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再会の物語

 たいくつしきったその顔を私はずっと探してた。

『なにしてるの?』

『たいくつだから、公園に来ただけ』


『じゃあわたしと遊ぼうよ』

『たいくつしてるから「たいくつくん」だね』


 雲の上の女の子はくすくす笑う。黒い髪を揺らして。


『ねえ、これに乗ってみない?』


 こくりとうなずけば、雲の上の少女が僕を引き上げて雲に乗せてくれた。


『これ、わたしがつくった「げんそう」なんだよ』

『「げんそう」ってなに?』

『ニセモノ。本当にはないもの』

『でもここにあるよ。さわれるし、みえるし』


 すると雲の上の少女は嬉しそうに目を閉じた。瞬間、雲が消えて僕はしりもちをついた。クスクスと少女は笑っていた。少女は依然として雲の上だ。


『なんかつくってほしいものない?あるならつくってあげる。そのうち消えちゃうけど』

『ゲームの世界。ドラゴンたおしたい』

『じゃあ、ドラゴン退治にいこうか』


 少女が眼をつぶると目の前がゲームの世界に変わった。僕の服は鎧に。手には剣。盾。少女も同様だった。僕は、久しぶりに強い興奮の中にいた。

 そして、空からドラゴンが降りてくる。大きな、赤い、火を吹くドラゴンだ。

 僕と少女はそのドラゴンに向かって走っていった。


『たのしかった? たいくつしてない?』

『うん、またいこうよ』

『じゃあ、あしたもいく?』

『うん、またあしたね』

『またあした』


 ふわふわと少女は雲に乗って飛んでいった。

 その少女と僕はそれから会うことは一度も無かった。いつになっても少女が公園に来ることは無かったから。


 ……そんなあの子とまた会うとは思わなかった。ましてや、あの子が『喪失少女』になっているなんて思ってもみなかった。

 喪失少女。その上、人間恐怖症。ドラゴン退治も雲もきっと奇病(アイデンティティ)の力だったんだ。だから、今の少女は約束を果たせない。


「まだ、たいくつしてたんだね」


 だけど、なぜ僕を覚えているんだろう。なぜ僕を怖がらないんだろう。「喪失少女」のはずなのに。人間に恐怖を抱いているのに。


「ごめんね、あのときの約束まだ果たせてなくて、会いにいけなくて」

「え……でも、奇病(アイデンティティ)喪失したんじゃ……」

「喪失…? でも雲とか作れるの…」


 じゃあ、『喪失少女』じゃない? いや、あの怯え方は尋常じゃなかった。「喪失少年病」の特徴ともいえる……でも僕には恐怖してない。だめだ、わからない。この子は、なんだ?


「っていうか臨くん!? こんなかわいい子とお友達だなんて僕は聞いてないよ!」

「友達っていうか……昔一回だけ会ったことがあるだけで……」

「あれ? 野宮君、稲仁さんと仲良くなったのかい?」


 理事長の相田樹(あいだいつき)さん。長い黒髪をポニーテールにしていて、若くて美人だから男子生徒から絶大な人気を誇っている。確かに綺麗だし、僕もそれなりに見惚れてしまったこともある。

 ただ、莉央は別。むしろ苦手らしい。天敵、前に莉央はそう言っていた。今も莉央は引き攣った笑みになっている。


「え、いや、ぼ、ぼくじゃなくて、臨くんが知り合いみたいでぇ……」

「そうか、ん~桜木、杉谷、遠山、稲仁さん…………ついでに野宮。放課後、理事長室へ来てくれ」

「樹さん……ついでとか言ってると援助打ち切りますよぉ……」


 莉央の言葉を「はいはい」と適当にあしらい、去っていく理事長。呼び出しだ。嫌な予感しかしない。これは面倒ごとを押し付けられる流れだ。

 はぁ、と大きくため息を吐いていると少女がくいっと僕の袖を引く。


「ねえねえたいくつくん」

「ん? どうしたの……」

稲仁万音(いなにまね)だよ。名前」

「僕は遠山臨」


 少女……もとい稲仁万音が自己紹介するのに続いて、僕も自己紹介をする。……ただ、万音は自分の名前だけ言って満足したようで僕の名前なんて聞いてないようだった。


「なんで臨クンだけ平気なのさ…ぼくも仲良くしたいのに!」


 不満を漏らしながら僕の背中に飛び乗り、暴れ始める莉央。そもそも僕はそんなに体力も筋力も無いのだ。思わずよろける。よろけて、万音の方へと倒れそうになる。

 大和さんがなんとか僕を支えてくれた。


「やめろ! 支えきれない!」

「へぇ……臨にも女の友達とかいたんだな。よかった……」

 と笑顔で万音を見下ろす大和さん。


「か、かわいい! 女の子だ! 女の子! まねちゃんだね、まねちゃん。大丈夫大丈夫覚えられる覚えられる」


 騒ぎまくる美紅。これは、多分万音は……。


「ちょっと、美紅。万音が怯えるから……」


 案の定、万音はおびえている。僕の腕にしがみついて、震える彼女はちょっとチワワみたいだ。


「た、たいくつくん……その、この人たちは……?」

「あ、ごめん。親戚の大和さんと美紅と親友の莉央。悪い人とかじゃないから安心して」

「悪い人じゃ、ない、わかった」


 まあ、仲良くなるには時間がかかるだろうなあ……。恐怖は相当だろうし。


「うぐ……も、もう1回お名前教えてちょうだいな……」


 美紅が呻きながら万音にしがみつく。そこまで馬鹿だったか……と頭を抱える大和さん。きっと僕もあきれ顔になっているだろう。しがみつかれた万音はというと引きつった笑顔になっている。がんばって笑顔を作ろうとしているのがよくわかる。


「あ、えと、い、稲仁万音です……」

「2回目だし覚えれる! まねちゃん! まねちゃん!」

「……で? 結局どういう関係なのさ!」


 万音にのしかかろうとするのを大和さんに止められながら莉央がふくれっ面で僕に聞いてきた。


「……小さい頃、公園で1回だけ遊んだってだけだよ……」

「へぇ……あれぇ? っていうかさ、万音ちゃんは『喪失少女』なのになんで臨くんのこと覚えてるの?」

「え、あの、さっきから言っている『喪失少女』ってなんですか……?」

「え……? 万音ちゃん知らないのぉ!? だ、誰かに教えてもらわなかったぁ?」

「みんなが言うけど、なんのことかわかんなくて……」


 莉央が説明をしても奇病(アイデンティティ)のことなども質問されて話は一向に進む気配が無かった。そこで大和さんも説明に加わったけれど、とりあえず今日の講習と同じようなものがあるのを待つことにした。二カ月に一回のペースであるから結構すぐに受けれるだろうという考えだ。

 どうも、胡桃野子りすです!

 やる気がみなぎってるので、すぐにつくりました。

 さて、稲仁万音ちゃん、大和さん、莉央くんの外見を前回入れ忘れましたが、編集してありますので気になる方は確認しに行ってみてください。

 今回は、あまり書くことが無くて困っています。ネタバレになりそうなので……。

 次もできるだけすぐに投稿できるように頑張りたいと思います。感想など頂ければ喜びで執筆速度が上がりますので……お待ちしております。

 それでは、また!

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