グルーバー
吉田もとみは、一生を遊んで暮らせる身分となったのだが、
まだ30を少し超えたばかりの年齢な男が、
神戸近辺の大都市から、地方都市に引っ込んだ仙人のように
静かに何もせずに隠遁生活を送れるわけもなく
暇だったので学生の頃から道楽でやっていたギターの弾き語りを再開し、
ライブハウス ツアーをして半年間、
暇つぶしをする事を思いつき実行に移した。
住んでいるアパートから ほど近い
神戸元町や中華街近辺に出かけてブラブラしてみたり
阪急線で梅田に出て、そこから地下鉄を乗り継いで
アメリカ村近辺に出かけてみたりしている内
関西近辺ライブハウス・ツアー・パックの広告チラシとかが眼に入る
ジャズとかで 数人のアンサンブルで アドリブ名演応酬をしたり
クラシックとかの、いかに古典音楽を楽譜通りに再現して
古の芸術を演奏したり
とかをするような演奏能力は無いので
自分の歌いまわしと手癖で弾くギターで
”これは これで 味があるでしょ”
と言い張りながら演奏してみるくらいにしかならなかった
そんな下手を演奏させてくれるような所なんてあるのか
とも思ったが
金を出してチケットを自分で買い取って自分で売れば
誰にでも演奏させてくれるライブハウス・ツアーを
受け付けている仲介イベント会社のチラシで電話をかけ
客にうけない演奏だと曲数が減って、
うけると曲数が増えるルールのツアーパックを見つけ
そこへと連絡して、事実上、決定権を持っている運営者である
イベンター内輪の親方の前で練習した曲を歌う
コードも曲の構成も、そんなには複雑じゃない
70年代のウエストコースト・フォークっぽい曲だ
「えーっと 吉田くん ゆうたね
ここらへんに馴染みとかは無いみたいやな?
ワシラが ライブハウスツアーやっている地域とかはやね
ハイテンション パンクを演奏するのを聞きながら
鬱憤晴らしに騒ぎ倒すって客層な店が多いんよ
盛んな学生スポーツとかも、
野球とかのチームスポーツじゃなくて
柔道とか空手とかレスリングとかボクシングとかの
1対1の格闘技ばかりでな
他のトコやと運動神経がいいのんが憧れるゆうたら
プロ野球選手とかの花形プレイヤーになるんがエエ
ってなるんが普通やけど
ここらへんやと、とにかく強くなって勝てるようになって
格闘家やプロボクサーとかになりたいゆう子供が多いねん
そやから、ここらの高校で全国大会レベルなんも格闘技部活
どっちが強くて勝ったか弱くて負けたかだけを競う感覚
わかるやろか?個人プレイ格闘技の勝ち負けだけな感覚
しゃべりの感覚も同じでな、ドツキ漫才とか見た事あるやろ
あんな感じで言葉の格闘技するんがオモロイゆう感覚やから
”目立ちたい一心で大きな声で主張するように歌えや”
てなリクエストをした後に同じ人間が
”何をホンマに、そうしてんねん
やかましいだけやん、しばくど”
って突っ込んでくるとか。
鬱憤晴らしヤジをブッコンでくる客だらけやねん
ステージで とりあえずボケMCしたら
いやボケたつもりなくてもボケや思うて
客席から思いも寄らぬ突っ込みが入るような店なんやけど
大丈夫ぅかぁ? 相手しきれるぅんか?
そういう客とか、そういう客に慣れてる店員とか相手しきれそか?
