3-3. 骨肉
「見たところ、サーラさんはわたくしより年上のようですね。おいくつでいらっしゃるの?」
「……十八だ」
「やっぱり。わたくしは十五歳。ぜひお姉さまと呼びたいわ」
お姉さまと呼ばれるのはひじょうにむずがゆい。そしてなんだかひじょうに居づらい。座っているのがつらい。この場から逃げ出したい。脂汗が出てきた気がする。
ファウラはとても、とてもうれしそうだ。
彼女は流れるような髪を揺らして、純粋に喜んでいた。彼女がまとう甘い香りがほんのりとただよってくる。
ファウラにとっては、異母姉妹の対面にはちっとも衝撃はないらしいし、むしろ歓喜でもって迎えるものであるようだ。
わたしのほうは、ある程度予想していたことではあったものの、実際の事態に直面して、整理がつかぬというか、何をどうしたものか心底困り果ててしまった。
「お姉さま、誤解なさらないで。バダルさんが不貞を働いたと思ってらっしゃるのかもしれないけれど、わが家のしきたりにむりやり付き合わせただけなの」
「ほう。しきたりですか」
この状況でも好奇心を表に出すのをいとわないカイ。こやつめ。わたしは眉間にしわが寄りっぱなしだ。わたしのことを察しろ。
「ええ。そもそもソニヤーでは、外の者と子を作ることを昔からたいへん良きこととしているのですが、女系のテルベ家では、外部の男性の血を入れることをより積極的におこなってきたのです」
「へえー。それはそれは」
「わが家は、旅人の男性を好んで選んでまいりました。歴代どの方にも家に残ってくれるよう希望したことはないですし、特に見所のある方ならば、ほかに家族があってもかまわないからと無理を言ってでも子供をもうけてきたのです」
…………あまりの慣習の違いに、わたしは絶句するほかない。
とはいえ、合点がいったこともある。ファウラが父のことを「バダルさん」「父にあたる」と距離を置いた言い方をしていたのは、そういう背景があってのことだったわけだ。そのようなあり方では、「父」という意識が薄いのだろう。
そして、父・バダルはその、「特に見所がある方」だったと。
……それはいまいち納得できないというか、納得したくない気持ちがあるのだが、とりあえず、骨肉の争いが起きそうになくてちょっと安心した。ちょっとだけな。
それにしてもファウラの喜びようはなんなのか。
その疑問を発するに及ばず、ファウラは、
「世界のどこか知らないところに同じ血を分けた人がいるかもしれないなんて、とってもすてきなことだわと思っていたのです。お姉さま、親しくしてくださいませね」
そう言って、爛漫な笑顔を向けてくる。人は、圧倒的ご満悦の人間の前では一切の言葉を失わざるをえない。
うれしそうなファウラに対して、わたしのほうはいたたまれなさのあまり爆発しそうだ。人の感性にはこれだけの差が生まれうるものなのかと感心すらしてしまう。
「サーラさま おげんきを」
サーキィの励ましにわたしはうまく反応することができない。
「ファウラさん、サーラさんに会えてよかったですねぇ」
カイの放言にも以下同文。
……。
しかし。
しかしこれだけは、心の中だけでいいから、叫ばせてもらおう。
文化がちがーーーう!
次回 >>> 「 客 神 」




