一話
頂きます
パシュッ
パシュッ
「兄ちゃんっ、野菜ニンニク背油マシマシで」
「了解ー」
あまり覇気がない青年はおっちゃん注文に対して覇気のない返答をした。
しかし、この青年こそ、後に異世界で次郎省の大臣にまで昇り詰める男こと、皆守次郎であった。
皆守次郎という男、それすなわち、次郎系ラーメンを愛し、それ以外には全く興味がない男!
故に、同じく次郎を愛する者たちから、愛される男!
おっさん(次郎を食すもの、その体を次郎以外に向けず)
おっさんはそう心の中で思うと、黙って次郎系ラーメンを食べた。
そう!この次郎の店内では次郎を注文すること、そして、次郎を食すこと以外の行為は言語同断!
もちろん、水を飲むことも許されない。
おっさん「ご馳走さん」
おっさん(今日も愛も変わらずうまい次郎だった)
~22:00 次郎閉店~
「お疲れさまでした」
今日もいつも通り、お客様に次郎を提供した皆守次郎にアルバイトの高校生が挨拶をした。
そのあと、皆守は一人で明日の次郎のために仕込みを始めた。
皆守「明日のために仕込みを始めるか」
深夜、静まり返った店内で皆守は下処理を施しておいたゲンコツをゆで始めた。
そう、皆守は次郎のスープの手入れを始めたのだ
皆守「・・・」
皆守はゲンコツを下茹でする20分の間、一言も発せず無言であった。
皆守(灰汁が出てきたな、取り除くか・・・)
皆守が灰汁を取り除こうと思ったその時!
ドゴンッ!?
ものすごい大きな音とともに店の入り口扉が割れる音がした。
しかし、皆守は全く動じることなく、スープの仕込みを続けていた。
皆守
そんな皆守の前へ35センチほどの長物を持った男性と大きな袋を持った男性が現れた
「おっ おい! そこの男 金を出せっ!」
刃物をもった男は、厨房にいる皆守に対し、怒鳴った。
しかし、皆守はまったく動じずに仕込みのスープを見ている。
「へへっ、 おっ、お前 これが目に入らねえのかよ! ああああ! 黙ってねえでなんか言ったらどうだ。 もやし野郎がぁぁぁ!!!」
刃物を持った男はさらに大きな声で叫んだ。しかし、皆守は、まったく動じることなくスープ上の灰汁をとっている。
「親ビン、あのもやし野郎俺たちで痛めてあげましょうよ」
「あ”ぁ それはいい なぁ(ニチャア)」
次の瞬間、強盗たちは皆守に襲い掛かった。
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皆守「ん・・・」
次郎店内にいたはずの皆守は、ある街の中にある公園のべンチに座っていた。
皆守(あぁ・・ ものすごい寝たような感覚だ・・・。 しかし、さっきまで俺は明日の仕込みをしていたのでは・・・)
あたりを見回すと、そこには、見た目は人に似ているが耳が長くとんがっている生き物や、肌の色が水色で角が生えている生物がいた。その他にも、様々な人ならざる生物が多々目に入った。しかし、皆守は次郎に関すること以外には興味がないため、そこまで驚かなかった。
皆守(まあいい・・・・・・店に戻るかと、言いたいところだが、どうも見慣れない地域だ。)
そう考えると、皆守は近くにいたホモサピエンス族の女に現在地について尋ねた。
皆守「ねえ、そこの人」
そう皆守が女に呼びかけると、ホモサピエンス族の女性は自らを指さし
「私ですか?」
と言った。
皆守「そう、あなた。 突然で悪いけど、この町の名前って、なんだっけ?」
皆守は覇気の声で尋ねた。
女「えっ!? アッ この町の名前? ・・・ここのまちはフォレストタウンよ」
女は突然の質問に驚きながら答えた
皆守「ねえ、市役所に行きたいんだけど、道案内してもらえない?」
女「えっ!?道案内!?」
皆守「そう、道案内」
女は少し嫌そうな顔をしながら
「聞き返すようで悪いんだけど、しやくしょって何?」
女の予想外の質問に皆守は少し驚きつつも
皆守「市役所っていうのは、その地域の住民の情報を取り扱っているところだけど・・・うまく説明できないな・・・」
女「あー! あれね! ギルドのことね。 分かったわ、案内してあげる」
~10分後~
皆守はホモサピエンス族の女性に案内されてギルドに到着した。
ギルドの中に入ると皆守は近くいた屈強な男に受付の場所を訪ねた。
皆守「あのーすみません」
男「おっ 兄さん何ンかようか? 内容によっちゃ、高くつくぜ」
屈強な男はモンスター討伐の依頼をされたと勘違いしていた
皆守「? いや、この施設の受付の場所を教えてもらえないでしょうか?」
男「お”お” 受付の場所を教えてほしいのか。受付はあそこだぜ
まあ、わりぃことはいわねぇが、無理だけはすんなよ」
皆守は男が指さした方向へ歩いていき、窓口っぽいところに座っている女性に話しかけた
「あのー 受付ってここであっている?」
女「はいっ 合っていますよ。 本日はどのようなご用件でしょうか?」
皆守「いやー・・・」
皆守は自分が、ついさっきまで仕込みをしていたし、現在地についても全く覚えがないことを言ったところでかえって混乱を招くだけと考え、
皆守「道に迷ってしまいまして、地図とかもらえないでしょうか?」
と言った。
女「はいっ 了解しました。この町の地図でよろしいでしょうか? えーと地図地図地図はどこだ」
そう言うと受付嬢は机の下を漁り、地図を見つけた
女「はい、こちらが地図となります。」
受付嬢は皆守に地図を渡した
「ありがとう」
皆守はそう言うとギルドを後にした
〜三十分後〜
皆守(大分歩いたけど、何もない森に来た感じかぁ)
皆守は、この世界を探るべく北向きに歩いたが、気づいたら何もない森にいた。
そこに金髪褐色小娘がいきなり声をかけてきた
女「おい、そこのお前、うろちょろして道に迷ってるようだが、アタシが街まで案内してやろうか」
褐色の小娘は何かしらを企んでるようだ
女「お前さん、ここいらじゃあまり見ない顔つきだな、どうだ500ペニーでアタシから情報を買わないか」
突然見知らぬ人に声をかけられたが、皆守は至って平穏である
皆守「んー、情報はほしいけど、その500ペニーってやつがないから、情報はいらない」
女「そうか・・・」
皆守「気にかけてくれてありがとう。そして一つ聞いていいかい?」
女「おうよ、何でも聞くといいぞ。常識の範囲内でだけどな!」
金髪小娘がそう言うと皆守は以下のように訪ねた
皆守「この世界に次郎系ラーメンってあったりする?」
皆守の突拍子もない質問に不意をつかれたのか、褐色小娘は目を見開いてキョトンとした
女「じろう... 何だそれ!? 聞いたことのない言葉だな」
褐色小娘の言葉を聞いて皆守は悲しそうな表情になった
皆守のかなしそうな表情を見るとすぐに褐色小娘は言葉を続けた
女「あっ、そのじ...ろーってやつは何なんだ?」
皆守「次郎はラーメンっいう食べ物。おいしいよ。」
女「そうか、じろうはうまい食べ物なんだな。よかったら、アタシにも食べさせてくれよ。ここ二三日何も食ってなくて腹ペコよ」
褐色娘本当にお腹が空いているようだ
皆守「いいよ、俺の次郎を食べさせてあげる」
ご馳走さま