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特別編 いつか夢見たあの日へと

連続更新になります。義妹側の視点をお送りします。

 緊急出動。精霊都市外縁を警戒監視している、鳥型の精霊からの緊急連絡が入った。この都市へ向かっている商人の隊列が、無数のモンスターに追われていると言う事だ。


 私は即座に出撃、モンスターの迎撃に向かった。モンスターの数は、報告にあったより以上の数。しかも一塊で移動しているのではなく、複数の群れに分かれて行動している。




 この状況では、私だけでは同時対処が難しい。


 せめて仲間である、精霊騎士の援護があれば良かったのだが、生憎各々修行であったり、任務で出払っている状態だ。神殿騎士は万一の護りの為動かせない。


「無い物強請りは出来ないね。商人さんにはもう少しだけ頑張って貰おう……先鋒を叩く。って、あれは……ガルーダ様?」


 そんな私の目に飛び込んできたのは、超速でこの戦域へ突入する、風の聖獣ガルーダ様だ。何故今ここにと思うが、ガルーダ様は風の女神セラフィーナ様の眷属であり、この都市の守護聖獣でもある。


 もしかすると商人の危機を感じて、と思うのは考え過ぎだろう。しかし、ガルーダ様の標的を確かめると、確かにモンスターの群れへと意識を向けている。


 そしてもう一人、何やら黄色い鎧に身を包まれた冒険者、と思わしき人が、砂埃を舞い上げながらモンスターの群れへと向かう。


 信じられない移動速度、少なくとも私の最大速度に匹敵する。こんな力を持つ者が、何故ここに?


「え、ちょ……まさかあれって、バックホーのバケットアーム? あのサイズ、え、ええ? って、驚いてる場合じゃないね。なら私は……魔力制御、風精霊シルフとの霊力同調、良し。ブラウズニル・ホーリーライト、詠唱開始……来たれ風よ光よ、かの者に祝福と聖別の刻印を示さん」


 私は魔力を練り上げ、薄く放射させる。ブラウズニル・ホーリーライトの攻撃段階は二段階に分けられる。


 魔力を風に乗せて敵意、悪意を識別し、第二段階で識別した敵対的意思を持つ者を光の刃で打つ、広域魔法。


 最初は冒険者さんを巻き込まない為に、と思っていたのだが、突如として方向転換し、後衛、と言うよりは別のモンスターの集団へと進路を取った。


 ガルーダ様も同様に、もう一グループの方へ攻撃対象を変化させる。これなら……!


「降り注げ、光の刃よ。識別せし悪鬼羅刹を打ち滅ぼさん。ブラウズニル・ホーリーライト!!」


 少々動揺したが、無事風と光の複合魔法、ブラウズニル・ホーリーライトは発動した。商人の隊列と、モンスターが眩い光に包まれる。光によって識別された、モンスターを狙い、無数の光の刃が降り注ぐ。


 光の刃は見ての通り、光の属性。モンスターはその身に宿した魔力を増幅させ、所謂闇に近い属性を有する。光と闇は相互破壊認証されており、お互いが弱点となりえる。故に、効果は抜群だ。


「眠りなさい、安らかに……」


 モンスターはその一片を残さず消滅し、商人の隊列は無傷のまま、都市へ移動をする。商人たちの視界には私が映っている。


 今の攻撃も私を信じたからこそ、耐えてくれていたのだろう。


 と、私は他のモンスターの群れに視線を移せば、そこにはとんでもない光景が広がって居た。


「え、えぇ……ちょ、なんなのあの暴風圏は……」


 黄色の鎧を纏った冒険者さんは、モンスターを掴んでは投げ、振り回しては吹き飛ばし、殴っては木っ端微塵に、蹴り抜いたと思えば、衝撃波の様な物で複数を殲滅している。


 ガルーダ様に関しては言わずもがな、風魔法を駆使して広域にモンスターを排除している。流石です。


 もう一度冒険者さんに視線を向ければ、何時の間にと言う具合にモンスターを殲滅し終わり、こちらに視線を向けていた。


 その視線に見返す様に冒険者さんの顔を見つめて、私は……この世界に来て、初めて、胸が高鳴った。何故、何故貴方がここにいるの、と。


「そんな……い、いえ……気をしっかり持つのよ。良し、まずはお礼を述べて……」


 そう思いながら、私が現世で生き別れた、あの人の元へと舞い降りて行く。高鳴る胸の鼓動を抑えながら。


「……私は、風の精霊騎士。名をレオナと言います。この度は、我が都市への客人の守護に協力頂き、誠に感謝致します」


 まずはお礼を述べれたと思う。もっとも、不自然な位に上擦って居た気がしないでもない。でも、それも仕方が無いと思う。あの人の容姿は、私が最後に見た姿と殆ど変わって居ない。


「いや、礼を言われる程ではないさ。俺は当然の事をしたまでだ……名乗り遅れた、俺の名は、サクラユウキと言う。サクラが姓でユウキが名だ。ぐ、済まない、最近涙脆くてな……」

「っ……大丈夫、ですよ」


 間違いない、この人は……でも、同姓同名の人は決して存在しない訳では無い、半分確信、半分期待を持ちながら――私は、白いハンカチを出してそっと彼の涙を拭う。驚いた様子でこちらを見返してくる。


「……ご迷惑、でしたか?」


 そう言いながら、そっと彼の手を握る。大きくて、温かい……あの人の手を握ったのは、あの時以来無かったなぁ。


「……懐かしいな、こうして誰かに手を握られたのは――妹を不良から助けた後以来、か」

「っ!?」


 ダメだ。ダメだ。ダメだ。間違いない、間違いないよ……堪えなきゃダメ、分かっているのにどんどん思いが溢れてくる。このまま抱き着けるのなら、どんなに幸せな事か。


「もし、俺の勘違いでなければ――君に伝えたい事がある……ただいま。遅くなって、ごめん」

「…………ごめんなさい、もう無理です……遅い、遅過ぎよ! だって、わたし……なんねんも……ずっと、まっていて……」


 私は、堪えられなかった。反則だよ、こんなの……私も彼に気付いた様に、彼も私に気付いてくれた。だから、私も答える。あの日、あの時言えなかった言葉を。

 

「ただいま、安芸」

「……お帰りなさい、兄さん」


 私が義兄と死別して、この世界に来て13年。長かった……もう二度と会えない、もう二度と言葉を交わせない、そんな悲しく辛い日々が終わる。


 あの日、あの時。女神セラフィーナ様によって、この世界に生まれ変わった。今一度歩んだ人生の中で、私は再び最愛の人と巡り会えた。もう二度と離れたくない。






 今度こそ、私は、貴方と共に未来を掴む。いつか夢見たあの日へと向かって。





義妹は良いものだ……賛否両論はあるでしょうけど、フィクションだからねっ!(何

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