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第三十二話 王都には俺の家があるんだぞ!?

 噴煙が村を包む光景を見下ろしていたドラゴンは、唐突に向きを変えて飛び去っていった。


「次はそっちに行きたいのよ? ふふふ、もっともっと自由にしていいのよ」


 ゼノヴィアも俺たちが村ごと焼け死んだと思ったのか、そのままぴゅーっと箒に跨ってドラゴンについて行ったぞ。

 俺たちも、村も、ドラゴンブレスで焼けたところなんてないんだけどな。


「〈怠惰の凍結(アケディア・フリーズ)〉……なんとか間に合ったか」


 指定範囲の時間を凍結し、その中にあるあらゆる物を外部から不干渉にするチートスキルだ。要するに村全体の時間を止めてドラゴンブレスを防いだってこと。範囲内に俺もいれば当然俺も止まってしまうわけで、能力が解除された時にはもうドラゴンとゼノヴィアは村から離れようとしていた。


 この能力も〈創造〉と同じで、世界の因果を歪めているせいか時間制限がある。〈創造〉は三分だが、こっちは一分が限界だ。

 時間を止めた敵を一方的にボコれるわけじゃない。時間停止というか、本質は対象の拘束と無敵化だからな。どちらかというと防御や足止めに特化したチートだ。ヘクターの家で綿毛鳥に追い回された時もお世話になりました。


「な、なにが起こったですか? ドラゴンは? あの子は?」

「意識が飛んでいたのか? ドラゴンが火炎を吐いたところまでは覚えているのだが……」


 エヴリルたちは記憶が混乱しているみたいだな。


「勇者様がドラゴンの炎を打ち消したですか?」

「いや、そっちじゃなくて〈凍結〉の方な」

「あー、そんな能力もあったですね。後でわけわかんなくなるですから、それはあんまり使ってほしくないです」


 俺だって最初は打ち消そうと思ったよ。でも、〈解析〉で全部は無理って出たから急遽こっちで防御したんだ。一分間も無駄な時間を無駄に過ごしちまった。帰りたい。


「勇者殿、ドラゴンと魔女殿はどこに行ったのだ?」

「もうお帰りになるってさ」


 俺は訊ねてきたラティーシャに親指で後ろの上空を示す。ゼノヴィアの姿はもう遠くて見えないが、ドラゴンの巨体はまだはっきりと視認できる距離だ。

 追いかけるか。見逃すか。

 もう帰りたいけど、俺が元の世界に帰るためにもあの魔女はとっ捕まえておかないとな。ドラゴンも放置したら危険だし。


「あの方角は確か私たちが来た……まずいぞ、ドラゴンは王都に向かっている!?」

「……は?」


 ラティーシャは今、なんて言った?

 王都だと? あいつらは次、王都を狙うって言うのか? この村にやろうとしたように、王都の人々を喰らって火の海に変えるつもりだってのか?


「……ふざけんなよ」

「ゆ、勇者様?」


 怒りに俯いて震え始めた俺をエヴリルが心配そうに覗いてきた。


「王都には俺の家があるんだぞ!?」

 正確にはボロアパート的なマイホームだけども! マイホームはマイホーム! そこは俺の帰る場所だ!

「絶対に守る!」


 俺は箒を〈創造〉して跨ると、ゼノヴィアが使っていた飛行魔法を〈模倣〉して飛び上がった。まずは三分以内に追いつく!


「ちょ!? 勇者様ぁああああああああああああああッ!?」


 悪いな、エヴリル。ちょっと置いていくぞ。この飛行魔法は一人用みたいだからな。それにあのドラゴンは強い。俺一人の方が勝率は高いって解析結果も出てるんだ。周りを気にせず大暴れできるもんな。

 だから俺は一人で行く。

 そして俺の帰宅をできなくしようとしてやがるあの害獣と魔女を――


 軽く、捻り潰してやる。


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