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勇者セフィル

アモヴォールとの戦闘から、数日後。




都心の公園──広大な地面に、空間そのものが裂けたような暗黒の巨大な穴が口を開けていた。


黒煙がゆらめき、本のような形状の奇妙な物体がゆっくりと宙を舞い、周囲には異質な静寂が広がっている。


時折、耳鳴りのような低い振動音が響き、夜の街を不安定な影で覆い尽くしていた。




ナズナは、その光景を見据え、静かに息を吐いた。




ナズナ:「……この先にセフィルがいる......感じる」




不意に、その場の空気が微かに揺れた。




ラスナ:「……よくここまで来たな。」




ルミエール:「ナズナには驚かされてばっかりだったわ ふふ」




アウリサ:「どんな結末でも、ナズナちゃんの進む道を私は信じるよ」




総一郎:「なんだか、全てがあっという間でしたね。」




総一郎は、ナズナ達の仲間として、いつの間にか世界を担う事になった重圧がのしかかっているはずだが、それでも笑いながら真っ直ぐ前を見据える瞳には、決意と無垢な優しさが宿っていた。




ラスナはセフィルと対話するため召喚された"ノノ"と言う少女を護衛するように横に立ち、鋭い視線で闇の中を見つめる。ラスナはナズナとそっくりでありながらも風浪は全然違う。彼女は異界のもう一人の英雄のナズナである。その姿は、月明かりに照らされてとても美しく勇敢な、いで立ちだった。




ノノは無垢な瞳で空を見上げ、何が起きているのかは分かっていない様子で、持ってきた時計をゴソゴソといじっている。




ナズナ:「みんな。じゃあ、いこうか.........」




戦いの幕が、静かに、だが確かに上がろうとしていた。




──灼熱の知識塔


ナズナたちは暗黒の穴を抜けた瞬間、言葉を失った。




広がる空間は、果てのない書庫──だが本棚は折り重なり、鎖と黒い触手が絡み合い、空中に巨大な渦を描いていた。天井は見えず、地面は溶岩のように赤熱し、無数の本が炎と雷に包まれて浮遊している。




