第二章 9 『二人暮らしも悪くない…かも?』
カリュの村で、僕がめりりの側を離れた少しの間に、
それは起こった。
万引き犯の逮捕という、一見よくありそうな話だけれど、
その事件にはめりりが関わっていて。
その後、何故か“めりちゃんの噂”という奇妙な話が瞬く間に拡がり、僕たちは早々に帰宅せざるを得ない羽目になった。
まだこの村に来て二日目。
今朝も買い物を楽しみにしていたのにな。
めりりは、自分のせいだと気にしてるだろう。
でも、彼女には逆境をポジティブに切り替える強さがあるし、今回の件は、めりりは全く非がないのだから、気に病まないといいけれど。
まぁ、でも、ジミーが動いてくれるのなら、案外早く噂は収束するだろう。
…しかし、どう考えてもあの噂の広まり方は異常だった。雑貨屋店主、バロンが触れ回っただけであんなことになるか?いや、それだけとは考えにくいな。
このこともジミーに話しておくか。
おそらく、誰かが故意に誇張した噂話を広めたであろうことを。
めりり「ねね、ジミーさんったら、せっかく来てくれたのにお茶も飲まずに帰っちゃったね…」
スサノオ「真面目だし誠実な男なんだよ、ジミーは。それに、早く帰って報告しないと、今度は村長直々に、ここに来そうだから〜じゃないかな?」
めりり「あはは。それはちょっと困るかな。
まだ片付けがほとんど終わってないし!
そういえばスサノオは、村長さんのこともご存知なの?
さっき大切な人って…」
スサノオ「うん、まぁ、知り合いではあるかな。
その話はあとでゆっくりしよ。
まずは一階部分だけでも片付けておこうか。
それにしても、リビングはずいぶん印象が変わったなぁ。
さっき帰ってきた時は驚いたよ。全く雰囲気が違うから。
これは、寛げる気持ちのいい空間だね。」
めりり「そう?だったらよかったー!
あ!そうそう!スサノオに手伝って欲しいところがあったんだ。カーテンとテーブル下のラグと…」
部屋の中を見回してみる。
僕にとって、家というものは単なる拠点くらいの認識で、家自体に特に愛着も何も感じなかったけれど…こうやって生活感があるのも悪くないな。
何より圧倒的に居心地がよい。
今までの僕は…気分を変えたい時は、気の向くままに行きたい所、好きな場所にテレポートして過ごしていた。僕一人なら、どこでも自由に飛べたし。
誰かと住むことも初めてだけど、これはこれで、なかなか面白い。
自分以外の存在を身近に感じるのは、窮屈かも?と思っていたけど…
めりり「ねーちょっとー!スーサーノーオー!
聞こえてるー?
高い所と、重いもの、独りじゃ無理なのー!
こっちきて手伝ってー!
ねー早く終わらせて、とりあえず何か食べよ??
お腹空いたしーー!」
ぶっ!あはは!笑える!
僕、自分で言うのもなんだけど、結構凄い天使なのよ?
でも今はめりりの同居人と世話役と兄役も兼任してる。
まぁ、こういうのも悪くないか。
いや、悪くないどころか、コレ、楽しすぎるだろ!
スサノオ「今いくよー
あっ!ちょっと!めりり!何やってんの?!
危ないからそんな所よじ登らないで!
落ちたらどーすんの!
自分を大事にしてって、昼間言ったよね??
あーもう!そこは僕がやるから!」
ヤバい、速攻終わらそう!
腹ペコな妹が暴走を始めたし!
さっき馬車を返しに行った時に、トム爺とオリーブ婆ちゃんが具だくさんのスープを持たせてくれたんだ。
これ、めりりはきっと喜ぶな。
早く食べさせてあげなきゃ!!!