2-2. 初顔
仕事紹介所へと、カイにくっついて歩くヤックムという町。
わたしの洲サルカルとはずいぶんと様相が違う。
まず家だ。木造建築の上に乗っかっているのはどれを見ても三角の屋根で、屋根の上にたくさんの「何か」が乗っている。
カイに訊いてみると、
「あれは瓦というんです」
かわら。聞いたことはある。図版でも見たことがあるようなないような……。
不思議な形だ。なぜあのように波打っているのであろう。
全体としてくすんだような色合いの町並みではあるが、ふいに現れる極彩色の建物はきっと宗教施設に違いない。サルカルでも、そこだけ花が咲いたように神殿があったものだ。
それから、先ほどから町ゆく人たちの格好がわれらとまるで異なるので新鮮だ。
ここでは男も女も髪を長くして結ぶ人が多いようだ。
それに、風通しがよさそうなゆったりとした服を着ている。……というと聞こえがいいが、肌の露出が少々多いともいう。男女とも、胸元や足元が今にもあらわになりそうで、目のやり場に困らぬでもない。
「今時季は比較的乾燥していますが、湿気の多い季節が長いんですよ。だからそういう服装になるわけです」
とカイ。
そう言われてみれば、ヤックムに降り立ってから、ちょっと空気がもやっと重たい感じがしてはいた。これが湿度の高さなのだな。
普通に歩いているだけなのだが、ごく薄い膜のあわいを通り抜けているような感覚がある。嗅覚を刺激する空気も、水のにおいを多分に残している。井戸の真上で鼻をすすった気分だ。
興味深くはあるが、あまり長居はしたくないものだ。早めに父が残した手がかりとやらを見つけなければ。
それにしても、町の中心部に近づくにつれて、道を歩いている人たちが妙にこちらを見てくるような気がするのだが……。
気のせいだろうか。単に旅行者が珍しいのかもしれない。精霊人もいることだし。
「ここです」
カイが指差した建物は、ほかの家々とそう変わるところはなかったが、一応立派な門がついてはいる。
門の上部にかかげられている看板には、蛇がのたくったような文字が浮き彫りになっており、ちっとも読めぬ。「題材」の中で見たことがあるような気がする文字ではある。しかし残念ながらわたしには達筆に過ぎる。
仕事紹介所を意味する言葉が書いてあるのだろうから、気にしないことにする。
にしても、表記方法が多様なままなのは困りものだと思うのだが、為政者は何をお考えなのだろうな。
中へ入ると、年季が入って傷だらけの長机と長椅子がいくつも並んでおり、仕事をもらいに来たとおぼしき者たちがたむろしていた。
鉱山の仕事があるからだろう、体格のよい男が多い。肌が白いのは坑道に長くもぐるからであろうか。
気性が荒そうな者もいるように見え、一歩入って少々ひるんでしまったことを認めざるをえない。
であるが。
そんな屈強そうな男たちが、われらが入るとにわかにざわついた。
吃驚と畏怖、ときに諦念、ときに歓迎の念がわき上がる。
いったい何事が起きたのか?
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