そして、その中心に──異形の巨影が立っていた。




無数の書物を抱え、鎖が垂れ下がり、蠢く触手が空を裂く。大きな頭部は剥き出しのようで、無数の歯のような構造が見え隠れする。


この空間と、その存在を一目見るだけで、誰であろうが常軌を逸してるモノを感じるであろう。


その存在は一歩も動かず、ただ、全てを睥睨するかのように佇んでいた。




低い振動が空間を満たす。




「……チシキ……」




その一言が響いた瞬間──雷鳴のような衝撃が炸裂した。




空間が引き裂かれ、炎と氷、雷と闇、光と重力が交錯する無数の魔導式が、音もなく、しかし絶対的な速さで展開された。




ラスナがすぐさまノノを抱き寄せ、後方へ飛び退く。




ラスナ:「総一郎、いけ!ノノを連れて下がれ!!!!奴の魔導は尋常じゃない、絶対に触れるな!」




アウリサが前へ飛び出し、青白い光の槍を放つ。しかし、その光は触手の一本に絡め取られ、闇に飲み込まれた。




アウリサ:「っ……!」




総一郎は歯を食いしばりながらも、一瞬で、天の加護を思わせる神威の盾を生み出し、ノノを抱きかかえる。




総一郎:「……ノノちゃんは任せて下さい!この命に代えても守り抜きます!!」




ナズナは前へ──その圧倒的な力の壁に、迷わず踏み込んだ。




聖剣ヴァルゼ・グリムが彼女の手で蒼白い光を放ち、刃が空気を震わせる。




ナズナ:「……セフィル!!やめて!!話を聞いて!!あなたは世界を守ろうとする勇者だったんでしょ!!」




その声が響いた瞬間、空間に亀裂が走り、暗黒の魔力が彼女を貫こうと押し寄せる。




だが、ナズナの瞳は揺るがなかった。




ナズナ:「絶対に届いてるはずよ!!!あなたはそんな姿になって一人になっても、気の遠くなるような昔の約束を守り続けているんだから!!!」




ヴァルゼ・グリムを両手で握り、セフィルの攻撃を止めようと、飛び交う触手に渾身の一撃を叩き込む。


蒼白い光が炎と雷の渦を切り裂き、刃の軌跡が火花を散らした。




ノノはその光景を、ぼんやりと見つめていた。


無意識の中で、薄く震える唇が、微かに呟いた。




ノノ:「……セフィル……」




触手は何度でも自己再生を繰り返し、それは閃光のように空間を裂く、全属性の魔法は絶え間なく嵐のように空間全域に降り注ぐ。


ナズナとラスナは魔導を唱え次なる一手を見定めるべく剣を構える、ルミエールは光の弓で皆に近づく触手を光速連射で打ち落とし、アウリサの支援魔法が光の盾を全域に張り巡らせ、総一郎が神威の盾でノノを守り抜く。




