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第八話 これで俺も神の使徒

大体この時間に投稿します。休日は朝晩の二回を予定しております。

 結局安芸に押されるがまま、激流に身を任せて同化はしなかったが、取り合えず婚約と言う形で落ち着かせた。あくまで俺ら間での取り決めなので、知られた所でどうと言う事は無い。


 余談だが俺と安芸のやり取りは、全てガルーダに筒抜けていた。だからと言ってからかわれる様な事も無いし、取り合えずおめでとうと言う言葉を頂いた。


『想い合っていた者が番になるのに、それを祝わずになんとする』


 とはガルーダの格言である。因みに今まで一連のやり取りは、なんと屋外で行われていたと言う事にお気付きになられただろうか?


 流石に精霊騎士と、ガルーダが居るとは言え、一介の初対面の人間があれやこれや、と言う状況を、簡易的にではあるが避ける為、ガルーダが風の結界を張り、外部との情報をシャットアウトしていた。


 だから俺達は、あんな赤裸々な会話すら出来た訳であるが、思い返せばホント恥ずかしい。けど、隣で満面の笑みを浮かべる安芸を見れば、そんな恥ずかしさも軽く吹っ飛んでいった。


「所で兄さん、私達の呼び方どうしよっか? 対外的にはユウキさんと、レオナ、って事になるのだけど、二人だけの時とかさ」

「そりゃなー……俺は安芸って呼びたいから、それで良いと思うな。ただまぁ……なんとなく、隠した所でどっかでボロが出そうな気もするが」


 違いないね、と微笑む安芸。そのまま精霊都市の入場門に到着。検査を受けるかと思いきや、精霊騎士権限でスルーさせるという荒業を行使する。


 安芸が笑顔で衛兵に、なにか? と言えば黙らざるを得ないのだろう。規則ドコー。


「レオナ、待て。職権乱用過ぎる。待ってろ、すぐ終わる」

「はぁい」


 取り合えず入場検査を受ける。尤も俺の持ち物は、大半がスキルによる空間格納に収納されているので、殆ど皮装備一式と言った所。


 小型化して肩に止まっているガルーダから授かった宝玉と、ガルーダの羽を提示した所、衛兵は直立不動で敬礼を行い、それ以上の検査はスルーされた。


 その一部始終を目撃していた安芸。入場後に小声で俺に言ってきたのは、私と大して変わらないじゃん。との事でした。


 余談ではあるが、聖獣と精霊騎士の場合、聖獣の方が位が高いとされている。この為聖獣の印を提示した俺は、精霊騎士と同格かそれ以上と見られた訳だ。


 またしてもガルーダに一杯食わされた感じではあるが、当のガルーダは意に介さず。そもそも人間が決めた位になど興味が無い。


 とバッサリ一蹴されてしまったので、俺も安芸も乾いた笑いを出すだけであった……。




 ともあれその足で風の神殿、聖セラフィーナ教会の総本山へと向かう。そう、安芸は本気で実行するつもりなのだ。


 先にも言ったが、既に位だけで言えば、俺は精霊騎士の上位存在となる。だが権威を示すには、神殿で女神から存在証明たる証を手に入れる必要がある。


 神託の間と呼ばれる場所にて、精霊騎士、聖女、大司祭の三名が同時に神託を授かるのが一般的な神託である。


 これは神々の言葉の整合性を持たせようと言う、神族側からの計らいであると言われている。神の言葉はこの世界では絶対だ。


 三名の内一人が仮に何らかの虚言を付いた所で、それは神罰が下る結末にしかなりえない。


 つまり、ここで女神セラフィーナ様から俺が神の使徒である、と言うお墨付きを貰えれば、万事全て解決する、と言う事だ。





 安芸ちゃん、俺ちょっと頭が痛いよ……。


 そんな雑念を振り払う頃には神殿に到着。早速神託の間へ俺を連れて行こうとする安芸だが、やはり神殿騎士に引き留められる。


 神殿騎士とは各神殿に使える文字通り神殿の守り手。立場的には精霊騎士直轄の部下であり、戦力としては間違いなく一線級の猛者である。


「お待ちください、レオナ様。これより先は、部外者の立ち入りは許可されておりません。行かれるのであらば手続きを」

「控えなさい、ジャック。私が何の考えも無しに部外者を連れ込むとでも?」


 そして始まる押し問答。幾らレオナが神殿騎士を統括する立場とは言え、神殿騎士の彼等にも規則が存在する。


 そりゃ精霊騎士とは言え、いきなり見ず知らずの人間を連れてくれば、それは普通に警戒をせざるを得ない、当然だ。


「あぁ……その、ジャックさんと言いましたか。取り合えずこれを見て頂ければ……」

「はっ、はい。拝見いたします……ッ!?」





 なので俺から助け舟を出して見た。


 半分涙目の神殿騎士ジャックさんは、それを手にした瞬間更に凍り付き、ギギギ、と油の切れたロボットの様な動きで俺に向かい直すが、全身がガクガクと震え上がっている。


