表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/131

強獣戦その後 いざ、セリカの本陣へ

通信が繋がった。




『──ナズナさん。』




デバイスから聞こえたのは、総一郎の声だった。




『俺は……生きてます、あいつは倒しました』




ナズナは、震える手でデバイスを握りしめた。




「……よかった……!!」




あの異界の王をどうやって撃破したのか、一瞬疑問に思ったが、総一郎が生きていたことがナズナにとっては何より嬉しかった




その直後、千界からも連絡が入る。




『探偵無事か?TASK-Vの千界だ。異界召喚、撃破確認。俺たちは全員無事だ。』




ナズナは、喜びのあまり崩れ落ちそうになった。




ナズナたちは市街地の一角に集合した。




総一郎、ウズメ、結月、ナズナ。




少し傷だらけだったが、全員が生きてここにいる。




「ナズナさんペンダント貸してくれませんか?」




結月が言う




ナズナはどうするんだろう?と思いながらも結月の真剣な瞳を見てペンダントを渡した




結月はペンダントを持ち、そっと目を閉じて祈るような仕草をする




すると白い光の粒が溢れ出しナズナ達全員を包み込んだ




ナズナは思う、この感覚は......不老不死以上かもしれない.......体の傷という傷が不老不死の治癒を上回る速度で瞬時に消え失せ、疲労感も無くなり、消費した魔導も全快に戻った。そしてすべてを許されたかのような幸せな気持ちになった。




不老不死のワクチンの効能も即時性があるが、膨大な魔導を消費した後は、そちらに治癒が向けられるので細かい傷の治癒も遅れる事があるのだ




それにしても、これは奇跡に近い




周りを見ると全員が同じ反応をしている。ペンダントを使ったとはいえ複数の人間をここまで治癒する奇跡の能力を見て、やはり自分の目に狂いは無かったとナズナは思った




「結月ちゃんすごーーーい」




ウヅメが言う




「本当にすごいよ!!ここに来る前より体が軽い」




総一郎も嬉しそうに飛び跳ねる




「こんな能力初めて見たよ。結月ちゃん、ありがとう」




ナズナも本心ありのままの言葉で礼を言う




「えへ、ちょっとは役に立てたかな? ふふふ」




ナズナは改めて実感する、一人ではきっと乗り越えられなかっただろうと。仲間を信じて本当に良かったと......





花芽瑠璃 さらわれる


そのときだった──




携帯が震えた。




発信者は、九条凛。




ナズナが応答すると、凛の緊迫した声が飛び込んできた。




『姉ちゃん……お嬢が……さらわれた』




「……何……!?」




『相手は……人間じゃなかった。赤い……悪魔のような存在に……すまねぇ.....俺がいながら何もできなかった.....頼む、助けてくれ』




その言葉を聞いた瞬間、ナズナの脳裏にセリカの顔がよぎった。




(──間違いない。)




ナズナは低く、静かに告げた。




「検討はついた、必ず助け出すよ」




「何?あの化物について知っているのか?」




「あれは、神代セリカという女がこの世界に召喚した異形だよ。九条さんも持ってるだろ?ANEIのデバイス(TASK-Vが認めた異界と関わる組織、人間に配られる。九条は探偵として)あれで調べたら出てくるよ。今のあいつの根城はSNSで話題になってる石柱辺りだ」




「あんな存在達に敵うのか?俺たち人間が?」




ナズナは気づいていた、セリカが解き放った召喚体。あれらは神様などの類ではないと




厳密に言えば上位ではなく同並列の別世界の王など、位の高い存在で、その世界では普通の存在だ




しかしこの世界に比べると遙に能力が高いので神格的に見えるが、やはり違う。ニュアンスで言えば鎖国で文明が進んでいなかった日本に、最新技術を詰め込んだ海外の人間が来る様な物だ




石柱の門はその異世界の中でも厄介な連中を召喚してしまう装置の様だ




私は知っている、神様というのは、安らぎを与えてくれ、祈れば祈るほど自己は浄化されていき、迷いを断ち切ってくれ、幸せの方へ人を導いてくれる正しく崇高な存在だ。




ナズナは信じている。




だからナズナは異界の連中と戦うときに神に祈ることすらある




それが、ナズナの解釈だった




「大丈夫だ、奴ら異界の王達と戦い7体中4体人間は勝利してる」




「そうか......俺も....もう一度チャンスが欲しい......お嬢を助けたい」




そのまま会話を続け、九条はナズナと合流し石柱の円卓へ向かう事になった




「みんな聞いてくれ。瑠璃がさらわれた、犯人は分かっている。私は九条と今からそこへ向かうつもりだ、その場所はさっきの化け物達の本陣であり、向かえば帰ってこれる保証は無い....




