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冬桜

作者: 武田道子

冬桜



―冬の章―

雪の重さで引き裂かれた桜の枝えだが

真っ白な雪の上に影のように横たわる

硬い何百もの蕾が

冷たい雪の上に永遠に眠る



長い夢の後

ただの夢に終わってしまった

桜の花の思いは

もう 誰にも伝わらない



冬の冷たい白い花びらが

底知れぬ深い空から湧き上がり

取り憑かれたように

ただただ散り続ける



そんな冬の狂おしいまでに

大地に咲かせようとする花びらは

引き裂かれた桜の枝えだへの弔いに

純白の静寂な音楽を奏で続ける



―春の章―


・・・そして庭の片隅に

山のように積まれ折れた数々の枝についた蕾が

雪溶けて暖かな日に温められ

魔法と悪夢から解き放されたように・・・

次々と花をほころびさせはじめる



桜の命は短くて

ゆえに厳寒にもこんなにも強く耐え

ただ一度だけ花開きたいために

命の尊さを知るゆえに

冬に息止められたはずなのに

よみがえる



今日も散っていく命がある

明日のために生き抜こう

約束されてはいないけれど

それでも良いと引き裂かれ折れた桜の枝を見て思う

生きることはやはりとても

美しい


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