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ナズナの祈り──琥珀の巫女と山の神

1|依頼──村を守っていた神


ナズナに届いた、一本の手紙。




ナズナ様


お願いです。


私たちの村を──どうか、助けてください。守り神様の声が薄れています。


その集落は、山深い場所にあり、地図にも小さくしか載っていなかった。




人が少なく、目立った観光資源もなく、産業もなかった。けれど──廃村しなかった




さらに、なぜかそこでは、災害が一切起きなかった。病気も少なかった。人と人の争いすら、ほとんどなかった。




「不自然に、ずっと守られていた村」




村の人々は、それを神社のおかげだと信じていた。山の上に鎮座する小さな社──あまりに古く、由緒や由来さえわからないその神社を、村人たちは深く崇拝していた。




けれど、時代は流れた。




若者は都市へと移り、残されたのは高齢者と空き家。




かつてあったいくつかの小学校は統合され、農業の担い手もいなくなり、田は荒れ始めていた。




そして今、村は消滅の危機にあった。




この、事実だけ見ると、ただの高齢化による通常の現象の様な気もするのだが、むしろその可能性が高い




しかし、依頼人が助けを求めてるのに、主観で断定するのは探偵としてナンセンスだ。そう思いナズナは、この依頼を受けた




2|神社への祈り、応えぬ声


ナズナは山を登った。鬱蒼とした木々の間を抜けると、ひときわ空気の澄んだ場所にたどり着く。




そこにあったのは、手入れこそ行き届いているものの、どこか時が止まったような神社だった。




神殿の周囲には、注連縄で囲われた巨石が点在していた。




ナズナはその本殿で祈った。深く、真摯に。村人の願いを、自分の言葉で静かに伝えた。




けれど──応えは、なかった。風も止まったまま、空も沈黙したまま。




あらゆる世界に互換性があるナズナが何も感じ取らないというのは、少しおかしい。ましてやずっと守られてきたこの土地でなら尚更だ




3|方法の変更──IOT機器による接触


ナズナは黙ってアタッシュケースを開く。中には、5cmほどのIOT機器が5つ。それぞれ、特定の周波数を発する設計になっている。




ナズナはその装置を、神社の東西南北と中央、5箇所に静かに配置し起動する。周囲の空気がわずかに揺れはじめる。




ナズナは中央に立ち、なにか“言葉”のようなものを唱えはじめた。すると聞いたことのない響き──音ではなく“震え”が、神社全体に波及していく。




石がかすかに唸り、社の屋根がきしむ。神域全体が、何かに共鳴し始めていた。




4|伝わってきた“声”


ナズナは目を閉じ、静かに耳を澄ませる。言語ではない。振動の中に“意味”がある。




やがて、ナズナは振り返り、いつのまにか背後に集まっていた村人たちに言った。




「われは悲しい」


「とても悲しい」


「そなたらが愛おしい」


「愛しい」


「そなたらの喜びが見たい」


「何もできない」


「悲しい」


「なぜこうなっているのか、わからない」


「……そう、守り神は言っていました」


沈黙。次の瞬間、村人たちは泣き崩れた。




「……私たちは、頼ってばかりだった……」




「それなのに……守り神様は、こんなにも私たちを……」




5|緊急手段──古代の槍の奉納


ナズナは一度だけ、空を見上げた。そして小さく、ため息を吐いた。




「……一つ、方法があります」


「緊急用に、一応持ってきただけだったんだけど」


「こんな形で役に立つなんて──」


彼女は再びアタッシュケースを開き、厳重に保管された箱を取り出す。中にあったのは──黄金の槍だった。




過去の依頼で得た古代エジプトの秘宝。信仰やエネルギーを象徴する“導きの槍”。




ナズナは無言で神社の拝殿中央に進み、ゆっくりとその槍を奉納する。その刹那、神社の空気がぴたりと変わった。




6|村全体での祈り


「みなさん、ここで。私と一緒に、祈ってください」


「あなたたちの心で、まっすぐに」


村人たちは拝殿の周囲に集まり、ゆっくりと膝をついた。誰もが目を閉じて、胸の中にある願いを、声にせずに祈った。




その瞬間──神社が震えた。屋根瓦が鳴り、地面が低く唸る。空気が圧縮されるような感覚。




鳥が一斉に飛び立ち、木々が風もないのにざわめき始める。山全体が──“息づいていた”。




7|神と人、ひとつの和


ナズナはその中心に立っていた。髪が風に踊り、琥珀の瞳が光の反射でゆれる。槍の周囲から、淡く金色の波紋が広がっていく。




村人たちは自然と祈りの姿勢を深めていった。




風が、神社の鳥居をくぐり、天へと抜けていく。そして、守り神の側からも、“祈り”のような感情が返ってきた。




8|そして、風は鎮まり


神社の震えは、やがて、すっと消えた。風は止み、音も消え、ただ静寂だけが残る。




村人たちは泣き崩れながら、しかしどこか安堵したように肩を寄せ合っていた。




ナズナはそっと、槍に手を添える。まだ微かに温もりを残した黄金の表面を撫でながら、静かに心の中で呟いた。




「これで──大丈夫、、、」


村人達がナズナの方に向き変える


「あぁ、琥珀の巫女よ──」


「あなたに、無上の幸福と、なにをも退ける守りを──」


村人が全員の祈りをナズナは感じ取る。神の祝福の様なものも同時に感じとる。


9|帰還、そして一通の手紙


数日後、都内の静かな夜。ナズナのもとに、一通の封筒が届いた。差出人の名は村人一同だった。




琥珀の巫女 ナズナ様


私たちは、あなたに救われました。


守り神の悲しみに涙し、己の弱さを知り、そしてまた祈りを学びました。




あなたは、ただ通りすがりの人ではありません。縁で導かれたのです


私たちは、心からそう思っています。




よって──我らはここに、誓います。




「琥珀の巫女よ。我らすべて、あなたに仕えます」


ナズナは手紙を読み終え、そっと机に置いた。カーテンの隙間から夜風が吹き込んでくる。




「……なんか、大事になっちゃったな」

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