「……ジャック、そう言う事よ。良いわね?」

「は、はひぃ……ど、どどど、どうぞお通り下さい……」


 改めて思う。ガルーダの影響力激ヤバだ。済まんな、ここまで来たら、もう俺も止まる訳には行かない。そのまま更に神殿の奥へ。


 明らかに他とは雰囲気が違う場所、初めてセラフィーナ様を見た時の様な、神の威光に溢れる場所と言う感じだ。


 そして扉の前には純白のシスター服の女性、聖女と言われその身には僅かながら神格を宿す神の巫女。


 反対側には妙齢の女性、装飾過多になりがちな司祭服ではなく、飾り気のない漆黒の司祭服を纏う大司祭だと思う。


 神託には二種類の神託があり、神々が個々に啓示を下す物と、公式に公表する為の物が存在する。後者の公表の為の神託の儀式には、精霊騎士を含めた三人の力が必要不可欠である。


 集まるまで時間が掛かると思っていたが……どうやら彼女たちも個々に神託を受けていたらしい。ここまで見通すとか、神々は俺と安芸をくっ付ける事に何の疑問も持っていないらしい。


 神託の間に案内された俺を、三角形になる様に囲み、跪き祈りを捧げる。俺も彼女らに倣い、初めて女神と相対した時と同じく膝を付き首を垂れる。







 それと同時に神託の間自体が神々しい光に包まれる。


 三名の祈りが天に届き、女神セラフィーナ様の神託が下されたのだ。そんな状況の裏で、俺はどんどん意識が遠のいて行った――。

 

「……ここは」

「はい、貴方だけお呼びする事になりました。お久しぶりです、ユウキ様。風の女神セラフィーナです」


 祈りの間から更に神位の高い場所、恐らくここは、神界と呼ばれる場所なのだろうと思う。辺りを見渡せば、少なからず地上ではありえない光景が広がっている。


「お察しの通り、ここは我々神々の治める世界、人々からは神界と呼ばれております。ここの貴方をお呼びしたのは他でもありません、貴方に神託をお伝えする為です」

「セラフィーナ様、その神託を知る前に一つ、貴方に御礼を申し上げたいと思います。彼女、安芸を守ってくれて、本当に感謝の気持ちしかありません」


 俺の言葉にセラフィーナ様は、少々ばつの悪そうな表情を浮かべている。例えどんな理由があろうとも、俺にとっては最愛の人を保護したと言う事実に変わりはない。


「そのお気持ちだけで十分です……ですが、見方によれば私の行為は、貴方を拘束する為の手段と思われても仕方ありません」

「……それでも、です。もう二度と会えないと思っていた人と再会出来て、嬉しくない訳はありませんよ」


 俺はこの謝意を伝えれればそれで良い。俺の言葉に頷いたセラフィーナ様は、俺に神託の事を話し始めた。


「まずは、祈りを捧げる三名にはお伝えしましたが、貴方を神の使徒として認めます。証としてこの聖剣を授けます」


 そう言われると俺の目の前に、光輝く一振りの剣が顕現した。女神セラフィーナ様の銘を打たれたその剣は、レオナの纏っていた若草色を基調とした白銀の剣。



 この世のものとは思えない程の神々しさに溢れている。

 

「そしてもう一つ、貴方にしか頼めない、とても重要な神託が御座います。それは――」

「その話は私からしよう。下がれセラフィーナ」


 俺にしか頼めない事、それを伝えようとしたセラフィーナ様の声を遮る、とても威厳に満ち溢れた声が俺の後ろから聞こえてくる。


 この聖剣を賜ったから俺は耐えれているのだと思うが、この重圧は、恐らくただの人では、いや、異世界人でも耐えられない可能性を秘めている。


「私はこの神界を、いや……地上も含めた全てを統括する者。創世神ゼフィロス。君には私の加護を授ける」


 創世神。ガルーダから聞いた創世の神々、主たる四柱の女神を束ねる主神がこの創世神ゼフィロス様。


 天や地と言う全ての器を作り、火、風、水、地の女神の力で大地に生命を齎した、とされる。


 そんな神直々に得た加護が、創世神の加護。俺はその内容を見て、内心でやはり、と思ってしまった。加護に含まれる効果は多岐に渡るが、中でも目を引くのが……。


「不老、超常殺し……」


 異世界人とは言え、当然ただの人である。歳月が流れれば歳も取るし、最終的には天命を全うする。しかし、俺はこの加護によりその輪廻から外れる事になる。


「不死ではないので十分注意する事だ。そして、超常殺し……君なら私の言わんとして居る事が、理解出来るだろう?」


 ゼフィロス様の言っている事を、俺は嫌でも理解していた。この世界には、現世とは別のルールが存在する。その最たる物が異世界人と現地人の生命力、そしてスキルになる。


 現地人は、勇者級役職、上位天使系、悪魔系統の精神生命体、魔王級存在、魔神、邪神と言った超常の存在に対し、抵抗や撃退は出来るが絶対に殺せないと言うルールに縛られている。


