「アイ、食べてないのか?」


「あ、はい。食パン食べ忘れちゃって……」


「じゃあほら。遠慮するな俺の奢りだ」しゅっ、とブーメランのように箱を投げてよこす。


「ありがとうございます……」と私はぱしっと片手で受け取る。


「よし、それは今食べていいぞ。おいサク、ココアシガレットは食べるな。てか帰れ」


「うぃっす」とサクは素直にシガレットの箱をポケットにしまう。帰らないけれど。


「えーで今日はみんなが待ちに待った転校生がやってくる日です」とゴリ先は言う。


 おおおっ、と教室全体がどよめく。


「待ってました!」ぱちぱちと拍手しながらサクは喜ぶ。


「お前関係ないだろ帰れって」ゴリ先は言う。ただ言うだけで追い出しはしない。


 そんなに喜ぶことかなぁ、と私はもそもそとキャロルーメイツを食べながら思う。あとこれぱっさぱさ……飲み物ほしい……。


「ただ……ちょっと事故にあって遅れてるらしく……あと少しでくるはずだから、そのあいだ朝の連絡するぞ〜」とゴリ先は話し始めた。


 (そういえば、私が刺した人……うちの制服着てたような……? まさかね……。ああ、水飲みたい……)先生の話を聞き流しながら考える。


「遅れてすみません!!!」バァン! と教室のドアが勢い良く開き一人の男子生徒が入ってくる。



「ぶっ」その生徒の顔を見たとたん私はむせる。


 それは……私が今朝ドスをぶっ刺した少年だった。


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