ナズナは歯を食いしばり、前へ進む。




ナズナ:「セフィル、私があなたを止める。悲しい連鎖を私が止めてあげる!!!」




聖剣が唸り、火花を散らし、炎と雷の中で彼女の声が響き渡った。




ノノ:「……セフィル……」




──繋がる祈りの刃


無数の魔導式が交錯し、炎と雷の嵐が荒れ狂う混沌の中──




総一郎が震える手で生成陣を展開した。光の粒子が集まる




総一郎:「……ナズナさん、時間をください。セフィルの想いが感じ取れてきました!あぁ......これは........なんて......」




ナズナ:「頼む!総一郎!!!」




神威の盾でノノを守る。その強度は神話の攻撃すら防ぐ絶対の守り


それを行いつつ、セフィルの遥かな過去から誰にも伝えれず蓄積された想いを受け取り、総一郎は今、誰も想像だにしない何かを生成する寸前だった。




アウリサ:「みんな、油断しちゃだめよ!!!こいつホント強いわ。勇者とか魔王ってレベルじゃない」




ルミエールの光矢が星屑のように空間を裂き、セフィルの触手に次々と突き刺さる。


ラスナは秘儀の一閃を繰り出すタイミングをずっと狙っている




ノノはぼんやりと、その光景を見つめていた。


しかし、微かに、確かにその名前を口ずさむ。




ノノ:「……セフィル……....」




その瞬間、空気が震えた。


ナズナの周囲で五大元素が咆哮を上げ、光の翼が背に広がる。




ナズナ:「ああああああああああ!!!!!!」




パラグラムが発動する。時の流れが弾け、過去と未来の断片が空間に散り、ナズナの瞳に無数の可能性が閃光のように走り、ナズナは初めから全てがわかったように攻撃を避ける




感情を見せたように躍起になるセフィルは全属性の魔導式を高出力で放ち、世界そのものを引き裂くかのような破壊の奔流がナズナを呑み込もうとする。




だが──




アウリサの魔導から発せられた、巨大なプリズムのボールがそのすべてを吸い込み我が力とし、セフィルに襲い掛かる




アウリサ:「私の魔法の方が強くて可愛いんだからね!!!」




アウリサ:「別にあんた(セフィル)の事(魔導)なんかすごいとかおもってないんだからねっ!!!」




ナズナ:「アウリサっ!こんな時にツンデレしないで!!!」




ラスナ:「ハハハ......そうじゃ......この戦いも一興。こんな相手二度と戦えんかもしれん!!!皆、楽しめ!!!」




ルミエール:「もう!!!あんたたち、いっつもホント無茶苦茶!でも....今だけは、存分に暴れて頂戴!!!」




ナズナは聖剣ヴァルゼ・グリムを高く掲げ、疾風の如く間合いを詰める。


セフィルの触手が閃光のように迫るが、パラグラムが再構築し、軌跡をずらし、突破口を開く。




ナズナの剣が振り下ろされる瞬間、セフィルの“核”──歪んだ知識の結晶体が僅かに脈動した。




ノノの声が、再び微かに響く。




ノノ:「……やめて……」




刹那、セフィルの瞳がノイズを走らせ、わずかに、わずかに揺れた。




ラスナ:「決めるか。」




ラスナが結界の中から一歩踏み出した瞬間、空間そのものが震えた。




身体が紅蓮の光を纏い、巨大な魔導陣が空間全体に展開される。


雷鳴のような音が轟き、触手が一瞬で硬直した。




ラスナ:「これが……我が全霊の一閃──《雷獄破断らいごくはだん》!!!




空間が引き裂かれた。


全ての触手や鎖、宙を舞う本が無数の雷刃に貫かれ木端微塵となり、セフィルから繰り出された全属性の魔導が一瞬で物質であるはずの剣に切り裂かれ無効化し、音も光も概念すら置き去りにする光速の閃光が全てを飲み込んだ。




