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男の子との出会い

その時、駅事務室に1人の小学生くらいの男の子が駅員と話していた。

「ねえ、なんか困ってるんじゃない」

話しかけてきたのは結音の方からだった。

「そうかな」

「きっとそうだよ。こういうハプニングっぽい事もデートには必要じゃない」

「そうかな。話し掛けてみる」

「そうしよっか」

「じゃああの子がこっちに来たときに話し掛けてよ」

「私。なんで私からなの」

「やっぱりこういうのって女子からさりげな~く話し掛けたほうが向こうもびっくりしないんじゃない」

「隼人がそういうなら」

「じゃ、俺は陰で見守ってるから本当にそれがハプニングだったら教えてよ」

「え、私1人。それは悲しすぎるよ。第一なんでデートで女子を置いてくわけ」

「ごめんごめん」

「いや、いいけど」

「じゃ、一緒に来てよね」

「分かったよ」

結局2人でその男の子になにか困り事が無いか聞きに行くことにした。

男の子が出てきたのはそれから約数分が経過した時の事だった。

「こんにちは」

と結音はその子に言った。

しかしその子はまさか自分に言われたとは思っていなかったらしくそのままスルーして行った。

「こんにちは。さっき駅員さんと話してたよね。何か困ったことでもあった」

俺はすぐさま後を追い話し掛けた。

「僕のこと、ですか」

「そうそう。何かあったの。困ってたりしたら教えて」

「私と隼人が手伝ってあげるよ」

「本当ですか」

男の子の顔がみるみる内に明るくなる。

えっまじかよ、結音当たってるじゃん。

なんで分かったんだ。

俺は自分が気づかなかった所に彼女が気づいた事に驚いた。

「うん」

突然結音が横から話に入ってくる。

「じゃあ」

「教えて教えて」

俺と結音は口を揃えて聞く。

「えっと、さっき駅員さんに東風谷駅にどうやって行ったらいいのか聞いてたんですけど、よく分かんなくて」

「東風谷駅だったら俺たち今から行くけどついてくる」

「いいんですか」

「もちろん」

俺たち2人は男の子に言った。

「ありがとうございます」

「いやいや。じゃ、も行こっか」

「はい」

男の子は元気に答えた。

それから俺に結音、そして男の子の3人で東風谷線の下りホームである9番線に向かった。

乗る列車は9時15分発の普通列車、東風谷行き。

いつもは6両だがこの列車は運用の関係で4両編成で運行されると電光表示板に書いている。

実は9時丁度に6番線からこちや特快東風谷行きや、9時8分に同じく6番線からはのがやライナー、葉野ヶ谷行きなどの速達種別もある。

勿論それに乗ったほうが早く着くのだが俺にも結音と長く一緒に居たいという想いもあったので特に結音に断るわけでもなく普通列車で予定を組んでいる。

ホームに着き、俺たち3人は4両編成の列車が停まる最前部まで進んだ。

そばにあったベンチに男の子、結音そして俺の順番で座った。

「そう言えば名前言ってなかったね。俺は吉野隼人で」

「私は清水結音。どっちも中3、だよね」

「うん」

「中学生。僕は津島大樹(つしまたいき)です。小4、です」

「大樹君、って呼んでもいいかな」

俺は男の子に聞いた。

やっぱりフルネームだったり君、とかだったら呼びにくいからね。

「もちろん」

「ところでなんで東風谷に行くことになったの」

俺は上であったときから気になっていたことを聞いてみた。

「えっと、僕のおじいちゃんおばあちゃんが東風谷に住んでいるからです。今日遊びに行くって昨日電話して。お父さんに1人で大丈夫かって聞かれたけどちょっとかっこいい所を見せたくてうん、って言っちゃった。でも、行けなかった、って事です」

「ふ~ん。それでさっき駅員さんに聞いてたんだね」

結音は大樹君に聞いた。

「そうなんです」

大樹君が東風谷に行く理由が分かったところで大樹君にいきなり質問される。

「そう言えば2人はどこに行くんですか」

やっぱり聞いてきたか、と思い結音の方に顔を向けてみると照れているのか顔を隠していた。

ま、小さな手で完全に隠れるわけは無いんだけど。

「え、ちょっときれいな所。観光かな」

「そうなんですか」

あ~良かった。

小学4年生はまだそんな恋愛感情が無いからこれで済んだけどこれで小6ですなんて言われてたらどうなっていたであろう。

とにかくそれ以上突っ込まれなくて良かった、と安堵した次の瞬間

「デートにね」

と結音が勝手に付け足した。

「余計なこと言わなくていいから」

「まあいいじゃん」

「まあいいけど」

それからしばらく経ちホームに人が集まってきたと感じたその時ホームに接近放送が響き渡る。

それから30秒もしない内に12000系が入線してきた。

ドアが開いた瞬間多くの人がどっと吐き出され、一気に車内はがらんとなった。

「じゃあ乗ろっか。足元落ちないようにね」

結音は大樹君にそう告げ車内に入った。

車内はさっきのイルカ線のいすの配置とは違ってクロスシートと言う向かい合わせの席だった。

4人掛けの所を確保し俺と結音は進行方向を向いて、そして大樹君はその逆の窓側に座った。

ちなみに俺は通路側で結音が窓側だ。

3分もしない内に車内はほとんどのいすが埋まった。

やがて発車メロディーが流れドアが閉まる。

今、新たな1人を加えた3人による旅行が始まった。

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