アコースティック・ギターでの弾き語りか・・・
ま、やる気があるなら、かまへんで
チケットを買い取って売りさばいてくれれば
こっちとしちゃ銭になるんやから」
関西ライブハウスツアーパック内輪の親方
というか仕切っている座長役らしいイベンターさんが語る
「そうですねえ、どんな感じか、やってみますわ」
そう返事をした瞬間から内輪に混ざる事となった
「えーと、ワシらのイベント会社社長も吉田ゆう苗字でな
まぎらわしいから、ヨッチャンでエエよな内輪の呼び名」
そして、その内輪内での名前で呼ばれる日々が始まった。
実際に関西地域縦断ツアーに出る前に
ツアーに出る人々がホームグラウンドのように出演している
神戸は神戸でも外れた所にあるライブハウスで
出演者の知人友人ばかりを集めた格安入場料のリハーサルナイト
吉田の出番は、客が全部入り切っていない午後5時から
箸休め前座という感じで客の雑談を邪魔しない感じで
客が ある程度に入るまで弾き語り
午後6時の開演時間になると、ツアーパック主役な人々が演奏開始
下ネタ満載コミックエロパンクバンドが出てきて一曲目を叫ぶ
♪ エエ カッコウしいの東京のバンドが、なんぼのもんじゃーい
待ってましたと数人がヘドバンをしたり飛び上がったりしながら
一緒にシンガロング
♪ なんぼのもんじゃーい、なんぼのもんじゃーい
色んな事を吹っ飛ばせといった感じで繰り返す
耳に懐いて離れなくなってしまいそうだ
その後も、”別れても やりたい人” とか
”お め え こ のやろう”とか ”自分の中に入っとるで”だのと
”はーど ふぁっかー ぎゃる”だのと
歌詞自体が、刺激の強い言葉中毒な人が集まって
どんどんエスカレートして、エロAV実況のような
放送禁止用語だらけなエログロ歌詞なパンクロックを歌う
バンドの知り合いだろう刺激の強い言葉中毒の仲間が
もっと過激な言葉を合いの手で入れて内輪で盛り上がる
オシャレで洗練された感触の綺麗な音を出すバンドとかはおらず
最後のトリのバンドまで、
何組かのハイテンション縦ノリパンクバンドが出て来て
勢いで演奏して場の空気が過熱していった
関西地域縦断ツアーとは言っても有名店で演奏できるわけも無く
怪しいオッサンがブラブラしている十三駅あたりの店や
加古川や姫路方面の、兵庫というより岡山に近い店や
滋賀の琵琶湖に近く。
彦根城やら安土城跡地やらの戦国時代遺跡が並んで
その景観を破壊しないための条例がある地域
よりは雄琴温泉に近いライブハウス
寺がズラっと並び、石を投げたら僧侶の親戚に当たるような地域の
独特な空気感というか、街自体が線香の煙に包まれたような感覚が漂う
奈良・京都の一部地域の店
阪神線沿線の、タイガース中継ポスターだらけの街並みの中
TH帽子をかぶった虎キチのオッサンが甲子園帰りに
阪神の話をしながら飲んで騒ぎに集まるようになった
音楽なんか誰も聴いていないような阪神線沿線の店やらと
暇な金持ちオーナーが道楽でやっているような店ばかり
そんなライブハウス・ツアーをやっている内に
現地で客演した人々の中で知り合ったのは
親が地方都市で大きな店だか会社だかを経営しているから、
いつかは田舎に帰って店というか家を継がないとならないけれど
まだ親が健康で元気なので、若い内は神戸や大阪などの大都市近辺で、
自分が思いつくままに好きな事をやっていいよと親が許してくれているという
親がオーナー社長や大地主などの凄い金持ちなボンボンやら御嬢様やらだった
そもそも洋楽コピーを演奏するにしても
完全再現するのに必要なギブソン レスポールやら
マーシャルのアンプやら、エフェクターやら、キーボードやら
金が無いと買えないし、練習スタジオ代も安くないんだから
スポンサーの親に金を出してもらえるような人じゃないと無理
同じようなボンボン御嬢様が集まる
親が金を持ってないと入学できないような
