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第五話 ユニークスキル

 あの後、ガルーダを従えて東へ向かう事になったのだが、現状で俺はクソザコナメクジと言う事だ。


 ステータスこそ、この世界の一般人からすれば破格の物ではあるが、あくまで一個人として、だが。


 そもそも、現代日本でも戦闘と言う戦闘など、かつて安芸に絡んでいた不良少年と殴り合った位しかない。故に、弱い。心身共に俺は弱い。




 だからガルーダ指導の元、俺は一心不乱にモンスターと戦っている。


 戦う術など持っていない、一般的な日本人だった俺だが、この世界では唯一と言われるユニークスキルを保有している。


 重機召喚。職業が重機操者と言う事から役立たずの烙印を押された俺であるが、このスキルは破格の性能を保持していた。


 考えても見て欲しい。中世ヨーロッパの様な世界。魔法、魔物と言ったファンタジー要素。近接攻撃は剣など、遠距離でも弓、そんな世界に、超重量の重機が呼び出せるのだ。


 呼び出せる重機は各種メーカーが製造販売しているもので、有名所は当然として農機具メーカーが作る重機すらも候補に入って居る。


「しかし、キャビン付きは冷暖房完備でガラスは巨石の直撃を受けても壊れない耐衝撃性……ぶっ壊れすぎだろ……」 


 欠点としては、小回りが利かず移動速度が低速と言う点だけだが、速度以外の問題なら簡単にクリア出来るのがこのスキルの壊れ性能な所。


 確かに閉所での戦闘には向かないが、重機と言ってもその用途によって大きさも変わって来る。


 小型の物から大型の物まで。小さい重機でも、キャビンと呼ばれる運転席をガードする装備が付いている物なら、先にも述べた耐衝撃性を備えている。


 また、実際の重機でもあるのだが、オプションによって様々な能力を付加して使用出来るのも強みの一つだ。



 例えば、ブレーカー配管仕様の物が良い例だろう。


 この重機を召喚後に、オプションパーツとしてブレーカーユニットと呼ばれる、岩やコンクリート等の構造物を小割するパーツや、グラップルアームユニットと言った物を掴み持ち上げるパーツを使用出来る。


 現実世界での使用用途を述べたが、これを対モンスターに当てはめればどうなるか……分厚い装甲を貫通させる力、巨体を掴み上げ自由を奪う力。どれもとても強力な物だ、当てる事が可能ならば。


「安全地帯を作りつつ攻撃可能だが、重機本来の特性を殺す使い方しかできないのが痛いが……」


 実際問題これでも強いのなんの。考えても見て欲しい、多少の攻撃ではビクともしない、直接対峙するとは言え、安全地帯から重機を操る。


 これだけで、単純に金属製のバケットアームを左右に振り回すだけで、分厚い皮や脂肪で守られてる動物型のモンスターが一撃でぶっ飛ばされるのだ。


 特にバックホウと呼ばれる重機などは、運転席を含む上部が360度旋回するので、腕の届く範囲ならば攻撃範囲にする事が可能。




 当然鉄の塊をぶつけられれば、モンスターと言えど生身で無事な訳が無い。


 それだけでも強力だと言うのに、これはあくまで重機召喚のスキルのみの話である。俺にはもう一つ、ユニークスキルが存在する。


「スキルの説明を読んで把握したけど、実際どこまで有効かも確かめなければな……っと、やっぱりPC350の運転席は高いな」


 そう言いつつPC350と言う重機から降りた俺は、二つ目のユニークスキルを発動した。その名も重機外装。このスキルは自己強化、補助的なスキルとも言える。


 内容としては、召喚した重機を一種の強化外骨格、この世界風に言うならフルプレートアーマーの様な扱いで、武器にも防具にもなると言うスキルだ。



 実際には巨大な重機であるが、このスキル使用時には人間サイズにリサイズされる。


 リサイズされれば当然重機自体の持つエンジン出力も小さくなると思われるが、このスキルの効果で重機の馬力のみを直接行使出来ると言う、壊れ性能を発揮する。


 


