6話~ダンジョン~
適当な宿をとってベットに飛び込んだ幸太郎は想定外のベットの固さにうなりつつどうやって金を稼ぐか考えていた。
(ぱっと思いつくのは3つくらいか……)
まず一つ目は今日のようにモンスターを倒したり、もしくは依頼をこなしたりして自道に金を稼ぐことだ。
1番堅実で魔物を倒しながら金を稼ぐことになるのでレベルも上げられて一石二鳥だ。
(ダメだな時間がかかり過ぎる)
貰った金を全て返済にあてることはできない。
人は生きることに金を使う。
今日貰った金も宿代や飯代、壊れた矢の補充などに使えばすぐになくなってしまうだろう。
それに手に入る額もそれほど高くない。
返済期限がいつまでなのかを聞いていなかったが、500万を返せるようになるにはかなりの時間がかかるだろう。
よってこの案は却下だ。
二つ目は異世界知識を活かして何かしらの商売をすることだ。
幸太郎の読んできたラノベには日本での知識や経験を活かして大成功し、異世界知識sugeeeeとするものがあった。
自身もそれにあやかり何らかの商売を始めればもしくは……
(いや俺に何が売れるっていうんだ?)
地球の知識を活かせるのはそういうものを専門的に学んだ者だけだ。
幸太郎はゲームやラノベを趣味とする普通の進学校に通う男子高校生。部活は水泳部。得意料理はカップ麺だ。
微分や積分のやり方は知っていても商品の作り方は知らなかった。
(……もし日本に戻れたらもっといろいろ勉強するか)
密かに決意を固めると第2案も却下した。
そして残る最終案。
実はこれが幸太郎の本命だ。
そもそもジョブオーブはダンジョンの中で見つかったという。
ならば自分もダンジョンとやらに赴いて、ジョブオーブもしくはそれと同価値の物を見つけてくればいい。
まるで宝くじに当たるのを祈るかのような作戦だが、それでも幸太郎はこの作戦が1番可能性が高いと考えていた。
というのも天運の勇者の中にあるスキルを見つけていたからだ。
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スキル:【金運特化】
効果:自身の幸運を一時的に金運に偏らせることで金運を上げる
消費:魔力3
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このスキルを使えば十分いけると思っていた。
何せ今の幸太郎の幸運は1億を超えているのだ。
もしかしたら使った途端に空から金がふってくるかもしれない。
もっとも不安材料がないわけではない。
ダンジョンというくらいだから魔物だって出るだろうし罠もあるだろう。
だが幸太郎はあまり心配していなかった。
今日の狩りでは狙いなどつけずに弓を射っても、まるで魔物が自分から当たりにきているかのようにあたった。
それも最初の2000万の時ですらそうだったのだ。
その5倍となった今なら罠や魔物など自分が近づいただけで逃げていくかもしれない。
「クっクっクっ」
その様子を想像すると笑いが出た。
ご都合主義な展開も自分に起こる場合には大歓迎だ。
「ふーっ。明日が楽しみだ。受付嬢の驚いた顔が目に浮かぶようだぜ」
幸太郎は楽しい想像に胸を躍らせながら夢の世界にはいった。
〇●〇●〇●
(とか言ってチョーシのった結果がこれだよ!)
幸太郎は思わず心の中で叫んだ。
(くそっ効果のところもっとちゃんと読んでおきゃよかった!幸運を金運に偏らせるってこういうことかよ!)
