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第三十八話 誓います

 リーンゴーン! リーンゴーン!


 白亜の教会が奏でる澄んだ鐘の音が、神まで届けとばかりに雲一つない蒼穹へと鳴り響いた。

 赤い絨毯が中央の通路に敷かれ、左右に均等に並べられた長椅子に座る大勢の老若男女が祝福の意を込めて壇上を見詰めている。


 俺は白いタキシードに身を包み、その壇上にある教壇から見て右側に立っていた。教壇に立つサンタクロースのような髭をした神父が聖書を片手に俺を見る。


「汝――伊巻拓(いまきたく)は、この女性――エヴリル・メルヴィルを妻とし、

 良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、

 病める時も、健やかなる時も、

 共に歩み、他の者に依らず、

 死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、

 神聖なる婚姻の契約のもとに――誓いますか?」


「誓います」


 答えると、神父は満足そうに頷いて視線を俺の目の前へと移す。純白のウェディングドレスを纏った、エメラルドのような髪とサファイアのような瞳をした少女――エヴリル・メルヴィルがそこにいた。


「汝、エヴリル・メルヴィルは、この男性、伊巻拓を夫とし、

 良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、

 病める時も、健やかなる時も、

 共に歩み、他の者に依らず、

 死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、

 神聖なる婚姻の契約のもとに――誓いますか?」


「――はい」


 静かな、それでいて感激を端々から滲ませた声でエヴリルは答えた。


「それでは、誓いの口づけを」


 見詰め合う俺とエヴリル。瞳を潤ませ、頬を朱に染め、エヴリルはゆっくりと瞼を閉じた。


 俺は彼女の肩に手を置き、

 その綺麗で柔らかそうな桜色の唇に、

 自分の唇を重ねるために顔を近づけ――


 そこで目が覚めた。


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