ナズナの瞳が光を帯びる。


彼女の背に五大元素が再び咆哮を上げ、蒼白い光の羽がさらに巨大化し、パラグラムが極限展開される。




ナズナ:「──絶望も、孤独も私が終わらせる!!!!」




足元から放たれた魔導の光が、風のようにナズナを押し上げ、彼女の身体が一瞬、光そのものに溶ける。




ナズナ:「──加速する。光を超え、祈りを超え、私は“今”を切り裂く!!!」




次の瞬間、ナズナの姿は消えた。




ただ一閃の光だけが、世界を切り裂いた。


聖剣ヴァルゼ・グリムが、雷光の残滓を纏い、超音速すら超越した魔導の閃光となって、セフィルの核を貫いた。




「──────ッッ!!!」




爆裂音も、空間の軋む音も、全てが一瞬で消え去り、ただナズナの残像だけが空間に残った。


セフィルの歪んだ身体が、ぐらりと崩れ落ちた。




蒼白い光がセフィルの胸元から溢れ出す




その時──




セフィルの口が、かすかに、かすかに動いた。




セフィル:「……オレノ……ケン……だ……」




ナズナの目が、わずかに潤む。


ノノは表情一つ変えないが、頬から涙をこぼした。




──しかし、空間が歪む音が再び響いた。




セフィルの崩れ落ちた身体が、蒼白い光と共に、ぐにゃりと再構築され始めた。


触手が伸び、砕けた本が再生し、無数の魔導式が再び編み上げられていく。




ラスナ:「なっ……!? 再生……!? 馬鹿な、あれだけの一撃を受けて!!!」




アウリサ:「うそでしょ……あんなの、もう……」




ルミエール:「……これが、不死の呪いだというの……!?」




ナズナは肩で息をしながら、剣を握りしめ、再生するセフィルを睨みつけた。




ナズナ:「……こんな……っ!」




──その時だった。




総一郎の生成陣が、ついに輝きを放った。




総一郎:「……できた……! ナズナさん! 皆さん!!」




眩い光の柱が空間を満たし、生成陣の中心から、金髪で緑の瞳の青年が現れた。


まるで、光の化身が人の姿をとったかのように。




一同、言葉を失い、見つめる。




ナズナ:「……だ、誰……?」




青年は伸びをしながら、軽く笑った。




セフィル:「あぁーー……なんかすっごく寝てたぜ……。」




その声、その空気──気配 ナズナも、ルミエールも、アウリサも、ラスナも、皆が一瞬で理解した。




アウリサ:「……まさか……勇者セフィルなの……」




青年──過去の勇者セフィルは、ふとノノに視線を向けた。




セフィル(青年):「おい、ノノ。お前もここにいたのか? ははは、何してんだ?」




ノノは目を見開き、神妙な顔でその懐かしき瞳を見つめる




ノノ:「......あなたは......」




セフィルは一瞬、笑みを浮かべたが、すぐに真剣な表情に変わり、周囲を見渡した。


歪んだ現在のセフィルの魔物から発せられる自分と同じ気配、ナズナたちの傷だらけの姿、自分の知っているノノとは違うノノ、聖剣ヴァルゼ・グリム──全てを察知した。




セフィル(青年):「……そっか、なるほどな」




セフィル(青年):「……下手こいちまったわけか......俺っていっつもそうだもんな」




セフィル(青年):「……そんで、ノノやみんなを怒らせてばっかだったもんな」




セフィル(青年):「......ノノ、ごめんな。」




彼の口から心底悲しそうな懺悔の声が漏れた。




ノノ:「......いいの.....もう。」




理解しているのか、していないのかは定かではないが、ノノの瞳からは、大粒の涙が溢れ、静かに頬を伝う。何度も何度も




そして、勇者セフィルはナズナを見据え、力強い瞳で言葉を放った。




セフィル(青年):「──姉ちゃん、その剣、貸してくんねーか?」




ナズナは息を呑み、手の中のヴァルゼ・グリムを見つめる。




ナズナ:「君は……セフィル……?」




だが、ためらいは一瞬。


ナズナは剣をそっと差し出し、勇者へと託した。




セフィルは剣を受け取ると、重さを確かめるように一度振り、深く息を吸い込み、静かに構えた。


その動きは、遥かな昔、他の世界で勇者一行と称えられ、魔王を倒した仲間たちが幾度も見た、あの“勇者セフィル”そのものだった。




セフィル(青年):「……行くぞ。これは、俺のケリをつける戦いだ。もう迷わねぇ.....」




ナズナたちは、それぞれの場所で剣を握り、拳を握りしめ、背を伸ばした。


ナズナは魔導により即席の光の剣を作りだす、ラスナが次を見定める様に頷き、アウリサが魔導を構え、ルミエールが光の弓を握りしめた、総一郎は自分の召喚した勇者セフィルに最大の祈りを掲げる。ただ頑張れと。




勇者セフィルは走りだす。間違えてしまった自分と戦うために......




