表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪いの姫は祝いの王子に愛される  作者: 七賀ごふん
囲いの鳥

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/11

#8




しばらく寝たふりをしていたけど、恐る恐る瞼を開けた。

リザベルさんはかすかに寝息を立てていた。寝室のベッドで寝かせていた時と同じく、綺麗な前髪を瞼に落としている。

突然攫われて、呪いが解けたと思ったら森の中に放り出されて。もっと取り乱していいところなのに、肝が据わってる。


( 俺が彼だったら絶対パニック起こしてるけどな…… )


呪いが解けた理由も分からないし、本当は不安でいっぱいだ。

無理やり心を落ち着かせようと、隣で眠るリザベルの寝顔を見た。


知的で優しいけど、想像以上に冷静な人だ。俺とは違って、強い芯を持っている。

でも昨日までは俺が服を着せ替えて、髪を梳いて、……「おやすみ」とシーツをかけていたんだよな。

まるで遠い記憶になったみたいだ。彼の体を拭いて、彼に抱き着いて眠ったのも……。


「……っ!」


突如あの禁断の夜を思い出し、体が火照りだした。


あれからまた日が経っている為、眠っていた欲望はゆっくり起き上がった。

最悪だ。

これまで生きていて、こんなにも気が昂ったことはない。自分でもあり得ないと思うのに……彼といると、体が疼いて仕方ない。


駄目だ。ここにいたら……っ。


最後の理性で何とか起き上がり、音を殺して近くの木々に隠れた。大木の幹に手をつき、向かい合うようにして項垂れた。

熱を発散したい。しかし焦れば焦るほど妙に頭が冴え、解放から遠ざかる。何度目かのため息がもれた時、真後ろで枝を踏む音が聞こえた。


「ユノ?」

「あふぁっ!」


気付けば、向こうで寝ていたはずのリザベルが傍にやってきていた。驚き過ぎて声が裏返った。嫌な汗が滝のように吹き出る。

「大丈夫? 具合が悪いのかい?」

「い、いや……っ」

慌てて白衣を整え、振り返る。暗いし、今どんな表情をしているかも彼にはわからないはずだ。

多分、今の自分は尋常じゃなく赤くなってる。なんせ倒れそうなほど熱いから。

すぐに咳払いして、乱れた襟を直した。不審に思われたのは間違いないが、落ち着いたふりをしとけば大丈夫だろう。


「だ……大丈夫です。すぐ戻るので、ほっといてくださっ!?」


言ってる途中だったが、絶叫からの絶句。

ユノは後ろから抱き込まれ、硬直した。


「じゃ、一緒に寝ようか」


リザベルはユノの耳元で囁き、手を引いた。

「君の押し殺すような可愛い声が聞こえてね。どうしたのか心配になったんだけど」

耳朶をちゅ、と吸われる。大人しくしてると、彼は俺を引っ張って寝床に歩き出した。

眠っていた欲望に火をつけるような、含みのある声音で。


「そういえば、ちゃんと男の子だったなぁ、って思い出した」

「……」


どういう腹落ちだ。

意味がわからないがツッコむ元気もなく、葉っぱの寝床に戻り、彼に体重を預けた。柔らかい羽に包まれるようで、とても心地いい。


「おやすみ。……可愛いユノ」


何でこんなに安心するんだ……。

まどろんだ意識の中で、愛おしそうに自分の名を呼ぶ声が聞こえた気がした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