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第六十八話 魔王城へ至る道

昨日は失礼しました。残業による疲労で、更新出来ず。

せめて最終話までは、欠番を無くしたかったorz

 ティタニス侯爵領での戦いを終えて、日が昇り改めてその惨状を目の当たりにした。目を覆いたくなる惨状。俺は思わず顔を逸らしそうになる。


 しかし向き合わなければならない。歯を食い縛り、丁寧に死体を一か所に纏めて行く。そして、やはりと言うべきか。マコト君を始めとする、異世界人一行の表情は暗い。けれど、このままにする訳にも行かない。


 死体は微生物に分解されるが、そこに至るまでには様々な問題をクリアする必要がある。まずこの世界では、死体はアンデッドとして蘇り、怨恨と共に生きとし生けるものを襲う。


 この辺は現世同様で、死体は焼却するなどして対処する他無いのだ。手厚く葬り、浄化魔法を行使する事で、初めて迷える魂は天へと帰るのが、この世界のルールである。

 

「死者への手向けは、現世とも変わらんな……」


 どうしても思い出すのは、亡き父と母の事。そして、現世での安芸の事。今でこそこうして再会出来たが、一歩間違えば俺も彼等と変わらない結果だった。


「……」


 寂しげな表情だった為か、安芸が無言で俺の手を握ってくれる。不味いな、昨日の今日でこれか。強くならないと。


「すまんな、もう大丈夫だ。これからグラニート侯爵と会談になる。しっかりしないとな」

「うん、頑張ろうね」


 そのまま安芸と手を繋いだまま、グラニート侯爵の待つ執務室へと向かう。途中、怪我をした住民等に治癒の魔法を掛けながらだ。


「……流石に、無傷とは行かないか」


 軍勢の数が数であっただけに、少なからず民間人への被害が出ていたが、それでも最小限で留められていた事が救いだろう。


 もしも、俺達が間に合わなかったら、グラニート侯爵は言うに及ばず、恐らく夥しい犠牲があったと考えられる。


「兄さん、前を向いて」

「ああ」


 安芸の言葉に、俺は気を引き締め直す。辿り着いた重厚な扉の奥には、ヴァルの支援者であるグラニート侯爵が居るのだから。


「失礼します」


 グラニート侯爵の従者に迎え入れられ、執務室へと足を踏み入れる。そこには既に、ヴァルことロードクラヴィス公爵、先んじて救出し、一命を取り留めたフィルブレイズ伯爵が、穏やかな表情で談笑を交わしている。


 そしてもう一人、それは絶世の美女と言わんばかりのご令嬢が、グラニート侯爵の傍に控えて居る。恐らく彼女が、ヴァルの婚約者の一人なのだろう。


「うむ。よくぞ参られた。人界の英雄、サクラユウキ殿。我はグラニート・ティタニス。侯爵の地位を賜るが、元々はタダの一兵卒に過ぎん。長いとは言え、未だに貴族に慣れんのは、許せよ」

「それを言ったら私もですよ。精霊首都シンフォニア国主、サクラユウキです。今でこそこんな地位ですが、元々は平民と大差ありませんから」

 

 俺の答えを聞き、グラニート侯爵はニヤリと口角を上げる。恐らく、兵士上がりと言う事から、俺に共感を抱いてくれたのだと推測出来る。


「そしてこれが、我が自慢の娘であり、ティタニス侯爵領最強の女傑――」

「お父様」


 彼女の言葉に、心の中で同意を示す。恐らくグラニート侯爵は、娘の自慢をしようとしたのだと思う。しかし、うら若き女性に対して、女傑は無いだろうと思ってしまった。


「お初にお目にかかります。人界の英雄にして、神の使徒様。私は、ヘカテリーナ・ティタニス。ヴァーミリオン様の婚約者で御座います」


 気を取り直して、グラニート侯爵に続き、挨拶と共に深々と頭を下げるヘカテリーナ嬢。それにしても、この世界の美形率が凄まじい事になって居るのは、きっと気のせいでは無いと思う。