ノノが小さな声で震えるように、しかし確かに叫んだ。




ノノ:「セフィル────!!!」




セフィルは剣を構え、歪んだ自分──その魔物のような姿を真正面から見据え、疾走する。




触手が閃光のごとく振り下ろされ、雷鳴が炸裂し、魔導式が幾重にも絡みつくが──




セフィル(青年):「──甘いんだよ、俺はっ!!!」




叫びと共に、剣を振り抜く。


その軌跡は稲妻のように鋭く、触手を裂き、炎の奔流を斬り裂き、突風を巻き起こしながら、セフィルは疾風の如く突き進む。




自分の癖、弱さ、戦いの癖──全てが見えている。


「次は左からくる!」


「この位置で構えると、動きが止まる!」


「ここでためらうから、いつも負けちまうんだ!!!んで、ノノに回復して貰ってばっかだ、情けねぇ」




セフィル(青年):「てめぇは!ホントにバカだ!!!」




声が張り裂け、剣が唸る。




ナズナやラスナの斬撃支援が後方から閃光のように飛び交い、ルミエールの光の矢が触手を撃ち抜き、アウリサの魔導が閃光の防壁を張り巡らせる




セフィルは己の動きを全て読み切り、触手をすり抜け、雷撃の間隙を縫い、火柱を踏みつけてさらに加速する。




セフィル(青年):「そうだ──俺はこうやって、何度も立ち止まって、何度も仲間に頼って、何かを頼りにして、自分で切り開いて来なかった!!」




魔導式が光を放ち、彼の背後で爆ぜるが、セフィルは止まらない。


足元が砕け散り、光の粉塵が舞い、空間が軋む中、疾風のごとく駆け抜ける。




セフィル(青年):「だから今、俺はぜってーーー止まらない!!」




一閃、二閃──剣が空間を切り裂き、魔導を断ち、己の“過去”を断ち切るために、彼は突き進む。




セフィル(青年):「自分で切り開かなきゃいけないんだ!!!知識じゃねーーー!!!守る気持ちだ!!!」




声が雷鳴のように響き、ヴァルゼ・グリムが蒼白い閃光を纏い、魔獣のようなセフィルの核へと、一直線に駆ける。




一同はその背を見つめ、息を呑んだ。




──疾風、閃光、咆哮。全てが一つに重なり、決戦の幕が、鮮烈に切り裂かれた。




ナズナたちが勇者セフィルを全力で支援する




ナズナは光速というより、光自身となり五大要素の魔導を纏いながら、セフィルの障壁を完全粉砕する




ラスナは稲妻の剣を振り上げ、雷光の奔流がセフィルを邪魔する存在に竜の様に襲い掛かる




アウリサは空間をプリズムで満たし、あらゆる敵対魔力を自動察知し瞬時無効化する。




ルミエールの光の加護で、セフィルの体を保護し進みだせる軌道を光で案内する




ナズナ:「セフィル!!今だ!!!」




総一郎:「勇者セフィル!!!行けええええ!!!」




光と雷が交差し、勇者セフィルは全身の力を込め、疾風のごとく突き進む。




閃光が空間を突き裂き、聖剣ヴァルゼ・グリムが唸りを上げ、蒼白い光が爆発的に広がる。




そして──




セフィルの剣が、魔獣のような現在の自分の核を貫いた。




光が弾け、全員の祈りが、勇者セフィルの背に重なり、決戦の刃が深く深く、暗黒の核心を貫いていった。




光の柱が天を突き破り、全ての魔導式が消滅し、触手が塵のように崩れ落ちる。




崩れゆくセフィルの瞳が、微かに、しかし確かに揺れた。




現在のセフィル:「……オレノ……ケン……?……イヤ……オレ……ジシン……」




セフィル(青年):「てめぇは!!!ノノを泣かせて、何してんだ!!世界を救うんじゃなかったのか!!?」




勇者セフィルは、剣を握りしめたまま、絶叫した。




セフィル(青年):「お前は本当に!!!いっつも!!!いっつも!!!」




セフィルは泣きじゃくりながら叫ぶ。




ノノ:「セフィル────!!!!!もうやめてーーー!!!」




現在のセフィル:「ノノ.....の声?......あぁそうか.....やっと聞けた.....ずっと聞きたかった......あの優しい声」




現在のセフィル:「チシキ........違う........俺は.......そんな物が......欲しかったんじゃない」




現在のセフィル:「俺に......世界を......救う.......器なんて、無かった。」




セフィル(青年):「お前........」




現在のセフィル:「ただ........ノノの声が.......聞きたかった.....」




セフィル(青年):「お前は........」




現在のセフィル:「終わりにしよう.....」




セフィル(青年):「あぁ........そうだな」




──静寂の中の涙


全てが終わったかのような、深い静寂が空間を支配した。