私立大学に一応在学中らしい
(何年も留年して、なんちゃって学生に近いとはいえ)
音道楽を楽しんでいるボンボンの一人と仲良くなって
その内輪が集まるライブハウスに定期出演するようになり
刺激の強い言葉中毒パンクバンドツアーからは離れた。
ボンボンや仲間のタムロする居酒屋とライブハウスが
くっついたような店に入り浸るようになって
なんとなく関わる人間が固まっていく。
「昔、若い頃に書いた曲が、いまだにカラオケでは唄われていて
二次使用料とかいうので毎年、金だけ入ってくんだ
でも数年前に書いた曲が全然売れなかったから
いくら新しい曲とかを書いても相手にされない。
若い頃に関わったサウンド・エンジニアのオッサンを見て
”なんで何もしないでいるんだろうな
もっとアレコレと、何か、やればいいのに”
と不思議に思えたいたけど、今となっては口癖のように言ってた
”どうやったら余計な事をやらないようにできるか”
っていう言葉の意味が理解できてしまうようになったんだよねー
最近はカラオケだけじゃなくて
動画配信の二次使用料だかも入ってくるようになった事だし
余計な事を、やらかさないために
”無駄銭を使う歯止めになって
怨恨関係に進展しそうな、危ない人間関係も抱える事も無くて
内輪の酒とか博打とかも無い”
三拍子、揃っているのが、こういう店での暇つぶしでな
でも、たまーに、こういう店に入り浸っちゃ駄目なのが
紛れ込んでしまう時があるんだよな
”現場に行って、親方に怒られないように
職人作業をしないと一円にもならないんから
こんな所に来ている時間を増やしたら
職人仕事や貯金が無くなって貧乏になるだけだから
自分は、こないなトコに来たらアカン”
そう言わざるを、えないのとかな。」
何曜日の何時に来ても必ず店にいるオッチャンが
いつものように口癖を言う
”そういや、このオッサン、オーナー店長なワケでも
店員さんなワケでもないのに
なんで、この店にパチンコ屋の住み込み店員みたいに、いついて
年中無休の24時間営業コンビニみたいに、おるんやろな”
と最初は思うものの、オッチャンの口癖を聞く内に
”まあ、こういう生き方をしても
なんとか、なってまう人生ってのも、幸せ なんかな”
誰もが、そんな事を思うようになっていた。
毎年、NHK大河ドラマ撮影場所地域への旅行とか
5月から8月まで日本に来て出稼ぎ外国人のように働いて
物価や税金が日本の3分の1以下な国で生活している人が
日本での出稼ぎ作業中に住む宿泊所の雑用係をしたりとか
秋の学園祭シーズン、クリスマス・パーティー・シーズン
新年会シーズンの間だけ、ツアーをする人々の手伝いとかをして過ごす内に
あっという間に10年という時が過ぎ
今年で2000年代が終わり来年から2010年代が始まる時期になった
サブプライムとか、リーマン・ショックとか
ITバブル崩壊の時より凄い暴落が発生したらしい
こういう生活を送るようになってからも
たまに、また株とかを買ってみたくなったりした事もあったが
1990年代後半に2万円くらいだった日経平均が6千円台になるような
惨状が昼間のテレビのワイドショーで騒がれているのを眼にすると
”一生に一度のマグレは二度は無いから、
調子に乗って、もう一回やったら
高く買わされて、安く売らされて失敗して金を無くし
やらない方がマシだったと後悔するだけ”
というような事が心に浮かんでいて、
それに従っていたのが正解だったのだと思えてくる。
そして週末だけ来ていた若い会社員が
失業して仕事探しの合間に曜日に関係無く来るようになって、
「株でもFXでもいいから一発当てて遊んで暮らしたーい」とか
「どこかの資産家一族ボンボンの嫁になりたーい」とか語るようになる
ほとんどの人が夢物語で終わる話だ。
同時に地元地域密着型の同業者団体で
経営者というか実業家として、やっていけている人が
