表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀のドレスのイブニング・フラワー 〜偽りの令嬢と真実の愛〜  作者: Lucy M. Eden
後日談

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/14

月光の庭と二人の約束

結婚式から数ヶ月。


季節は巡り、王国には柔らかな春の風が吹き始めていた。


エマは今、王宮の片隅にある「秘密の庭」にいた。そこは、アルフレッドが彼女のために用意させた場所で、宮廷の庭師が管理する完璧なバラ園とは対照的に、各地から集められた素朴な野花やハーブが、ありのままの姿で咲き乱れている。


「エマ、またここにいたのか」


聞き慣れた愛おしい声に振り返ると、政務を終えたアルフレッドが、上着を脱ぎ、穏やかな微笑みを浮かべて立っていた。王冠を置いて、ただの「一人の男」としてエマの前に立つとき、彼の瞳はかつての野原で出会ったときと同じ、澄んだ青色に戻る。


「アルフレッド様。見てください、あの日私たちが拾ったタツナミソウの種が、こんなに芽吹いたんです」


エマが指差した先には、小さな緑の芽が力強く顔を出していた。エマの服装は、王妃としてふさわしい上品なシルクのドレスではあったが、袖を少し捲り、土に触れることを厭わない彼女の姿は、出会った頃の「野に咲く花」そのものの純粋さを失っていなかった。


アルフレッドはエマの隣に腰を下ろし、彼女の少し汚れた手を愛おしそうに取った。


「君は、この城に新しい風を連れてきてくれた。形式ばかりを重んじていたこの場所が、今では君の笑い声と、この花の香りで満たされている。……父上も母上も、最近では君が淹れるハーブティーを心待ちにしているようだよ」


「本当ですか? 良かった……」


エマは安堵して微笑んだ。最初は彼女を認めなかった国王夫妻も、エマの飾らない真心と、アルフレッドが見せるかつてない活き活きとした表情を見て、今では彼女を本当の娘のように慈しむようになっていた。


アルフレッドは、エマの耳元にそっと唇を寄せ、囁いた。


「今夜、あの銀のドレスを着てくれないか? 二人きりで、月光の下でワルツを踊りたいんだ」


エマは顔を赤らめながらも、深く頷いた。


「ええ、喜んで。……でも、アルフレッド様。私、気づいたんです。あの日、私が着ていた銀のドレスは、魔法のドレスじゃなかったって」


「どういう意味だい?」


「あのドレスがあったからあなたに見初められたのではなく、あなたが私の心を見つけてくれたから、あのドレスが輝いたんだって……」


アルフレッドは愛おしさが堪えきれないというように、エマを強く抱きしめた。


「その通りだ。君がどこにいても、どんな姿をしていても、私の心は君という花の香りを探し当てるだろう。……愛している、エマ。私の生涯をかけて、君をこの庭のように大切に守り抜くと誓うよ」


夕暮れ時の庭に、二人の幸せな笑い声が響く。


かつて「イブニング・フラワー」と名乗った少女は、今や王子の唯一無二の伴侶として、この国で最も美しく、自由な花として咲き続けていた。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