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それでも俺は帰りたい~最強勇者は重度の帰りたい病~  作者: 夙多史
十三章 わたしたち人は働く生き物です!
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第百話 わたしと勇者様の問題

「見つけたです!」


 建労信徒たちの情報と、わたしの風魔法で勇者様の足取りをばっちし掴んでやったです。後ろに隠れてこっそり後を尾けてみると、どうやら勇者様は商店街に向かっているようですね。

 フードを被って顔を隠しているですが、わたしにはバレバレです。そもそも安息神教会の大神官――フトゥン=ネムリア様を、か、肩車なんかしちゃってるですし! うん、これは通報した方がいいですね。


「待てエヴリエルよ、なぜ衛兵の詰め所へ向かおうとしている?」


 駆け出そうとしたわたしの手をレイバー様が掴んで止めたです。


「ロリコンがいたので捕まえてもらうためです」

「衛兵たちに建労をもたらす心は立派だが、国が関わってくると我々の仕事に支障をきたす。これは我とネムリアの……教会間の問題だ。部外者を呼び込むわけにはいかん」

「ですが……」


 ちらりと勇者様を見るです。公衆の面前でフードを取った勇者様が、なにやら女の子たちに囲まれてキャーキャー言われているです。ギガントシャーチックだの黒の万能薬(エナジードリンク)だの怪人デスマーチだのと聞こえたですが、武勇伝でも語ってるですか? あんなにデレデレして、まったく勇者様はまったく!

 王都を救った英雄。七つ星の冒険者。勇者様が有名なのはわかってるですが……


「そうですね。わたしと勇者様の問題。わたしがこの手で天罰を与えてやるです!」

「お、おう、よくわからんが凄まじい気迫だ」


 神樹の杖で素振りをしていると、なぜかレイバー様は引き気味に一歩下がったです。なにか怖い物でも見たんですかね?


「む? 奴らが移動するぞ!」


 話を逸らすようにレイバー様が勇者様たちを追いかけて行ったです。わたしもすぐに後をつけるです。

 勇者様とネムリア様は商店街の一角にある『グッスリナーノ』とかいう寝具店に入って行ったですね。なんというか、勇者様らしいです。

 わたしたちは店の様子が見える位置に陣取って様子を窺うです。


「他にお客さんはいないです。襲撃するですか?」

「なっはっは、エヴリエルはせっかちだな。寝具店とはいえ立派に働いている者を巻き込んでは迷惑だろう。働き者は入信してなくとも皆信徒。奴らが出て来るまで待とうではないか」


 レイバー様がそう言うので、わたしも仕方なく勇者様たちを観察するだけに留めることにしたです。とはいえ、店の奥に入って行かれたから中の様子はわからないですね。


 ……。

 …………。

 ………………。


 勇者様たちが店に入ってから何分も経ったです。寝具に夢中みたいでなかなか出て来る気配がないですね。

 いい加減、退屈になってきたです。


「というか、こういうことは他の信徒にやらせればいいと思うです。どうしてレイバー様が直接尾行なんてするんですか?」


 暇潰しも兼ねてわたしは疑問に思っていたことをレイバー様に訊ねたです。するとレイバー様は腕を組んで後ろの壁に凭れかかり――


「先程も言ったが、これは我とネムリアの問題でもある。奴が直接動いているのであれば、こちらも我が出向かなければ無作法というもの」


 なにが無作法なのかよくわからないですが、レイバー様とネムリア様の問題ですか。そこはちょっと気になるですね。


「レイバー様とネムリア様はどういったご関係なのです?」

「か、関係!?」


 途端、ボン! とレイバー様の顔が真っ赤に染まったです。おや? これは……?


「いや、それは……な、なっはっは! 関係もなにも同じ新神でありライバルである! 神界学校で席が隣だったとか、いつも寝ていて我の言葉を聞いてくれないからムカつくとか、なのになぜか我より成績よくて悔しいとか、いろいろあるにはあるが今はそれだけだ!」

「……ふーん」


 取り繕うような必死さを見せるレイバー様。思ってたより面白い話になりそうですね。わたしは自然と顔がニヤけてしまうです。


「あ、あの男もネムリアに振り回されて不憫だろうな! 我ら建労の徒が救ってやらねば! なっはっは!」

「……ほーん」

「な、なんだ貴公その顔は! ニヨニヨして!」

「いえいえ、ご馳走様です」


 つまりレイバー様はネムリア様にホの字なわけですね。だからちょっかいをかけたい、と。むふふ、これはわたしもしっかりお手伝いしなくては!


「むむ? 奴ら出てきたぞ!」


 おっと、話を逸らされたです。まあ今はいいですけど。それより勇者様は……なんか大量の枕を抱えているですね。全部買ったですか?


「よしエヴリエル、仕掛けるなら今――」


「ようやく見つけたぞ、勇者殿」


 レイバー様が飛び出そうとした寸前、勇者様たちの前に別の誰かが立ちはだかったです。それは綺麗な銀髪をして騎士の鎧を纏った女の人で……わ、わたしもよく知ってる人です。


 ラティーシャ・リア・グレンヴィル様。

 この国の王女様に、先を越されてしまったみたいです。


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