だからここでお別れだ、今日は本当にありがとう。君たちが助かって本当に良かった、街が助かって本当によかった。君達の守ろうとする意志で多くの未来が救われた、心からお礼を言うよ。本当にありがとう」




ナズナが背を向けようとしたそのとき。




「……待ってください!」




ウズメが叫んだ。




ナズナは振り返る。




ウズメは、震える手で、でも必死に、言葉を探していた。




「ナズナさん……私も……行きます!」




「……ウズメ……ありがとう、でもだめだよ」




結月も、隣で頷いた。




「どれだけみんながボロボロになっても私が治します。私たちも、瑠璃さんを助けたいんです……!」




「結月ちゃん、だめだよ。」




そして、総一郎。




「俺たちはもう、ナズナさんに“守ってもらう側”じゃない。」




静かに、力強く言った。




「一緒に戦う仲間ですよ。」




その言葉に、ナズナの胸が強く締めつけられた。




「総一郎.....だめだだめだ。二度と君たちを失うかもなんて思いたくないんだ」




総一郎が言う




「じゃあ、みんなで助かればいいじゃないですか」




ウズメと結月がにっこり頷く




ナズナは、唇を引き結び、わずかに微笑んだ。そして涙がほろりと頬に流れ落ちた




「……ありがとう。」




ナズナは全てを賭けて、信じる事にした




計算ばかりで可能性の低い事に賭ける事なんて今まで一度もしたことが無い。もしこの判断が間違えば全てを失う可能性もある。しかし....ナズナは賭けた




仲間を信じるという事に




いざ、本陣へ


ナズナにもう迷いは無かった




ナズナはデバイスを起動し、千界に連絡した。




『千界、こちら電脳探偵ナズナ。セリカの召喚体に仲間がさらわれてしまった......今から助けに行くつもりだ.........私は千界達を手伝いもできなかったし、戦闘後すぐにこんなことを言う権利は無いと思う......でも、お願いだ.....いや....お願いです......助けてください』




応答は早かった。




『こちら千界。状況は把握している。すぐに動く。』




カデンの余裕ある声が重なる。




『フフ……面白くなってきたなぁ。久々に妹に会いに行くとするか。』




そして、消え入りそうな少女の声。




『お姉ちゃん....会いたい』




ナズナは、深く息をついた。




(これで……戦える。)




✦黒曜石の円卓へ──決戦の地へ向かう


もう日が暮れてしまった夜の街を、ナズナたちは車で疾走する。




運転は九条凛。隣にナズナ。




後部座席には総一郎、ウズメ、結月。




それとは別の車で、千界たちも目的地へ向かっている。




車の窓の外は、破壊されたニュータウンの骸。




倒壊したビル群、火花散る電線、街灯も半分以上が消えていた。




ヘッドライトだけが、闇を切り裂いて進む。




誰も、無駄な言葉を吐かなかった。




全員が胸の内で、戦いの覚悟を決めていたから。




──この先に待っているのは、今までとは桁違いの戦い。




──でも、それでも、行く。




ナズナは強く想う




(瑠璃……必ず、助けるから。)




やがて。




地平線に、奇妙なものが見えてきた。




《黒曜石の円卓》──




ナズナ達、千界達の車はほぼ同時に、そこに辿り着いた。




そして。




待ち受ける影たち。




セリカ。




スヴァレ。




クルサル。




フィルムちゃん。




召喚体ピアノ。




──そして、剣ヴァルゼグリム。




夜の空気が、張り詰めた弓のように震えていた。




──決戦は、ここからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