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第十七話 温厚な人間もテロリストに変わるほどの絶望

「酷いじゃないか君たち!?」


 俺たちが屋敷の応接室に案内されて間もなく、ぜぇぜぇはぁはぁと汗水垂らした小太り中年が転がるように飛び込んできた。意外とお早いお帰りで。


「嬉し恥ずかしい気持ちはわかる! だが、銅像として残ることは大変な栄誉であるからして! もっと胸を張ってこのお面を――」

「そのお面は銅貨に変えるか物置の隅っこにでも飾ってくださいです。そんなことより早く依頼の仕事を始めさせろです」


 超絶不機嫌モードのエヴリルさんがトゲットゲした口調で大商人を促した。大商人はそんな彼女に怯んだように仰け反ると、なんだか寂しそうに銅製お面を懐に仕舞った。かなり邪険にされているのにちっとも可哀想だと思わない不思議。

 ちなみにヘクターは準備があるとか言ってどこかへ行ってしまった。まあ、あいつは俺のパーティーだけど、今回は依頼人側だもんな。


「えー、ゴホン、では話そうか」


 一つ咳払いをすると、大商人は今回の依頼内容について語り始めた。


「君たちのような若者にもウケるお面を作成し、お面の一大ブームを築き上げることが私の夢なのだ。世界にお面旋風を巻き起こし、一家に一台と言わず一人一個はお面を持つ時代を目指している!」


 違う。お面の話だった。


「お面じゃなくベッドの話をしろです」

「待てエヴリル、一見関係なさそうだがこれから今回の依頼に繋がるかもしれん」

「いや、商会の依頼と私の趣味は別物だが?」


 プツン。

 エヴリルさんの中でなにかが切れたような音を聞いた気がした。


「一度、神樹の杖で思いっ切り脳天ぶっ叩けばそのお面脳は治るですかね? 世界を侵略しようとするお面の魔王はわたしが今ここで退治してやるです」

「ま、待ちたまえ冗談だ! もちろん冗談だとも! ところで『お面脳』『お面の魔王』って響きおじさん気に入っちゃった♪」

「成敗ですッッッ!?」

「ぎゃあああああああああああああああああああっ!?」


 神樹の杖が情け容赦なく大商人の脳天に直撃する。アレけっこう痛いのよ。エヴリルが筋力パラメーターの低い魔導師じゃなかったら撲殺されてもおかしくないレベル。

 というか、依頼人に暴行を働くなんてエヴリルらしくない。本当に今日は不機嫌だな。やっぱり休日を潰されることは温厚な人間もテロリストに変わるほどの絶望だったんだ。

 その牙がいつ俺に向けられるかわからない。


 早く帰ろう。


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