選択(センタク)
「購入しますか?」
女性が聞いてきた。陽介は黙って商品を見ていた。そこに置いてあるのは、何の変哲のないブレスレットだ。ブレスレットに使われているのは、丸く加工された真っ黒な一種類の石だけだ。思い切ってこれはなんですか?と、きいてみたら
「つけている間だけ、その人に幸運をもたらすブレスレットです」
(幸運?あぁ、天然石の説明によくあるやつか)
陽介はあまり占いとかは信じない方だ。
買う気はなかったが、値段を聞いてみた。すると
「86円です。」
と言われた。安いのかどうかわからないが、この数字に聞き覚えがあった。
(そうだ、アイスを買った時のお釣りだ!)
いま陽介の財布の中にある残金と一致していた。なので、何と無く買ってしまった。
「ありがとうございます。」と言って小さい紙袋に包んでくれた。店を出て、まっすぐと家に帰った。
「今日は日曜日か〜、明日は学校か。」
家に帰ってから、晩ご飯を食べ、風呂に入り、ベットで寝た。そして、不思議な一日が終わった。
次の日、学校へ行く支度をしていた。支度が終わって座椅子にもたれながら、ブレスレットをつけていくか持っていかないか考えていた。
「どうしようかな?まぁ、つけてってみるか。」陽介はブレスレットをつけて行くことを決め、学校に向かった。
学校につきしばらくして、一限目が始まる5分前になって、宿題をやってないことに気がついた。
「やべ、宿題忘れた。」そうつぶやくと、友達の龍磨が「おれもー」といった。
陽介は「いつものことじゃん、あの先生怖いからな〜。授業なくならんかな?w」
龍磨は「無理だよ、と言いながら笑っている。」
そのとき、ブレスレットが光ったように見えた。(ん?光で反射しただけか、)
授業開始のチャイムがなった。
しかし、なかなか先生が現れない。すると、別の先生がやってきて
「上林先生(国語の先生)は階段から転落して病院に運ばれた。みんなは自習してなさい」
といわれた。
陽介は驚いた。このブレスレットにはやっぱり力があるのか?