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第十一話 いざ、検分

休日更新夜の部。内容は朝なんですけどね。

 耐えた、俺は耐えた。鋼の精神力を持った俺は、異世界に来て久しぶりの風呂を存分に堪能する事で、超絶美人との混浴と言う状況を乗り切ったのだ。






 そう、寝室まで耐えた俺は褒められても良いと思う。限界でした。


 人って不思議。疲れている筈なのに、あそこまで動ける物なんだと感心した。お陰で若干体がだるいが、仕方あるまい。対価として隣で寝息を立てる美しい顔を、見る事が出来たのだから。


 しかし、あの言葉は俺の想定以上の答えだった。大事にしようと思っていたけど、安芸があそこまで頑なに俺を求めた理由が



『全て塗り替えたい、あの忌まわしい記憶を塗り替えて、忘れさせて欲しい』


 との事だった。


「……安芸」


 愛おしい。俺は優しく、そっと頭を撫でる。穏やかな寝息を立てる安芸の、流れるような綺麗な髪を独り占めしている。


 現世ならあり得ない事だが、異世界に来た事、転生者として巡り会えた事、本当に奇跡だと思う。


「ん……ぁ、おはよう、にいさん……んぅ……」


 起こしてしまったか、と思ったが寝ぼけ眼に唇を重ねて来る安芸。アカン。昨日の今日なのに俺の息子が疼いている。だが、流石に自制した。幾ら愛し合っているとは言え、俺は紳士。同意なく行為などしない。





 

 と思ったがどんどん安芸の体が絡みついてくる。こ、この娘……分かってやっている!?


「んふふ~…………来て、良いんだよ?」


 敢えて語るまい。


 そんな朝の一幕を終え、朝食の席に着く。内容が現世に近いのは、安芸が再現に拘って居る為だろうか。流石にご飯は存在しないが、温かい白パン、ベーコンエッグ、ポタージュのコンボは、懐かしさを感じた。


「ん、どうしたの?」

「ああいや、美味そうだなと思ってただけだよ。んじゃ、いただきます…………ッ!?」


 食事に手を付けない俺を不審がった安芸。そう言えば安芸には言って無かったが、俺は安芸が現世で死んでからと言う物、味覚が無くなっていた。何を食べても美味しいとも思わなかったんだ。


「ちょ、ちょっと本当にどうしたの!?」

「…………味が、ある」

「は、はい?」


 安芸を始め、控えて居る執事やメイド達も疑問符を浮かべている。そう言えば、確かに会議場で俺がこの世界に来た経緯を話したが、味覚を失った事は言って無かったな。


「ああ、悪い。食事が不味いとかそう言う話じゃないよ……何て事は無い、俺は今まで味覚を失って居たんだ」

「い、今まで味の無い食事を……?」

「ああ。でもそんな生活ももう終わりだ。パンの香りも、ベーコンエッグに振り掛かる胡椒も、ポタージュの温かさも。本当に懐かしい」


 俺の言葉に心配そうな表情をしていた安芸は、やっと安堵の息を付いたみたいだ。実際俺も驚いている。俺はこの日、再び味覚を取り戻した。


 今まで何を食べても美味しいと思わなかったが、この日を境に世界に色が戻ってきた、そんな感覚に包まれる。


「そっか。この世界には、この世界の美味しい食べ物も一杯あるから、ちょくちょく食卓に並べてみるよ」

「ああ、楽しみにしている」




 そう言って一通り朝食を終えた後、屋敷の庭へ移動する。昨晩は暗がりで余り分からなかったが、想像を絶する程巨大な庭園と言っても過言ではない。膨大な敷地面積を誇る安芸の屋敷。マジパネェ。


「じゃあ、出すぞ。コール、MST2200VD! キャリアダンプ、召喚ッ!!」


 そう言いつつ召喚された、運搬用重機。不整地運搬車と言う種類の物で、悪路や湿地帯、急な坂路等を、ダンプカーが入り込めない様な場所を走破する重機になる。その荷台には、俺がこの都市に来る道中に狩ったモンスターが山積みにされている。

 

「わー……とぉ! ふむ、うん……おー」


 このMST2200、通称キャリアダンプの荷台は比較的高いが、安芸は転生者であり、この世界でも屈指の精霊騎士。最初に驚きはしたものの、軽くジャンプして荷台へ乗り移った。


 そして積み重なって居るモンスターの検分を行っていくが、途中から感嘆の声しか出て居ない。曰く、私でもここまで上位のモンスターは、中々狩りに行けない。知識として知って居るだけ、と言う事で目を輝かせていた。


「因みにこの一台だけ? この感じだと、まだ出し惜しみしてる?」

「あー、出し惜しみ、と言うか一台で積みきれないのは確かだ。んじゃ、残りを出す。コール、CD110R、召喚! 連続召喚、コールA35G、召喚!!」


 ドガン、ズギャンと二台まとめて召喚した。CD110R。通称くるくるダンプと言う。MST2200との違いは、CD110Rは車体上部が360度旋回するので、任意の場所に荷下ろしを可能とする便利な重機だ。