「ヘカテリーナさん、頭を上げて下さい。盟友たるロードクラヴィス公爵に協力するのは、至極当然の事ですから」


 俺の答えを聞き、ヘカテリーナ嬢はニコリ、と笑みを浮かべる。本当に、ヴァルは愛されているなと思う。だから、安芸、ノーラ。その嫉妬交じりの視線を止めなさい。


『流石にねーよ。大体ヴァルの婚約者だぞ?』


 と、二人に念話を送った所で、グラニート侯爵が口を開く。


「ふ、中々苦労しておるようだな。まぁ詳しくは追々として……では本題に入ろうか。まずは、救援に感謝を。フィルブレイズ伯爵共々、礼を言うぞ」

「いえ。今少し動きが早ければ、フィルブレイズ伯爵領の民も救済出来たと思えば……」


 確かに俺達は、ヴァルの話を聞き人魔の未来の為に駆け付けた。それでも、救える命はあったと思うと、素直に感謝を受け入れて良いとは思えない。そんな風に考えて居ると、ザイン伯爵が口を開く。


「……そのお気持ちだけで十分です。自らの危険を顧みず、我が娘の命も救って頂いたのも、紛れもなく事実なのですから」

「ザイン伯爵、マイヤ嬢を助けたのは私ではなく、ロードクラヴィス公爵です。私は力添えをしたに過ぎません」


 確かに俺はザイン伯爵からマイヤ嬢の救助を求められたが、実際には戦艦ヤエザクラを動かしただけで、マイヤ嬢を助けに向かったのはヴァルと言う事実は間違いない。


「それでも、ですよ。ロードクラヴィス公爵から聞いておりますが、本当に謙虚な御仁だ。ですが、過度な謙遜は、却って不興を買いますので、ご注意を」

「はい。肝に銘じて置きます」


 謙遜したつもりは無いのだが、この様な忠告は素直に聞いて置こう。俺の様な付け焼刃の代表とは違い、グラニート侯爵も、ザイン伯爵も、間違いなく貴族と呼ばれる支配層なのだから。


「よし、じゃあ作戦会議を始める。済まないなユウキ、本来ならお前が指揮を取るべき所だが……」


 そんな台詞を述べながら、ヴァルは少しばつの悪い表情を浮かべる。


「気にせず進めてくれ。どちらにしても、俺達は魔界の情報に精通していない」


 だが、現状ではそれがベストだと思う。どちらにしても俺達人界側が持つ情報は、魔界の住人である彼等に遠く及ばないのだから。


「その点は仕方ないだろう。グラニート侯爵、魔王城に何か変化は?」

「普段と変わらずですな。尤も、ロードクラヴィス公爵が謀反者として告知されてからは、城の守りが固められております」


 先にヴァルから聞いていたが、魔王城は絶海の孤島を要塞化したもので、物資や人員の移動は転移か、飛行型モンスターによる空輸が行われていると聞いた。


 更に言うなら、この間マイヤ嬢を救出した孤島の様な入江も無い訳では無いが、防備は凄まじくアリの子一匹通さない程、厳重に守られているらしい。


「……俺が何かしらの手段を講じて戻ると考えた、と言う事だな?」

「推測でしかありませんが、恐らくはそうでしょうな。しかし、今が逆に攻め時ではありませんかな?」


 そう言いながらグラニート侯爵がチラリと俺に視線を向ける。そう、俺達は海上を突き進む手段と、堅牢強固な建物を破壊出来る手段を持つ。


 俺はヴァルを助けると誓ってここに来ている。その辺は既に話しているからこそ、この話が出たのだろう。


「そうですね。所でグラニート侯爵、先程転移と言いましたが……ロードクラヴィス公爵から話は伝わってますか?」


 転移の話があったので、俺はグラニート侯爵に質問をしてみた所、返って来た答えは概ね予想通りであった。


「む、ああ。そうであったな。転移が可能なのは、少なくとも交戦派と言われる、魔王様に忠誠を誓う者、魔王様に許可された者の使えている」


 グラニート侯爵からそんな話を聞く。ち、想像以上に厄介な妨害だ。そんな風に思っていると、グラニート侯爵とザイン伯爵が暗い面持ちで言葉を紡ぐ。


「……もしも、我々もそれに気付く事が出来たなら、罪なき民も犠牲になる事も無かったであろう。無念である」

「ええ、我がフィルブレイズ伯爵領でも、日常的に転移移動は行われていましたので、グラニート侯爵のお気持ちも分かります」


 二人の言葉に、俺は静かに魔王へと怒りを募らせる。ここまでするか? 罪なき人民をも巻き込んででも、それが政治を司る者のする事か?