ズシッ、ズシッ
幸太郎が心の中で己の迂闊さを呪っていると、重い足音が近づいてきて、慌てて息を潜めて身を小さくして隠れた。
明日は幸太郎に気づかなかったのかそのまま離れていった。
幸太郎はほっと胸をなでおろすと小部屋からからそっと身を乗り出し、通路の奥にある大部屋の中を覗いた。
そこにいたのは巨大な黄金の竜。
そしてそれの周りを徘徊する無数の黄色いトカゲ。
幸太郎は再び岩陰に身を隠すと背中の矢筒を確認した。
……中にあるのは僅か3本。
(詰んだ……)
幸太郎は頭を抱えてため息をついた。
〇●〇●〇●〇
幸太郎は起きて朝食を食べると宿の主人からダンジョンの場所を聞き出すと、矢の補充や背嚢などの必要と思われる物を買って早速向かうことにした。
ダンジョンには思っていたよりもすぐについた。
見た目は崖の下にある洞窟といった様子で、普通の洞窟と見分けがつかない。
疎らに見える冒険者と思しき人達のおかげでなんとかわかった。
宿の主人に金を握らせつつ聞いたところ、このダンジョンは地下階層型と呼ばれるだんだん地下へと降りていくタイプのダンジョンらしい。
このタイプのダンジョンは地下へ降りるごとに敵が強く、罠も多く危険になっていくが、その分得られる物も大きくなっていく。
まあファンタジー系のラノベによく出てきそうなダンジョンだ。
「よしっそれじゃ行くか【金運特化】」
幸太郎は【金運特化】を発動させるとダンジョンのなかに入った。
ひとまず今回は様子見だ。
【金運特化】を発動させつつ1階層を探索する。
戦闘は倒せそうな場合か、どうしても避けられない場合のみする。
今回の目的は【金運特化】の効果の確認だ。
実際にどれくらい効果があるのか、持続時間はどれくらいなのか、などスキルの説明文だけではよく分からなかった部分を確認する。
あとは自分がこのダンジョンで戦うことが出来るか、ということも確認しようと思っている。
といってもお宝で一獲千金が目的なのでこれはオマケ程度だが。
「おっと魔物か」
しばらく進んでいると曲がり角の先に魔物を見つけた。
中型犬ほどのサイズの黄色いトカゲだ。
幸いにも幸太郎のいる方とは反対の方向を向いていたため気づかれてはいない。
トカゲは鈍重そうにノッシノッシと歩いている。
幸太郎は一瞬無視しようかと思ったが、これは自分の力が通用するか確認するいい機会だと思い直す。
これで倒せるようだったらこのダンジョンで安全に探索できるし、倒せなくてもあの鈍重そうなトカゲなら簡単に逃げられそうだ。
いける、と判断した幸太郎はトカゲに気づかれないようにそっと弓を構えた。
正確に狙わなくても当たるのは昨日の経験からわかっているので大ざっぱに狙いをつけて……放つ。
幸太郎の手を離れた矢は真っ直ぐに飛び、トカゲの目の前の地面に刺さった。
「え」
外れた。外れてしまった。
昨日はあんなに当たっていた矢が。
想定外の出来事に迂闊にも固まってしまった。
まずい、と思ったときにはもうトカゲは振り替えり幸太郎を視認していた。
「ぐぎゃるるぁあ!」
「キャー!思ったより速いー!」
トカゲは歩いているときはあんなにもノロノロと歩いていたのに走る時は見た目以上に速かった。
幸太郎は慌てて逃げ出した。
「くそっ、何でこんな時に、外れんだよ!」
悪態をつきつつ走る。
幸い幸太郎の方が僅かに速いようで少しずつ距離が離れていく。
「はは、ざまぁ、見ろってんだ、はぁ」
幸太郎の進む先にT字になった道が見えた。
幸太郎は一瞬どっちにいくか逡巡し、右に曲がって
「ぐぎゃ?」
黄色いトカゲと目があった。
「「ぐぎゃるるぁあ!」」
「何で居るんだよぉぉおおお!」
幸太郎は2つに増えた鳴き声に追い立てられるようにして走った。
これまでにないほど必死に走り、走って走って、
行き止まりにたどり着いた。
「最っ悪だ……」
昨日運が良すぎたせいなのか、それとも別の理由か。
幸太郎にはわからなかったが、このままではまずいということはわかった。
「ぐぎゃるる」「ぐぎゃお」
背後からトカゲが迫る声が聞こえる。
追い込んだということに気づいたかのか足取りはこちらを追い詰めるようにゆっくりだ。
「くそっ舐めんなよ爬虫類が!さっき外したのは運が悪かっただけだ。当たりさえすりゃテメェらなんてイチコロなんだよ!」
幸太郎は背中の矢筒から矢を抜くとしっかりと狙いを定めて放った。
矢は今度こそトカゲの胴体のド真ん中をぶち抜くコースを直進し
ガン
という音を立て弾かれた。
「は?」
当たった当のトカゲはというと痒いとも思っていないようで変わらずにノッシノッシと歩みを進めてくる。