 このCD110RとMST2200VDは、メーカーによる規格、車体の名称が違うだけで積載量は一緒だ。両方とも最大積載量は約11トン。


 そして、もう一台呼び出したのが……現世で俺が務めていた会社で保有していた重機、正式名称アーティキュレートダンプ。通称は重ダンプ。


 不整地走破性は低いが、その積載量はこのクラスで、驚異の約35トン。その荷台には、たった一つの巨体が乗せられている。


「まさか、こう来るかーうーん……久し振りに見たよ、アースドラゴン」


 そう、CD110Rには、MST2200と似た様な感じでモンスターを山積みにしているが、A35Gにはドラゴン一体だけを積み込んでいる。


 重さは差ほどでもないが、余りにも巨大だったのでA35Gに積載する事になったのだ。


「まさか、買取出来ないのか?」

「一応見た限り全て素材として、売却は可能だよ。でも、うーん……冒険者ギルドにも予算の都合ってあるから、全部買い取れるかは分からないよ? もしかして、緊急にお金が必要な感じ?」


 流石は我が妹……じゃなくて、嫁。婚約者だろだって? 嫁だ。俺の悩みを見抜いてくれた。実際問題として、俺は手持ちのお金、この世界の通貨を持ち歩いていない。このモンスターの換金を、と考えたのは当然スキルによる代価を払う為だ。


 重機召喚スキルは、比較的自由に、多岐に渡る重機を呼び出せるが、唯一の弱点がこの金銭問題。整備点検、補給修理と言った形での維持費が発生する。現在の所、月末に纒て支払う方法を取って居るので、ノーコストで使えて居る。


 そんな訳で、万一このモンスターが売れなかった場合は、最悪安芸からお金を融資して貰うと言う、お間抜けな事態になる。その事態は避けられたので、取り合えず一安心だ。


「成程ね……因みに支払いはこちらの世界の通貨で大丈夫なの?」

「ああ。現時点で月末の請求額は、金貨2枚となっているな」


 漠然と積み重なっていく請求だが、この世界の通貨単位はまだ誰からも聞いていないので、若干怖い所ではある。


「え、そんなもん? 重機って物凄く高価だと思ってたから拍子抜けだね。あ、一応金貨1枚が、日本円に直すと約10万円位だよ」

「買えば高いさ、にしても……20万か。だが、あれだけ呼び出しても、リース扱いだからこんなもんなのか?」


 正直な所、俺はごく平凡な労働者であり、経営者でも無ければ、管理者でもない。会社の決める単価は多少聞きかじった位なので、どうにもピンと来ていない。まぁ、使っている内に慣れて来るのだろう。細かい内約も覚えないとな。


 そして会社で決める単価も、単純に重機だけの単価だけで請求する訳では無い。操縦者、オペレーターを込みでの単価を請求するので、実際はもっと高くなっていると推測出来る。


 これは、あくまでスキル側で重機のみをレンタル、リースしてますよ。と言う事から来る重機本来の単価と言う事で間違い無いだろう。因みに、このスキルから重機を買う事も出来る。勿論高価であるが。


「っと、じゃあこれ。どう振り込むのかわからないけど、可能ならリセットしてみたら?」


 そう言ってポンっと金貨2枚を手渡してくる安芸。今までは手持ちがなかったから月末払いと言う形だが、現在は現金を手に入れたので、支払いは可能だ。その状況に応じて臨機応変に対応する、このスキル自我でも持ってるのか?


「すまん、後で返す。良し支払いは終わり。俺が念じると支払いが出来るみたいだな」

「ちょっと何を言ってるか分からないレベルで便利だね……」


 呆れ顔の安芸。所謂ジト目と言う感じの表情を浮かべるが、本当美人は何をやっても絵になるなと思った。現代で普及しつつある、キャッスレス決済をも上回る利便性。尤も、これは俺だけのユニークスキルだからこそ可能であり、実現は難しいだろう。


「因みにだが、目算で良いから大体の売価は分かるか?」

「ちょーっと待ってね……まず、私は専門じゃないから、大体の記憶と知識だけで言うから、あくまで目安程度にね。不整地運搬車の方が、全部で大体金貨換算で最低800枚位、アースドラゴンは時価。最低でも金貨3000枚位だと思う」


 最低でそれ、と言うのは素材全てが完全な状態で売れれば、更に上を狙える。これはプロの目利きに頼るしかないが、冒険者ギルドの解体、買取担当の目利きは確かであり、実績も十分との事。


 尤も、ドラゴン系のモンスターは中々市場に出回らない為、これこそドラゴン専門の有識者を交えて討論するのが、一般的なドラゴンの査定の仕方だそうだ。


 俺は召喚を解除し、モンスターを積載したまま格納する。重機召喚は、スキル解除後に整備に回されるのだが、荷物を積載したままだとそのまま再召喚する事が可能であった。利用の仕方次第では物流を支配する事すら可能なのが恐ろしい。ただし面倒なのでやる気も無いが。


「じゃ、冒険者ギルドに行こっか。そう言えば冒険者登録はしてなかったよね? 登録しないと買取出来ないシステムだから、まず登録しなきゃね」







 そう言って、当然のように恋人繋ぎで街へと繰り出す安芸。目的地の冒険者ギルドに向かうまで、温かい目と嫉妬に狂う目に晒されたのは言うまでもない。





とあるマンガでは、針的な物を使って味覚を無くす描写がありましたね。

主人公は極度の精神的ストレスにより、味覚を失ったと言う事にしてありました。

何故味覚障害から回復したのかは、ご想像にお任せ致します。

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