3-8. 奇気
屋上まで行けたというわたしに驚愕し、走って塔をのぼっていったファウラだったが、あえなく敗北、すごすごと帰ってきた。
「さて、サーラさんだけが上まで行けたということになりますね」カイは含み笑いをした。「いったい何をしでかしたんです?」
「なんで悪いことをしたかのように言うんだ? 何もしてないし何も気づいたことはなかったぞ。カイはどうなんだ?」
「うーん。あったといえばあったし、なかったといえばなかった」
「わけのわからぬことを」
「まあまあ。サーキィさんはどうですか?」
「余は …… ちょっと きもちわるい」
「ほほう。気持ち悪い、ですか」
「うん 水霊人たちがいっていたこと おもいだす」
「温泉の水霊人たちか。カイは聞いていないだろうが、彼女らはソニヤー方面の幻動気がなんだか変だ、と言っていたんだ」
「お姉さまたちは温泉の水霊人に会ったのですか。めったに出会えないといいますのに」
ファウラは目を丸くしていた。ソニヤーにも温泉の話は伝わっているようだ。
「ああ、サーキィがいたおかげでな」
水霊人たちは「危険な感じではない」とも言っていた。彼女らが指摘するのは、この塔の異変のことなのだろうか。
もしそうなら、確かに危険ではない。が、葬儀をおこなえなくなってしまうのはソニヤーにとっては一大事だ。
「気持ち悪い、それに加えて、おかしな幻動気。いやはや興味深い。ちょっとぼく、もう一回行ってきますね」
言うが早いか、カイはそそくさと塔に入っていった。
「お、おい、カイ」
わたしが声をかけた時には、すでにカイの姿は見えなくなっていた。
「まったくあやつは……」
「楽しいひと」
あきれ顔のわたしに反して、ファウラは顔をなごませた。
次回 >>> 「 気 随 」