いい高校を出て、いい大学を出て、上場企業で働く
決定権を持っている大企業の社員持ち株会に入っている管理職との
つきあいで抱えた有価証券取引損を抱えたグチを語りあう
そんな世間話がBGMのように流れる週末
”飛び入りセッション・ナイト”という名目のイベントが開かれた
馴染みのあるボンボン御嬢様がギターやら電子ピアノやらを弾いたり、
アドリブで鬱憤ブルースを歌ったりして時間が流れていく
「というワケで吉田ちゃんが歌うそうでーす。」
一瞬、自分の事を言われたのかと勘違いしそうになったが
すぐに同じ苗字の女が歌うという事がわかった。
席では仲間らしい女が、自分が今、遊んでいる男の事を
所属する会社の株とかの話に例えて雑談に夢中になって
唄なんか聴いていない
アメリカ西海岸に本社のある会社の日本法人の男と
関わっている女がアメリカIT株の話をしていたり
新興IT企業株の話ばかりになったり
やっぱり伝統的な有名大企業だよねと
誰もが知っている大企業株の話になったり
不動産投資をして家賃収入で生活している
資産家一族の男を捕まえた女とかが
毎月分配投信リートの話をするようになったりと
内容は変化していくが、話し方は同じ
誰が一番大きな声で長い時間、
話していられるかを競争しているかのような話し方だ。
店の ”飛び入りセッション・ナイト”定番曲に乗せて
毎度のように、あそこらへんの御嬢様とかが唄っている
学校内の内輪あるある替え歌の歌詞を
同じ苗字の、”吉田ちゃん”が唄うのが聴こえてくる。
・・・
吉田ますみは、どんな日常を送っていたのかというと
月曜日から金曜日まで
昼間は職安で見つけた小さな会社で電話番 兼 お茶くみ
アパート敷金や礼金、目先の生活費として借りた借金を返し終わり
少し貯金が出来たあたりで株屋が、何事も無かったような顔でやってきた
「ITバブルの時は残念だったねー
一番高い時に手仕舞いできなかったのは失敗だったよねー
でも、今回、9.11テロで安くなった軍需産業アメ株は
しばらく勢い良く騰がるから」
と言っていたが、テロ後10月末まで下がって翌年3月まで上昇後は
ミサイル開発会社も、遠隔操作無人飛行機の会社も、偵察用通信衛星会社も
アフガン紛争やイラク戦争中も騰がりも下がりもせずに横ばい。
フセインが死刑になった頃に、衝動的に売ったら上昇した。
そして現金が出来たのを見越したように再び株屋がやってくる。
「数年前、アメリカのドットコム・バブルで株式分割を繰り返して
バブルがエスカレートしたのと同じように
日本の新興IT株が株式分割をして上昇しますから
株式分割しそうな新興IT株を買いましょうよ」
と言ってきた。どうせ、ガセだろうなとは思ったものの
株式分割が発表されて上昇する株が度々、高値をつけていったので
2004年11月にネット広告会社株を200万ほどで買ったら
6000万円になった。
それを現金にした途端、ボンボン御嬢様学校にいた時の
元同級生との飲み会で会った事のある税理士やら不動産屋やら
先物取引業者やらが電話をかけてきた。
個人情報保護法なんて無い頃だ。
株屋が仲間のセールスにカモとして嵌め込んだ自慢として
ベラベラと電話番号やら住所やらを話したのだろう。
あまりに、ひっきりなしに押しかけてくるので
アパートにいるのが嫌になって
夕方から深夜にかけて居酒屋ライブハウス店員、
金曜の夜から月曜の朝にかけてコンビニ店員
ほとんど平日も土日も、昼も夜も無く働いて
余計な事をやるより働いている事がいいと
自分で自分に言い聞かせて過ごしていた。
”えー、こーんなに税金や社会保険料で
金を持ってかれるのーっ”
ていう思いを翌年して、株とか馬鹿馬鹿しくなった頃に
再び株屋がやってきた
「グローバ・リートっていう金融商品が
2004年から売り出されたんですけど、知ってます?