「くそっ」
何かの冗談だと思い何度も矢を放つ。
だがそれらは尽く弾き返され、もしくは見当はずれの場所に刺さるなどして全く効果が無かった。
「くそっ、まずいまずいまずい!」
ジリジリと迫るトカゲに押されるように幸太郎もジリジリと下がる。
1歩、また1歩と下がり続け背中が突き当たりの壁に触れたときだった。
カチッ
「カチ?」
妙な音が足下から聞こえた。
見ると右足を置いたところの地面が少し膨らんでいる。
まさか何かのスイッチをおしたかと思った瞬間
パカッ
と、そんな擬音を立てそうなほどキレイに地面が開いた。
「うぉぉぉおおおとしあなぁぁああっ!!??」
地面は幸太郎を闇の中に飲み込むとまた何事も無かったかのように閉じた。
「ぐあっ!つーいってぇ!」
落とし穴に落ちた先は小部屋になっていた。
上を見上げると既に天上は閉まっている。
落とし穴に落ちたおかげでトカゲ達からは逃げきれたが、いいことばかりではなかった。
「最悪だ。右足首ひねった……。うわっめっちゃ腫れてる」
落ちた時の衝撃で右足首をひねっていた。立ち上がるだけでも激痛が走りとてもではないが走ることなどできそうもない。
「てかこのダンジョン来てから運悪すぎじゃねぇか?俺何か変なことしたったけ?」
今まで外れたことのなかった矢を外し。
トカゲから逃げる途中で別のトカゲに見つかり二匹に追い回され。
しまいには落とし穴に落ちて足首をひねる。
幸運1億はどこにいったと言いたくなるような状態だ。
もしや何か状態異常にかかっているのではあるまいか、と自分のステータスを確認しようとしたとき部屋の中央に宝箱が置いてあるのが見えた。
「っておお!?宝箱!?」
木製のどこか古びた感じのそれは全身で自身が宝箱であることを主張しながら静かに佇んでいた。
幸太郎はさっきから自分の運が全くついていないことも忘れ、砂漠でオアシスを見つけた遭難者のように宝箱に近づいた。
その喜びのまま宝箱を開けようとした瞬間、
(もしかしてこれも罠じゃないのか)
不吉な予想が頭をよぎった。
幸太郎は悩んだ。この宝箱を開けるべきか否か。
幸太郎の中の悪魔が囁いた。
──いちいち罠なんて気にしてたらおちおち飯も食えねぇよ。うだうだ悩んでねぇでとっとと開けちまいな。後の事は後で考えりゃいいんだよ。
幸太郎の中の天使が諭した。
――罠を恐れる臆病な心に負けないで。いつの世も栄誉を得るのは勇気ある者達です。今、あなたの勇気は試されているのです。あなたも仮にも勇者を名乗るならばここでそれを証明しなさい。
なんと。初めから全会一致で開けるだった。
自分の心は天使も悪魔も欲深いなと思いながら宝箱をあける。
開けた瞬間念のため宝箱から離れて伏せてみたが何かの罠が発動した様子はない。
恐る恐るじりじりと近づき中をのぞき込む。
中には茶色い麻のような材質の大きな袋が一つ入っていた。
袋の中をのぞき込むとそこには大量の金貨が金色の輝きを放ちながら自己主張をしていた。
「あ、ああ、やった、やったぞ!お宝だぁぁああ!」
1掴み取り出して見てみる。
ズッシリと見た目より思く感じるそれは相当量の金が含まれていることの証拠だった。
それが袋一抱え分ほどもあるのだ。
詳細な価値は分からないが、昨日の稼ぎなど比べようもないほどの大金になるだろうことは用意に予想がついた。
「よしっ後は魔物に見つからないように慎重にコイツを持って帰ろう」
幸太郎は金貨の入った袋を持ち上げ──カチッ──想像以上の重さによろけながらもその重さに笑みを深め、
「カチッ?」
箱の中から聞こえた不吉な音につられて下を向いた。
そこには青い魔法陣があった。
「え」
青く光る魔法陣は瞬きの間に部屋中を侵食し、強烈な光を放った。
光りが消えるとそこに幸太郎の姿は無い。
ただ部屋の中央にパカリと口を開いた宝箱が置いてあるだけだった。
種族:黄金幼蜥蜴
スキル
【黄金の鎧】腐食耐性(大)耐久アップ(中)敏捷ダウン(中)
【噛みつき】敵に噛みつくき小ダメージを与える
【狩猟本能】戦闘時に敏捷、筋力アップ(小)
ドロップ
『ゴルドラベビーの肉』『ゴルドラベビーの黄金皮』『ゴルドラベビーの牙』『砂金(小)』『スキルオーブ:金運アップ(小)』
説明
ゴールドリザードの幼体。中型犬ほどのサイズで大きく見えるがまだまだ子供。数が少なくあまりお目にかかれることはないが、ドロップアイテムは肉以外は高く売れるため人気が高い。
幸太郎が現在入っているダンジョン──ゴルドラダンジョンによく出没するため、これ目当ての冒険者がよく集まる