4-12. 報酬
「そちらは頼んだぞ、父上、カイ」
言う間にも、わたしとサーキィ側に立つ説教師は体中から続々と石を生やし、われらにおおいかぶさるようにして近づいてきた。
今度はわたしも反応できた。すばやく剣を抜き、説教師が腕を伸ばしきる前に、一歩踏み出して手首を斬り飛ばす。
硬い! 重い手応えで、手がしびれそうになった。
手首を落とすことはできたが、これはしっかり腰を入れて斬らねばならないぞ。
手を斬られた説教師は悲鳴をあげることもなく、数歩退き、残った腕のほうを高く上げた。
何をする気だ?
説教師が物を投げるように勢いよく腕を振ると、なんとその手先から拳大の石が飛び出て、サーキィのほうへと一直線に飛んでいった。
「サーキィ!」
わたしは叫んだ。
その時サーキィはナイフを両手で横にかかげ持ち、ぶつぶつと口を動かしていた。
すると、飛来する石はサーキィの目前で硬質な音を立てて弾け飛び、砂礫となって散らばった。
間髪を入れず、サーキィは手を石畳に置き、
「サーラさま いま」
と言ったかと思うと、また何事か唱えはじめる。
わたしは覚えていた。大猿のときに動きを封じた術だ。
わたしは即座に説教師に向かって駆けた。間を置かず説教師の動きが鈍る。
剣を諸手でしかと持ち、
「はあッ!!」
説教師の首元からけさがけに斬って落とす。
白刃一閃、首から腋へと通り抜けた。
説教師の動きは止まり、やがて、体全体が砂粒へと変わっていく。
「ふーっ」
わたしは大きく息を吐いた。どうにか倒すことができた。
「サーラ、今度はうまくやったな」
余裕の表情の父が声をかけてきた。
わたしより先に斬り伏せたと見え、父の足下にはすっかり砂山ができあがっていた。
「わたしとて何の用意もなしに旅立ったわけではないさ」
父に胸を張って言い返し、わたしは剣を鞘におさめた。
そう何度も不覚をとるわけにはいかないからな。わたしだって場数を踏んできたのだ。
「サーキィもなかなかやるじゃないか。それはもしや精霊人の釼というやつか?」
「うん 霊珠で つよく なった」
「ほう! 霊珠で! それなら、これもなんとかなるかもな」
父は剣を鞘ごと取り出した。
さっき指摘した、わたしが持っているのと同じあの剣だ。鞘には無軌道に配置された宝石。柄にもやはりわたしのと同じような石がはめこまれている。よく見れば多少の意匠の違いはあるようだが、一見すると同じものに見える。
「父上、なぜ同じ剣を持ってるんだ?」
「これはある人からのもらいもんで、見所のあるやつがいたら分けてやってくれって言われたんだ。ちょうどいいからお前にやった」
「なんでわたしなんだ」
「俺までたどりついたし、さっきのやつもうまく倒したじゃないか。はっはっは謙遜するな」
父は笑ってわたしの肩を乱暴に叩いた。
胸の奥からにじみ出るこそばゆさで、わたしはにやけてしまいそうだった。
「では、柄の石を取り外したのは?」
「課題をこなすごとに報酬があったほうがやる気が出るだろ?」
父はそう言って大笑した。
わたしはこんな得体の知れない剣でやる気を出した覚えはないがな。
次回 >>> 「 悪 癖 」




