美人姉妹はいつでも賑わす
次の日に学校に行くと、学校はざわついていた。個人的には気にならないが、どうせ久米が色々と話すだろう。
教室に着くと予想通り、久米がやってきて語りだした。
「おい、梅原、知ってる!?」
「なにを聞いているか分からないが、たぶん知らないな」
すると久米は楽しそうに語りだした。
「昨日、長倉姉妹について話したろ」
「ああ、話したな。校内で有名な姉妹と記憶しているけど」
「その長倉姉妹がある男子生徒とすごく親しそうに話しているんだと」
「そうか。それがどうしたんだ?」
「そう言えば、お前は長倉姉妹についてあんまり知らないんだったな。長倉姉妹は少し特別で男子に話し掛けに行ったりしないんだ」
「…なぜ、お前がそんなことを知ってる?」
「有名な話だぜ。入学してちょうど1ヵ月ぐらいだけど、進んで男子と話したりはしないって。特に妹さんの方は男子と話しているところを入学して一度も見たことないっていう話もあるぐらいだ」
「そうなのか」
どっちが妹なのかは知らないが、どちらもそんなに男と話したがらない感じには見えなかったが。
「だからこそ、今長倉姉妹と親しそうに話している男子生徒に注目が集まっているっわけだ」
でも、これである程度はわかった。
なんであんなに学校全体がざわついていたのか。というかこんなことで学校全体がざわつくって改めてあの姉妹の影響力の高さを思い知らされるな。
すると急に久米はなぜかため息を付く。
「お前は本当に興味ないよな」
「興味ないというか、別に長倉姉妹にそこまで興味を引かれないだけだ」
「それがすげぇよ。男子なら誰もがあの姉妹に好かれたいと思うはずだぜ。友達として関われるだけでも万々歳だ」
「そういうものだとすると、僕は少し異質なのかもな」
「今頃気付くのかよ。お前はずっと異質だよ。この高校であの姉妹のことを知らないことも含めてな」
「誰もが色恋に興味があるわけではない。僕はただ平穏に学校生活を送れるんであればそれ以上は望まないと決めている」
誰かに好かれたいとは思わないし、こんな僕が誰かを好きになるとも思えない。好意は相手に影響を与えることもあれば、反対の影響を与えるかもしれない。そんなことをするぐらいなら、積極的に誰とも関わらず、学校生活を送るのが一番いいという結論付けた。
こんなことを頭で考えている僕はやっぱりちょっと《《欠陥品》》なんだろう。
そしてそこからは別に特段変わったことはなく、ありふれた日常が過ぎていく。昼休みも過ぎ、授業も終わり、あとは帰るだけというところまで時間は流れた。
教室を出たところで気付いた。昨日と同じように人混みができているということに。でも、今回は自分のクラスの前だが。
こんなことになっている理由はすぐに分かった。
長倉姉妹と男子生徒が一緒に歩いているからだ。男子生徒は右腕と左腕を抱きしめられているので、端から見れば両手に花というものだろう。だって僕の隣で三人を見ている、男性は目から充血していて、血管がよく見えるほどに両手を握りしめている。
余程、悔しいんだろうが。
「ねぇ…井野くん」
「な、なにかな?」
「今日は私と一緒に帰ろうよ」
「う、うん」
「え~ぼくも一緒に帰りたい」
「そうだね。三人で一緒に帰ろう!」
幸せそうな二人に少し恥ずかしがっている男子生徒は絵になると思った。周りの奴らの嫉妬の視線に晒されても、男子生徒はそこまで気にしていない様子だ。
「そう言えば、正寛くんって呼んでも良いかな?」
「いいよ」
「ぼくも?」
「もちろん、むしろそう呼んでもらえた方が俺としても嬉しいよ」
周りの視線がもっとひどくなっている気もするが、これは仕方ない。僕に危害が及ばないのであれば問題ない。
そして僕はまた人混みをかき分けて、帰路に付くことにした。
帰路に帰っている途中にそう言えば、さっきの男子生徒の苗字は『井野』で名前が『正寛』か。
なんかどこかで聞いた名前だと思ったけど、たぶん気のせいなので気にしないことにした。