「ユウキ、抑えろ……お前の怒りは尤もだ。そして、何より本当に不甲斐ないと思っている。すまない……ッ」


 怒りに燃える俺を、必死に諫めるヴァル。悔しそうな表情を浮かべる、グラニート侯爵とザイン伯爵。これを看過など、出来る物か。


「……決めたぞ」

「ユ、ユウキ?」


 そんな怒り心頭の俺を見て、若干引き気味のヴァル。怒りに身を任せて行動するのは御法度だとは思うが、これ以上無暗に人民の命が奪われるなら、早急に大本を叩きのめす。


「民あってこその国、それを蔑ろにするなど言語道断だ」

「分かった、分かったから落ち着け!? 確かに俺もまずは対話を、と思っていた。が、想像以上の状況に、業を煮やしてるのはお前だけじゃないんだぞ!?」


 と、必死に諫めるヴァル。不味いか、俺の暴走癖。それを知ってか、俺の手を強く握る安芸。落ち着け、冷静に、だ。


「兄さん!」

「すまない、分かっちゃいるんだが……」


 どうにも、俺自身が一般人であったからこそ、魔王の暴挙に怒りに狂う結果となった。が、ここは落ち着いて作戦を立てないと、魔王の思う壺になる可能性がある。


「……落ち着いたか? 気持ちは分かるし、お前を巻き込んだ事も申し訳なく思う。けど、こうなった以上ユウキの言う通り、速攻で決める必要がある」

「左様。ユウキ殿、我々も力になる。話は聞いておるよ、異世界人としての知識、力。我々に貸して頂きたい」


 ヴァルとグラニート侯爵の言葉に、俺は平静を取り戻し、ヤエの作成した地図を広げ作戦立案を開始する。


「承知しました。と言っても作戦は単純明快、戦艦ヤエザクラを前進させます。その後、砲撃で防壁さえ砕けば、後は上陸戦を展開、出来ますよね?」

「うむ。如何に強固な防衛線、防壁と言えど崩せば行けるであろう。ロードクラヴィス公爵、フィルブレイズ伯爵から聞いておりますが、それだけの火力を出せるのでしょう?」


 グラニート侯爵が言う様に、戦艦ヤエザクラの火力は、本来対地攻撃の為に使う物。建物のレベルとしても、現代の鉄筋コンクリート造りには程遠い。


 仮に魔法による防護があったとしても、ヤエと検証した結果からすれば、問題なく貫けると言う物だ。フォースフィールド、ガイアフォートレス、フォーステリトリー、この三重障壁すらをも揺るがした実績もあるのだから。


「ええ。少なくとも無傷で済むとは思って居ません。それでも貫けない場合は、まだ奥の手もありますし、ね」


 純粋な威力で言えば、ギガントドリルブレイカーによる攻撃は、508ミリ砲斉射すらをも上回る、超火力を叩き出す。合わせれば、確実に砕けると俺は見ている。


「良し、城壁はユウキに一任する。グラニート侯爵はザイン伯爵と共にこの地の防護を。戦力は撤退したとは言え、我々と行き違いで来る可能性もあります」

「……うむ。仕方あるまいよ。フィルブレイズ伯爵、申し訳ないが援護を頼めるかの?」

「御意。我が領地を守れなかった分は、この地の民を守る事に費やさせて貰います」


 そしてヴァルの指示により、グラニート侯爵とザイン伯爵はこの地の守りに努める事になった。万一に備えた、戦略撤退地点としての意味も兼ねている。


 尤も、万一等起こる前に全てを片付ける積りだ。俺は固い決意を胸に、新生勇者パーティ、ヴァルと側近のバモスさん、ジュリア嬢、マイヤ嬢。そしてヘカテリーナ嬢を伴い、ティタニス侯爵領から、戦艦ヤエザクラを出撃させる。


「最大戦速! 直掩、艦載機を飛ばしつつ索敵、進路確保。ヤエ!」

「御意」


 俺の言葉にヤエが全力で行動を開始。戦艦ヤエザクラのガスタービンが唸りを上げ、最大速力である、42ノットで魔界の海を突き進む。目標地は、魔王城。小細工抜きの全力で行くだけだ。






閲覧ありがとう御座います。昨日は失礼致しました。

肉体的、精神的疲労、あと加齢による疲労でしょうね。くたばっておりました。

明日以降も、恐らく暫く残業が続く見込みなので、誠に不本意ではありますが、投稿時間を変更致します。

これまで以上に、精一杯書いて行きますので……どうか、宜しくお願い致します。

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