 その上、装甲やキャタピラ、エンジンや車体重量の概念などは一切無視。


 当然普通の人間がその様な超出力を発揮しよう物なら、体が耐えられずに木っ端微塵に吹き飛ぶだろう。


 だが、そこは異世界人として呼ばれた俺自身の常人離れしたステータスで補正される。結果として――。

 

「バケットォ……ナックル!」


 ガゴォンと言う音と共に猪型のモンスターがぶっ飛ばされて行く。現在俺は、先程搭乗していたPC350と言う重機を装備した状態になる。


 外観的に言えば、土曜日の夕方に放送されていたロボットアニメのパワーアップ状態が近いだろう。


 また、律儀に技の名前を叫ぶ必要もないのだが、なんとなく俺は思う。この方が燃える。そして結論から言おう。


「条件付きで無敵、だな。こいつは本気で凄い」


 重機自体の持つ馬力のみを直接行使、と言う事から察しが付くだろうか。


 飛ぶような速度で移動も可能、超パワーで攻撃可能、防御性能に関しては若干欠点とも思える部分もあるが、現状では問題ないと思われる。



 流石に水中などでの活動は不可能なので何かしらは対策も必要だろう。


 この結果から言える事は、重機召喚をメインで使うのは戦闘ではなく、現世と同じく作業が向いているだろう。戦闘に特化するなら、召喚からの装備のコンボになる。


 余談だが、重機召喚のカテゴリーの中にはそれ本当に重機枠? と思えるような重機が目白押しとなっている。




 これを反則と言わず何というのか。まぁ、まだこれらの重機枠? な重機は呼び出せないのだが。


 まぁお陰でレベルも、ステータスも上昇した。現在レベルは78。人類種最大到達レベルは、過去に召喚された勇者でレベル250らしいが、ガルーダ曰くレベルに上限は存在しないとの事だ。


 少なくともこのレベルなら、王都精鋭ともいわれる近衛兵ですら軽く倒すことが可能だとの事。上位の兵士や高位の冒険者でも平均するとレベル50程度しか無く、とても上がり辛いのがこの世界の住人の特徴だ。


 対して異世界人だが……レベルが一つでも上がれば、元から高いステータスに加え、凄まじいステータス上昇率を誇る。


 それこそ、召喚初期に不意打ちで制圧後、能力やステータスを弱体化させない限り、異世界人には逆立ちしても勝てないと言われている。


 その話をガルーダから聞いた後、俺は重機外装を使わずに猪型モンスターに軽く投石してみた所、胴体に拳大の穴がぽっかりと開いた。


「え、小石を当ててこのレベルなの……? ちょ、これ手加減覚えないと危険すぎる奴じゃん……」


 モンスターに対してなら問題ないが、ちょっとした気の緩みや怒りによって制御を失えば、大事故に繋がりかねない。


 どうにかできない物か、とステータス画面を見ていたが、どうやら余程の緊急事態以外では、村や町と言った都市部で異世界人の力を振るうのに制限が掛かっている模様。





 但し。攻撃面に関してはまぁ一安心ではあるが、防御面では大問題が発生した。


 ステータス補正による防御能力は、異世界人と言う立場を以てしても、しっかり防具を付けていないと効果が無いと言う事が判明した。

 

「いてぇ……」


 文字通り襤褸雑巾の如くボッコボコにされた俺。致命傷になる事は決してなかったが、防具、防御だけはしっかりしようと思った出来事だった。


 そんなこんなで、スキルの検証は一先ず終えて東へ出発。別段期限が決められていた訳ではないので、鈍行でのんびりとした旅を続けている。


 時折遭遇するモンスターや、魔物と呼ばれるモンスターの変異種を討伐しては、スキルを活用して居る内に気付いた、アイテムボックス的な使い方を駆使して素材を格納したりもした。


 これにより、町に行った際に素材を換金する事も可能となり、様々な面で役に立つ事だろう。現世で失ったものが多い俺だったが、こちらの世界での第二の人生は、明るめの未来が見えそうである。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公がこの先どう動いていくかなど今後の展開が楽しみです。ブックマークに登録させていただきました。今後とも執筆頑張って下さいませ。
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