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かくも心地よきさすらい  作者: 北条三蔵
第3章  わからない日
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3-14. 告白

「カイさま、サーキィさまもご壮健(そうけん)でありますように。ときに、カイさま」

「はい?」

 ファウラは、騾馬に乗ろうとしていたカイに歩み寄って、とんでもないことを言った。

「次にソニヤーを訪れた時には、わたくしの愛を受け入れてくださいますか」

「愛!? ななな何を言ってるファウラ!」

「そのままの意味ですよ、お姉さま。わたくしもそろそろ子供を持つことを考えてもよい年齢ですので」

 ああっ。また文化が違う!

 しかし焦るわたしをよそにカイは平然と答える。

「うーん。次のことは、次来た時に決めますよ」

「それは残念。でも、いつでも来てくださいませ」

 ファウラよそんなにあっさり引き下がってよいのか。

「さて、それじゃあ行きますか、セアンへ。どのルートがいいですかねー」

 カイもカイで乙女の告白に少しは思いを致すところはないのか。

「お姉さまも、サーキィさまも、また来てくださいね。歓迎いたしますから」

 なんの動揺も見られぬまま、ファウラはわたしとサーキィにほほえみかける。

 あああ。もうわたしには、わからぬ。全然わからぬ。

「ほら、行きますよサーラさん」

 カイはすでに騾馬に乗っている。ああもう。

 ファウラとカイのあいだでまごまごしてから、致し方なく、わたしはサーキィとともに騾馬に乗った。

 ファウラがにこやかに手を振って見送っている。

 わたしはどんな表情でそれを受けとめればよいのか。

 しかし騾馬は歩き出し、わたしは父を捕まえることを考えなければならないのであって、かといってなんだこれは。どうしろというのか。うううう。

 唸っているあいだにもソニヤーは遠くなっていく。

 天気はすっきりと晴れ、さわやかな風が吹いていて、申し分のない出発日和なのだが、わたしの胸のうちはもやもやとしてしかたがない。

 何度か口をぱくぱくさせてから、ようやくわたしは声を出した。

「……ああ、ええと、カイよ」

「はい?」

「一晩ぐらい、だな。その、出発を遅くしてもいいんだぞ、そなただけでも。ロウハルならばわたしでも行ける。……たぶん」

「ははは。今のぼくの仲間はサーラさんとサーキィさんだけですよ」

 カイは明るく笑った。

「――ふんっ。そなたの真意はまるでわからぬ」

「よく言われます」

「だんじょのきび は むつかしき もの」

 サーキィがぽそりとつぶやいた。


次回 >>> 第4章「 急 行 」

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