天使と悪魔と人間と
*** 天使と悪魔と人間と ***
天使は言った
「あなたは一人じゃないですよ」
悪魔は言った
「あなたは一人じゃないですよ」
人間達は言った
「あなたは一人じゃないですよ」
そして僕は思った
「僕は一人じゃないですよ」
天使は言った
「“一人である”と感じたときには何時でも私に相談なさい」
悪魔は言った
「“一人である”と感じたときには何時でも私に相談なさい」
人間達は言った
「“一人である”と感じるのはお前がそう感じるからだ」
そして僕は思った
「“一人である”と感じるのは人間達の所為だ」
天使は言った
「いいえ、少しずつでもいいから他と共に歩むことに努力なさい」
悪魔は言った
「そうだ! お前は一人で孤独なのだ! 元来生まれたその日からお前はそう在るのだ」
人間達は言った
「キモイ! ウザイ! 勝手にすれば?」
そして僕は思った
「ああ、やはり僕は“一人”なのだ」
天使は言った
「今からでも遅くはないのです! あなたなりに努力さえすれば……」
悪魔は言った
「カッカッカ! 信じられるのはお前自身だけだ!」
人間達は言った
「…………」
そして僕は思った
「この世界に僕の居場所なんて無い」
天使は焦って言葉も出なかった
悪魔は笑い転げて今にも死にそうだ
人間達は目には入っても大して気にしていない
そして僕は思った
そして僕は思った
不意に僕の子が擦り寄ってきた
小さな僕の子が見上げるように僕を見ている
小さな彼が言った言葉は
「パパ大好き」
ああ、僕は思った
そして僕は思った