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第一話 推定有罪からの死刑判決、即時執行

続けて投稿してみます。上手く行っていれば良いのですが。

 さてここは所謂異世界と呼ばれる世界。その国の牢屋から実況と言う形になっております。尤も現状で満足に言葉を発している訳でもありませんが。


 どの位意識を失って居たかは定かではありませんが、牢屋が開られたのでしょう。ついでと言わんばかりに顔面に蹴りを入れられました。


 どうやら呼んでも返事を返さない俺にイライラしたのでしょう。無理を言わないで頂きたい。返事をしないのではなく喋る力が無いだけです。


 とまぁ俺はそのまま牢屋番に引き摺られて牢屋から出ました。立て、自分で歩けと言われますが、骨も折れている俺に何と言う無茶を言うのか。


「ぁー……」


 と、力なく返事を返したのですが、当然その行動に返されるのは暴力で御座いました。やめてくださいしんでしまいます。等と、実際痛みを感じておりませんのでこの様な軽口を思えるのですが、これ本当にどうすれば良いんでしょうねぇ。


 とにかく起き上がるのが無理と判断されたのか、牢屋番の他に数名の衛兵らしき人が増援として到着。運ぶ準備をしましたが、当然の如く全員から顔面にパンチを喰らいました。


 ぶっちゃけガントレットと言う鉄製の籠手を着けているので、顔面血塗れです。痛みですか? 感じませんよ、はっはっは。


 因みに運ばれ方ですが、所謂罪人を縛り付ける棒状の物に磔されたまま移送されました。引き摺ってった方楽なんじゃないかなこれと思うのですが、敢えて口に出す事でもありません。口も動かせないので思うだけですよ。


「チッ」


 舌打ちや暴言を受けつつ俺は運ばれます。運ばれた先は召喚された部屋とはまた違う、広間的な場所です。未だ一度も赴いた事はありませんが、裁判所的な場所なのだと思われます。


 傍聴席の様な物もあり、そこには豪華な衣装を纏った壮年から老齢の男女様方がおりました。


 恐らくこの国の王侯貴族や大臣官僚と言った所でしょう。弁護士なんておりませんよね。居た所でここからどうにかなるとは思えませんし、仮に俺が無罪を主張したとしても時代が時代。王の言葉に

反するのは一発有罪とかになりかねません。


 もう完全に諦めている俺は何も言わず裁判を聞き流すだけ。罪状は数多の資源を無駄に消耗させ国力を弱体化させた罪が一つ目。無駄にしたも何も、召喚と言う名の誘拐を国家が関与して行っておいて何を言っているのでしょうか。


 二つ目の罪が、納税義務の違反。これは勇者の証言が元になって居た様で、俺は社会最底辺で元の世界、日本で定職に就かず税金も納めていないから、と言う事らしい。


 仕事はしていたし税金も納めていましたし、と言うかこれは今関係ないでしょうに。


 三つめが……ともうこれ以上説明は止めました。これ、現世での話なら虚偽申告、名誉棄損、その他諸々で反訴されるのは勇者側ですが、どうやらこの世界では勇者と言う存在、特に異世界召喚された勇者の発言力が大きく反映されるようです。やってらんねぇ。


「これらの罪状から、罪人ユウキは有罪とし、絞首刑に処する。では、これにて閉廷――」

「異議あり! 国王様、彼は弁護人もおらず、挙句の果てに猿轡までして、喋る事すら出来ず! こんな事、司法を学ぶ者として到底看過出来ません。せめて弁論だけでも!」


 そのような王様の言葉で裁判は終了。と、思いきや、流石にこんなのは裁判ではない。と、大賢者の青年が異議を申し立てております。


 確かに磔で猿轡、頷く事すら出来ずの状態なので、彼の援護に荒んだ心に光だ届いた様な感覚を覚えました。


「大賢者の職業を得し異世界の青年よ、この国にはこの国の法がある。例え其方が勇者パーティの一員とは言え、王の言葉に反目する事は許されぬ。分を弁えよ!!」

「横暴だ!! 彼はただ巻き込まれただけなんですよ!?」

「黙れ!! 大賢者と言えど、これ以上は許さんぞ!!」


 必死に食い下がる大賢者の青年。確かに司法もクソも無い状況だけに、とてもじゃないが平静でいられなかったのでしょう。その内に俺の猿轡が外されて、取り合えず喋れる様にはなりました。


 そんな俺の横に駆け寄る大賢者の青年。隣には上位僧侶の女性が同伴しています。


「……酷い。大丈夫、ですか?」

「…………」


 心配そうにしている大賢者の青年。反して俺は猿轡を外されたましたが、喋る事は出来ません。あれだけ痛め付けられて、口を開くのもやっとの状態でした。


「マコト、回復魔法では治せない。いえ、治せなくはないけど、即時回復系では肉体の方が持たないと思う」

「カエデでも無理なのか!? くっそ、何て事を……」

 