 稀に例外もあり、現地人や異世界人でも上位存在を倒せるスキルを有する場合があるが、このスキルによる効果に、勇者、魔王、神の存在は含まれない。


 余談ではあるが、過去の勇者は品行方正であったが、勇者パーティの中の一人が力に溺れて暴走。最終的に大きな被害を出しつつ、同じ異世界人であった勇者に討伐されると言う事があった。

 

「その力を振るうも振るわないも、全て君に一任する。私から言えるのはここまでだ。本来我々神族が、ここまで人に肩入れをする事が……異常事態だと考えてくれ。セラフィーナ、後は頼む」


 そう言って創世神ゼフィロス様の存在が消えた。まるでそこには誰も居なかったかの如く。後を引き継ぐセラフィーナ様の表情は読み難いが、微かに困惑の色が見えている。


「……ふぅ。私も覚悟を決めましょう。ゼフィロス様は、本来なら不老不死のスキルを与えたかったのですが、これは私を含む女神連名で否決致しました。申し訳ありません」


 理由は聞かない。そして創世神からして賛成させられた、と言う事が俺には分かったからだ。何時、どんな時でも男は女性に弱い、と言う事だ。


「十分ですよ。少なくともゼフィロス様の加護の内約を見れば、女神様方が言いたい事は想像が付きます……簡単に終わるつもりはありませんので。俺も、彼女も」

「はい……それでは、女神セラフィーナとして、貴方に使命と役職を授けます。どうか、世界を……未来を」


 その言葉を受けて、俺の意識が神界から地上へと舞い戻る。目を開ければ未だ祈りを捧げている三名。


 あちらでの時間など気にしてはいなかったが、こちらでは目を瞑って数秒での出来事だったようだ。

 俺は自分のステータス画面を開き、役職を確認した。今までは重機操者であったが、その項目内にもう一つの役職が存在した。


「……俺が、神の使徒、か」


 神の使徒。創世神の加護を持ち、超常の存在を討てる存在として。人類の希望、剣であり盾として。

 今更断る事は出来ない。いや、最初から断ると言う選択肢は無かったのだろう。こうして二度と会えないと思った彼女と再会出来た、これは何物にも代え難い奇跡。



 この奇跡の為なら俺は全てを捧げられる。


「例えこの身滅ぶとも……我が魂をこの世界の神々へ捧ぐ。その使命、身命を賭して果たします」


 俺の言葉を聞いて、祈りを捧げていた三人は同時に視線を俺に向ける。安芸は微笑み、聖女は無表情で、大司祭はうんうんと頷いている。


 俺と神々のやり取りは、恐らく彼女らには聞こえて居なかっただろう。あちらの方は安芸の予想通り、俺を神の使徒としての認めるとの内容で一致していた。


 直後、俺の眼前に、一振りの剣が舞い降りる。それは俺が天界でセラフィーナ様から渡された聖剣。意識のみが神界に誘われた為、後から降臨する形になったのだろう。



 


 俺はその剣を手に取り、ゆっくりと天へ掲げると、眩い光が空に伸びる。


「綺麗……」


 安芸の言葉に俺も息をのむ。それはまさに神の奇跡。神殿のステンドグラスを突き抜け、都市国家全体に聖なる光が降り注ぐ。人々は足を止め、天を仰ぎ、優しい光に祝福されていく。


「聖者の祝福。聖剣の力を行使して、効果範囲を増幅させた……効果はこの都市国家に生きる全ての人々への、加護。少なからずこれで死に至る病に脅かされる事は無いだろう」


 その言葉に安芸以外の二人が慌てて跪く。あっさり言ったがとんでもない効果である。事実彼女らもこの祝福をステータス画面で確認して驚いているそうだ。


 重機操者の職業に加え、第二の役職を得た。実際に過去の勇者も複数の役職を保有していた、と言う事実に裏付け確認がされていると、神託の間に神殿長、神官長と言った神殿上層部の面々が現れ、俺に膝を付き首を垂れる。


 俺自身は忠誠を誓って貰うようなことではないと思っているのだが、聖者の祝福の事実確認と、神の使徒認定作業の為との事だ。




 色々考えて居たが、安芸の言う通り、あっさりと俺は神の使徒と認められたのであった。





一応何度も読み返して、書き損じが無いか確認はしているのですが、やはり抜けている部分が有ったり無かったり。

事故の95パーセントはヒューマンエラーと言いますが、まさにこれです。

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