何年か前にグローバ・ソブリンという
毎月分配金が貰える投資信託が発売されたのの
不動産債権が組み込まれたものなんですがあ
ずーっと右肩上がりで2006年3月まで来てますから
まだ、上昇しますよ。どうでしょう?」
12000円くらいだった取引価格が
翌2007年2月に18000円ほどにまで上昇
”どうせ、奴が勧めてくるのは、そろそろ高値ピークで
いつ暴落するか、わからない金融商品だろうから売りだろうな”
と売ったら2009年3月に取引価格が3000円台をつけるまで
サブプライム騒動、リーマン・ショックで暴落していった。
2009年4月のとある夜、居酒屋だかライブハウスだかの閉店後
御嬢様が学生時代の音楽サークル内輪での練習曲を弾きだして
「誰かアドリブで適当な歌詞をつけて唄ってみて」
その言葉を聴いて舞台に上がる
「というワケで吉田ちゃんが歌うそうでーす。」
酔っ払った勢いの思いつきを唄う
♪ 無邪気に話していたガキっぽい言葉が 今となっては不思議
とりとめもなく 思いつくままに一緒に過ごした時間
互いに相手への感謝を少しずつでも伝えてたら まだ一緒に居たかな?
でも もし今 会ったら君は言うだろう そんな事 もう今更 どうでもいい
今を生きたいから 過ぎた事を 今更 言わなくていいから
二度と会う事なんてないだろうけど できるものなら もう一度
僕が主人公の物語から君は出て行って 二度と現れない事を知っている
♪ はるか彼方の過ぎ去った暑っ苦しい日 二度と戻ってこない瞬間
あの時 あの場所に あったように思えた不思議な魔法
何故か心に湧いた今は忘れた衝動を我慢できたら まだ一緒に居られたかな
でも もし今 会ったら君は言うだろう もう馬鹿げた昔話だから忘れて
同じ頃に知り合って 今も一緒に過ごしてる二人の噂でも語っていて
二度と会う事なんて無いだろうけど あの不思議な感じは今でも覚えている
君が主人公の物語から僕は追い出され 二度と戻れない事を知っている
♪ なんでか忘れたけど思い込んだ感情を叫んでみたくなった
叫んだ僕はスッキリしたけど 君は困惑するだけ 馬鹿だよね
あの時は自分の思い込みに突き動かされて わからなかった
この一瞬が全てで この後 どうなるかなんて どうでも良かった
失敗したら後悔が残るだけだから やめとこうなんて思いつきもしなかった
二度と言い出せない言葉 あんな激しい思い込みなんて今や心の中に無い
思い浮かぶ事すら無くなった 心の中から無くなってしまった激情が今じゃ懐かしい
♪ ごめんね あれは内輪の遊びだったんだ 告白ゲームって名前のね
女ばかりの内輪で考えた告白セリフを誰かに言わせられるかを競う暇つぶし
激情に囚われて言わされただけで無意味に終わった事を独りで後悔するのが嫌だから
誰でも良かったんだ 同じ後悔と苦しみを抱えさせられれば 我ながら しょうもないな
誰かのせいにでもして 過ぎた事と忘れて 次の好きになれる誰かを探して
二度と あんな馬鹿な真似するもんか そう思える歯止めになっていいよね
過ぎた昔に言った馬鹿げた告白の言葉なんて 言われるの嫌さに覚えてないって言って
♪ 何かで誤魔化そうとしても 悲しい感情が悲しい言葉を招いて渦を巻いて流れるだけ
そんな過ぎた昔の馬鹿げた告白ゲームの事なんて忘れてね お願い
いる人間は御嬢様の友人や知人、みんな。ベロベロに酔っぱらって
内輪の雑談などに夢中になって誰も歌った歌の歌詞なんか聴いていない
その場の空気で浮かんだ言葉が、空気の中に溶けて消えていく
2000年までの10年で失ってしまったものを取り戻そうと
ジタバタと足掻く内に過ぎた10年、
少しは何かを取り戻す事が出来たんだろうか
いや、自分は無くしたけれど、誰かが無くさないで持っている何かを羨んで
同じように手に入れたくなっては、みるものの
自分には手に入らないし、手に入れても同じように持っていられないから無理
と、あきらめる。その繰り返しだったのかな
そんな事を想いつく内に夜が過ぎていった。