 どうやらマコトと言うのが大賢者の青年の名前で、カエデと言うのが上位僧侶の名前らしい。あの召喚の時名前まで確認はしていなかったので、この情報は正直助かります。


 俺は何とか口を動かし、声を捻り出しました。カエデさんの見立てでは喋れない程ボロボロらしいですが、一応俺も異世界人。ステータス的には無理矢理喋る事が出来そうなので答えました。


「ふ、ふたりとも、もういいよ……きもち、だけでじゅうぶんだ……がふっ……」

「でもっ!! こんなの異常だ!! 俺は、こんなの認めない!!」


 何とか喋る俺、悔しそうに憤るマコト君ですが、そんな所に大声で響き渡る声が聞こえます。


「諦めとけよ、マコトサン。そいつは犯罪者だ。今ここで罰せられて当然なんだよ!!」

「ふざけるな!! お前のやって居る事は、虚偽申告に名誉棄損だぞ!? 彼が一体何をしたって言うんだ!!」

「るせー!! 俺は勇者で、俺が正義だ!! 大賢者だかなんだが知らんが、引っ込んでろ!!」

「いい加減にしないか、大賢者!! もう良い、衛兵、大賢者と僧侶を連れ出せ。裁判の邪魔だ!!」


 何としても俺を犯罪者に仕立て上げたい勇者と、現状を認めたくないマコト君の会話が始まりますが、王の一喝で、マコト君とカエデさんが強制退場させられました。


 何気なく視線を向けた先でご満悦の勇者がおりました。


 さて、裁判が終わり俺は磔のまま街へと連れ出されました。衆人環視と言うのでしょうか? 罪状を大声で叫ばれながらの行進です。


 人々の険しい視線、罵詈雑言が投げられております。ですが石や物は飛んでは来ておりません。尤も俺を運んでいるのは国家の兵士。万一当たればそれは拘束されても仕方も無い事です。


 そんな俺の考えを見抜いたのか、単に痛め付けたかっただけなのか、兵士たちは俺を地面に叩き落とし距離を取りました。そしてこう叫んだのです。


「この者は我が国の国庫に重大な痛手を与えた、最低最悪の罪人である。当然その中には民が納めた税も含まれている。さぁ思う存分恨みを晴らすが良い!」


 その言葉を皮切りに、飛んで来るは罵詈雑言。勿論石やくず野菜、汚物の入った桶をわざわざ持ってきて投げつける者もおりました。


 何なんでしょうね、俺が一体何をしたんでしょうね。ただの一般ピーポーの筈なのですが。


 ここまでされても痛みは感じておりません。しかし兵士さんはこの惨状、一体どうやって処刑場まで運ぶつもりなのかと思っていましたが、何やら遠くから鎖が飛んできて首へ巻き付きました。


 鎖は先端がそのまま首輪へと変化をして、俺は引き摺られるがまま運ばれて行きます。


 ええ、勿論運ばれる最中にも人々から物を投げられ続けております。しかもご丁寧に牛歩戦術を使ってまで徹底的に痛め付けております。クソが。


 やっとの思いで処刑場に辿り着いた訳ですが、これでやっと終わるのだと逆に安堵している自分は決して異常では無いと思います。

  麻布か、その様な袋を頭に被せられ絞首台へと運ばれます。首に縄が掛かった感触。しかし痛みを感じないだけでこれ本当に死ねるのだろうかと若干疑問に思いましたが、もう後の祭りです。



 足場が無くなった瞬間に首が絞められる。



 実際の絞首刑は落下した際の体重で首の骨を折る、とかだったと思いますが、ここで異世界人と言うステータスが邪魔をしております。


 召喚された異世界人は、この世界の住人とは比べ物にならない程強力なステータス、身体能力を備えます。


 故に、罪人扱いを受けている俺でも、そのステータスは通常の兵士を軽く数倍は超える物でありました。


 だからこそ一気に意識を狩り多数で暴行を加えて無力化したのでしょう。苦しい、としか言いようがない。


 縄に吊るされたまま、俺はビクンビクンと言う感じで暴れております。尤も手足も縛られているので、もがくと言う表現が正しいのでしょうが。


 ですがもう終わりが近い、どんどん力が抜けていくのが分かります。死ぬ、んですねぇ……。


 ですがまぁ、これ以上辛い思いもする事は無いでしょう。元より俺は天涯孤独の身。俺は薄れゆく意識の中で、最後に思いました。




 父さん、母さん。そして安芸ちゃん、今俺もそちらに逝くよ、と。





私自身裁判に至る様な冤罪は今の所ありませんが、日常での冤罪は割とありまして。はぁ……。

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