第一章 1 『見守る二人』
女「お兄さま。こちらの方が例の…?」
男「あぁ、うん、そう。」
女「よくぞここまで持ち直しましたわね…ここにきた時はもう、魂の灯火が消えかかっていたと聞きました。
天では、あちらでもこちらでもこの話題でもちきりですのよ。彼女、本当はまだ先だったんでしょう?」
男「あぁ…有り得ないことが起こったんだ。
起こり得ない事故もそうだし、彼女の思いが強すぎたのか、あの日が特別な日だったからか…僕は力の制御が出来なかった。
でも、ここに連れて来なければ今頃彼女は…」
女「ええ。わかっていますし、責めていませんわ。これは仕方ないことだって皆さんも納得していますし。
ですから、今回のことはお咎めなしですって。せめてこの人の望むように、幸せにしてあげるようにと。
これ、伝言ですわ。」
男「わかった。大丈夫だ。最後までちゃんと見守るよ。」
…あの日の事故で彼女の肉体から引き剥がされた魂は、最初、手のひらに乗るほどに小さく、青白い光に包まれて震えているだけだった。
とても儚くて、今にも消えてしまいそうなその光が、魂の記憶を基に器となる身体を形成するまで、3ヶ月の時間を要したが、やっと状態も安定してきたようだ。
そろそろ目覚める頃だろうか。
でも、その身体は、彼女の魂の行き先が決まるまでのかりそめのもので、長くは持たない。
早く決断しなければ…彼女には時間がないのだ。




