表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/131

配信者ぞくぞくさん

──電脳探偵ナズナ様




この依頼が、あなたの世界に届くことを祈っています。




私達は失敗しました。




拡散の仕組みを甘く見ていた。


ある日突然、拡散が始まり"それ"が社会を静かに止めていきました。




最初は些細なことでした。


けれど、気づいたときには、誰も働かず、誰も喋らず、


誰も、止まった世界に疑問を抱かなくなっていた。




今や、ここには人と呼べる活動をしてる存在は、もう誰もいません。


政府も、教師も、子供も、大人も。


ただ、何かを失ってしまった抜け殻の集まりと化してしまいました。




この依頼は、警告です。


あるいは、まだ終わっていない可能性へ向けた、


最後の希望。




どうか、あなたの世界では気をつけてください。


「ぞくぞくさん」は、見えない形で侵入し、


拡散され、


そして、すべてを止めます。




あなたのような“気付ける者”にしか、


この警告は届かない。




お願いです、ナズナさん──




私達の様にはならないで......




1. 事件──静かに止まり始めた国


最初の異変は、学校だった。




担任が黒板の前で止まり、声を発さなくなった。


子供達も、教科書を開いたまま、じっと下を見つめていた。




次に、近所のスーパーで従業員が一斉に“立ったまま無言になる”。


道路では、信号無視が増え、車が無人のまま放置されていく。




病ではない。暴動でもない。


ただ、人々が「思考と行動をやめる」ようになっていった。




2. データ収集──ぞくぞくさんという名前だけが残された


どのSNSにも、子どもや若者を中心に、ある名前が溢れていた。




#ぞくぞくさん #まじ怖い #何か変だった


#寝れない夜 #ぞくぞくさん見たら世界が止まる


だが、肝心の動画は誰が検索しても見つからなかった。


リンクを辿っても「削除済み」や「存在しないページ」ばかり。




それでも、証言は全国から集まっていた。


証言内容はまちまちだが、必ず登場する名前がある。




──ぞくぞくさん


証言1(14歳・男子)


「画面に笑顔が浮かんでた。ずっとしゃべってるんだけど、内容は覚えてない。


最後、“どうでもいいよね”って言って、そこから……なんか、何も考えたくなくなった」




証言2(29歳・女性)


「見た後、会社のメール全部消して、そのまま寝てしまったんです。


で、起きたら“行かなくていいや”って思って……不思議な気持ちでした」




証言3(匿名・IT企業社員)


「社内でぞくぞくさんの話題がバズって、みんな動画を探してたんですよ。


でも、数日後には誰も出勤しなくなった。サーバーも止まったまま。何も言わずに」




どの証言も曖昧で一致しない。


しかし、“行動をやめてしまう”という結果だけが、共通していた。




3. 推理──意図された“停止”の演出


“ぞくぞくさん”には不可解な点が多かった。




動画の実体が残らない


チャンネルもURLも一切の記録が存在しない


それでいて数百万単位の人間が“見た”と証言している


しかも内容が一致しないのに、行動停止という結果は同じ


これは、ただの偶発的現象ではない。




「これは、“何かの意思”によって仕掛けられた何か」


「目的は“混乱”ではない。“崩壊”でもない。


ただ、“動かなくさせる”こと」


4. 仮説──拡散に乗じた静かな介入


名前だけを拡散させる


動画の痕跡は残さない


見た人間に“沈黙”を植え付ける


その静寂が周囲に伝播していく


本人が動画を拡散したのではない。


人々が“話題にした”ことで、自ら拡散させてしまったのだ。そして恐怖がさらに拡散を強める拍車を加え、最終的に自分達でそんな状況に陥ってしまったのだ




──別の世界の最後のニュース


依頼のあった別の世界の日本を海外メディアがこう報じた。




「現在、日本では不可解な社会的停滞が続いており、原因として“Zokuzoku-san”と呼ばれる動画現象が関連していると見られています。


SNSを通じて拡散された情報により、国が静かに機能を失った初のケースです。」


それが、最後に記録された“ぞくぞくさん”という名前だった。




この事件の正体は今も不明だ。


“誰か”が意図的に仕掛けた可能性がある。


それが国家的実験だったのか、個人の挑戦だったのか、異質な存在の干渉だったのか──




ただ、ひとつだけ言えるのは、




「人は、自らの手で“拡散”し、やがて自分達でその結果を招いた」


ナズナの言葉を最後に記して終える。




「恐ろしいのは、ぞくぞくさんじゃない。


面白がって、好奇心の進むままに貪り、自らを破滅させてしまう己自身よ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