砕け散った魔導式の残滓が、淡い光となって舞い上がり、薄い靄のように漂う。




その中心で──ノノが、気がつけば走り出していた。




総一郎:「ノノちゃん!!!」




ナズナ:「ノノ!!!」




ただ風のように駆け抜けるノノ。それは全てを振り払って会いに生きたい一心で


涙を溢れさせながら、迷いなく二人のセフィルの元へ向かう。




──そして、ノノは辿り着き、二人のセフィルを、その小さな腕でぎゅっと抱きしめた。




その細い肩が震え、嗚咽が漏れた。




ノノ:「もういいんだよ.....セフィル……ありがとう……ありがとう……」




セフィル(青年)は、力の抜けた手で、そっとノノの頭を撫でた。 現在のセフィル──歪んだ姿の彼もまた、かすかに口元を緩めた。




現在のセフィル:「……その声……その瞳……ノノだ……」




世界の脅威だった貪るだけの存在に、一筋の涙が流れる。 その瞳は、確かにかつての彼──勇者だった頃の、優しく澄んだ色を取り戻していた。




現在のセフィル:「あぁ……ノノはやっぱり……きれいだ……」




現在のセフィル:「なにより........きれいだ」




崩れかけた声で、息を整えながら──彼は、最後の力で言葉を紡いだ。




現在のセフィル:「ノノ........ずっといいたかったんだ」




「.........君を.....愛してる」




その声は、微かな震えを帯びていたが、確かに届いた。




ノノの瞳から、止めどなく涙が溢れた。




ノノ:「うん。しってたよ。だってセフィル、ホントにわかりやすいんだもん」




ノノは大きな瞳を涙で濡らし、にっこりセフィル達に笑いあう




──祈りの終焉、光の旅立ち


勇者セフィルは、剣を握りしめたまま、皆の方へ振り返った。




セフィル(青年):「……ありがとう。本当に、ありがとう。お前たち、すごいチームだな!!」




その笑顔は、何よりも清々しく、誇り高く、確かなものだった。




セフィル(青年):「俺は……俺の核を潰した。たぶん、これで……いくら不死身でも、世界に矛盾が生じて……俺らは、消滅する。」




一同、息を呑む──だがセフィルの声は力強く響いた。




セフィル(青年):「でも、これでいいんだ。何より……ハッピーエンドだ。お前らがそう導いてくれた。」




セフィル(青年):「俺の祈りが世界に届いて……お前らが助けてくれたのかな?ハハ……別の世界の勇者たち──お前らなら、きっとできる。」




その言葉に、ノノが涙を拭いながら、震える声で口を開く。




ノノ:「私も……やっと思い出しました。私は……時の番人でも、なんでもなかった……。」




ノノの瞳は澄み切り、まっすぐにセフィル達を見つめる。




ノノ:「ただ、時計を見て……ずっとセフィルを待ってただけだったんです。」




ノノは涙を流しながら、笑顔を浮かべた。




ノノ:「あなた達は、それを叶えてくれた。やっと……私が"ある意味"が分かった。……みなさん、ありがとう。」




その瞬間、勇者セフィル、現在のセフィル、ノノの三人を淡い光が包み込む。




光はゆっくりと輝きを増し、温かな風のように吹き抜けた。




ナズナ:「……あなた達の意志、絶対に叶えるから……私たちを見守ってて!!!」




セフィルは力強く笑い、拳を掲げて叫んだ。




セフィル(青年):「ああ、任せろ!!!」




ノノ:「ええ……任せて!!」




光が最高潮に達し、彼らの姿はゆっくりと消えていく。




最後の瞬間──勇者セフィルは空に向かって叫んだ。




セフィル(青年):「俺は勇者セフィル!!世界やお前らを……いつまでも見守る勇者の名だ!!!」




その声は、世界に響き渡り、光と共に彼らは旅立った。




ナズナは空を見上げ、胸に手を当てた。




ナズナ:「……ありがとう、セフィル。ノノ。……私たちは……必ず、未来を繋いでいくから。」




ナズナ達はその空間から排出され元の世界へ戻った。




そこは、何も無い公園に戻り、夜明けの朝日が昇っていた。




アウリサ:「……ぐっっすん.......ふぇーーーん。えーーーん。涙が止まらないよーーーー。ふぇーーーーん」




総一郎:「かっこいい人だった......ボクも見習いたいな.....」




ルミエール:「あの子達の世界の人たちは、彼らがいて、とても心強かったんでしょうね...........」




ラスナ:「良い、勇者であったの.........」




ナズナ:「あぁ........すごくかっこよかったよ.........」

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