#4
一族はリザベルさんに無関心だ。未だ誰も何も言ってこないから、地下牢へ様子を見に行った者は皆無だろう。
今回得た莫大な報酬で贅沢三昧をしている。人を呪い、殺すことすら良しとして。自分達さえ良ければいいと本気で思っている。
そんな中で育ったから、俺も同じなんだ。本当は、彼らと一緒に退治されるべき存在。
でも、どうせ殺されるなら……この青年にお願いしたい。
「今日もお疲れ様です……と」
彼の方に向き直り、顔を寄せた。綺麗にしているから良い香りがする。でも、男らしい匂いもする。
相反する誘惑に、やがて身体は火照っていった。息が苦しくて、むずむずする。
はあ……。
また一糸纏わぬ姿で、彼に抱き着ついた。最初は控えめにしてたけど、やがて力いっぱい抱き締める。
やばい。やばい。どうしよう。
リザベルの胸に顔をうずめ、綺麗な唇に吸いつく。
男であること以前に、ずっと大切にしていた宝物への愛着が生まれてるのかもしれない。
彼の腹の上にまたがり、唇に触れた。
やば過ぎる。
最低、じゃ済まない。今すぐやめなきゃと思うのに。
気付けば涙を流しながら、彼の綺麗な頬にキスをしていた。
「……触って……っ」
不意に、そんな言葉が口から溢れた。
触るはずないのに。そのとき、わずかに彼の右手の指先が動いた気がした。
「?」
でも見間違いだろう。じっと確認したものの、その後は何の反応もなかった。
目覚めるわけないか。涙をぬぐい、もう一度彼の額にキスする。
もし自分が本当の王子なら、眠ってる彼を起こせるのに。
現実はもっと惨めで、醜い。
ユノは泣き疲れ、あられもない恰好のまま、リザベルの傍で眠ってしまった。
気持ちいい。
こんなの初めてだ。人の肌の温もりが、こんなにも心地いいなんて。
視界は徐々に閉じていった。黒い幕が完全に下ろされたとき、意識も波に攫われてしまった。
『……ユノ』
何も見えない。
けど、かすかに聞こえる声。
『可愛い』
掠れた声で囁くそれは、暗然とした世界でいつまでも反響していた。
「……ん」
眠るまでは長いが、意識を手放せば夜は一瞬だ。
窓の隙間から射し込む朝日に顔を顰める。ユノは鳥達のさえずりで目を覚ました。
……。
寝ちゃったのか。ぐっと背伸びしたものの、寝るまでにしていたことを思い出して飛び起きる。
やばい。裸のまま寝たんだった……!!
戦慄しながら自分の姿を確認する。すると、しっかりシャツとズボンを着ていた。
「あれ?」
隣を見ると、リザベルもちゃんと着衣していた。
おかしいな。そのまま寝た気がしたけど、服着せたんだっけ?
ぼうっとしたまま欠伸をする。色々限界だったから、記憶が飛んでるのかもしれない。ひとまず慌てて入浴し、部屋を換気した。
「……ゴホン!」
しかし、罪悪感が半端ない。
意識のない相手を自慰に使うなんて。もうどんな凄惨な最期を迎えても文句言えない。
墓場まで持ってく秘密になるし、この青年に対して一生償っていかなければならない。自己嫌悪に苛まれつつ、いつもの百倍丁寧にリザベルの衣服を整えた。




