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もりもりのくまさん  作者: 蒼紫藍
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くまったくまった


サァァァ…



風が吹き抜ける

初めて熊に会ってからもう50年が経った


時が経つのは早いものだ


あの時は酷く混乱していたものだが慣れればどうということもなく、私は今の生活を受け入れていた

今はたくさんの子ども達に囲まれ幸せな人生を「きゅうん」

ドカッ

『ぐふっ』


小さな茶色い塊に押し倒された


「きゅうんきゅー」



(むぐぐぐ、まったく、人がかっこつけてモノローグっぽいことを心の中で語っていたというのに…)



私を押し倒したまま鳴いている小さな茶色い塊の正体は、熊だ

大きさは私と変わらない


何故私が熊に押し倒されているのか

何故お互いに平気で触れあえるのか…


それは私が熊で、更に押し倒している熊が私の兄弟だからである



そう、私はどうやら熊に転生?したようだ









私がこの世界に産まれて実際はまだ5ヶ月しか経っていない

初めて熊を見た時は驚いたり恐怖したものだがすぐに自分の体が人間の物ではないことに気付き唖然とした

何故こうなってしまったのかは分からないが、私がこの世界で初めて感じた温もりの正体はどうやら母体の温もりだったようだ

私は熊の胎児として腹の中にいて、産まれ落ちた時に初めて見たあの熊が母親だったのだ

母熊は丁寧に慈しむように私を嘗めた

突然目の前に来られとても驚いたが嘗められている内に不思議と落ち着いた

私がその熊を母親と認識すると同時に私が人間ではなく熊であると認識した瞬間だった…




そして現在



「ぐるーきゅうん」


(ふぐぐ、さっぱり分からない!日本語で喋ってよ!もしくは英語!…いや、やっぱ英語分からないんでせめてぼでーらんげーじ?ぱふぉーまんす?あー!なんて言ったか忘れたけど態度で示してーー!!)


同じ熊なのに言葉が通じない兄弟に振り回されていた


初めの頃は、産まれたばかりだから言葉が分からず通じない、少したてば意思の疎通がはかれるとそう思っていた


(だかしかしそんなことはなかった…)


年の変わらなさそうな兄弟は家族と意思の疎通がはかれているらしいが私だけは依然として通じなかったのである


(何故だ…兄弟はいけるのに何故私はダメなんだ?産まれたばかりの頃ならともかく、ある程度経てば熊の脳が自然と理解をしていくものだと思っていたんだけど…前世の知識が人間の言葉以外は分からないと邪魔をしているのか、うーん、くまったくまった………つまらないことをいってる場合じゃないな、意思の疎通がはかれないことは死活問題だ!どうにかせねば!そしていい加減私の上から降りろこんにゃろう!)


押し倒されたままずっと考えていたが鬱陶しくなり甘噛み(強め)をして離れてもらった

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