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銀のドレスのイブニング・フラワー 〜偽りの令嬢と真実の愛〜  作者: Lucy M. Eden
<第3幕>

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12/14

Resolution

アルフレッド王子による婚約破棄の宣言は、王国に大きな衝撃を与えたが、その後の展開は、誰も予想しなかった方向へと進んだ。


王子の真実の愛の告白と、エリザベス公爵令嬢の潔い解放の言葉は、国民の心を深く打ち、瞬く間に支持を集めた。国民は、地位や義務ではなく、純粋な愛を選んだ王子を「真の騎士」として讃えた。国王夫妻も、息子の揺るぎない決意と、国民の支持を前に、ついに折れた。


エマは、貴族の娘としてふさわしい教育を受け、王室は彼女に新しい称号を与え、王子と結婚する準備が整えられた。


結婚式は、王室の伝統に反し、王都の大聖堂ではなく、二人が初めて出会った野原を見下ろす、古い伯爵領の教会で行われることになった。


エマのウェディングドレスは、豪華な刺繍や宝石で飾られたものではなかった。マリーが心を込めて仕立てた、純粋な絹のアイボリーホワイト。裾には、二人の愛のテーマを象徴するように、野花をモチーフにした繊細なレースが施されていた。頭には、ティアラではなく、白いマーガレットとタツナミソウが編み込まれたシンプルなリース。


(私は、バラにはなれない。でも、これでいい。)


エマは、鏡に映る自分を見て、穏やかに微笑んだ。彼女は、飾らない自分自身として、愛する人の隣に立てるのだ。


祭壇は、王都のバラではなく、エマが愛する野花で埋め尽くされていた。白いマーガレット、優しいタツナミソウ、そして素朴なワスレナグサ。それらが放つ清らかな香りが、教会の古い石壁を満たしていた。


エマは、父に手を引かれ、ゆっくりとバージンロードを進んだ。その先には、騎士の制服ではなく、温かみのある白の服をまとったアルフレッド王子が立っていた。彼の青い瞳は、エマの姿を捉えると、愛と感動で深く輝いた。


隣には、親友のマリーが、嬉し泣きしながら立っていた。


そして、教会の隅には、一人の美しい女性が、静かに立っていた。元婚約者のエリザベス公爵令嬢だ。彼女は深紅ではなく、穏やかなモスグリーンのドレスをまとい、エマに、温かく、そして心からの微笑みを送った。それは、良きライバルからの、偽りのない祝福だった。


誓いの儀式。アルフレッド王子は、エマの手を取り、その瞳をじっと見つめた。


「エマ。私は、完璧な王妃を求める義務に囚われていた。しかし、君は私に、完璧さよりも、純粋な魂こそが、真の愛と幸福を生み出すことを教えてくれた」


彼の声は力強かった。


「私は、君を、王国の義務を果たす道具としてではなく、一人の女性として、愛し、尊重し、そして共に生きることを誓う。私の人生の全ての瞬間を、君という野に咲く光と共に過ごすことを誓う」


その言葉は、エマの全ての苦悩と自己犠牲を、洗い流した。


「アルフレッド様」


エマは、涙をこらえながら答えた。


「私は、華美なバラではありません。しかし、私は、私が愛したこの自然の優しさと強さを持って、生涯、あなた様の心に寄り添い、決して嘘をつかず、あなた様を愛し続けることを誓います」


二人が誓いのキスを交わすと、教会は、野花と、集まった人々からの、温かい拍手と歓声に包まれた。


外に出ると、空は雲一つなく晴れ渡っていた。アルフレッド王子は、エマを抱き上げ、強く抱きしめた。


「これで、もう二度と君は私から離れられない」


「ええ、もうどこへも行きません」


エマは、彼の肩に顔を埋めた。


「私の王子様」


こうして、身分という高い壁も、義務という重い鎖も、真実の愛の前には何の意味もなさないことを証明した二人は、野花が咲き誇る豊かな自然の中で、永遠の愛の誓いを交わした。

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