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めりりと宇宙の魔法  作者: 高朋(こうほう)
第二章 『新生活』
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第二章 6 『怪しい二人』

お目当ての雑貨屋さんは広場から通りを一本入った路地にあった。

扉を挟んで両側に大きなショーウィンドウ。

お店の名前は…“秘密の宝箱”!!

可愛らしいというか、ロマンチックというか。

誰が名付けたんだろう?


扉をくぐると木の温もりとアースカラーを基調とした、あたたかな空間があった。雑貨と家具、食器やキッチン用品なんかを扱っているみたい。


店の女性「いらっしゃいませ…あら?めりちゃん!スサノオさんも!

昨夜はありがとねぇ。早速来てくれて嬉しいわ。

あ、申し遅れました。私はミモザ。この店は夫のバロンと二人でやっているの。ゆっくり見ていってね。」


めりちゃん!と、声を掛けられてびっくり!

私のことだよね…?まだ、慣れなくて戸惑っちゃう。


めりり「こんにちは、ミモザさん。お言葉に甘えて来ちゃいました。素敵なお店ですね。」


ミモザ「うふふ。ありがとう。奥にも色々あるからごゆっくりどうぞ。

あ〜バロン、悔しがるだろうなぁ。

昨夜はあれから、めりちゃん、めりちゃんって大騒ぎだったのよ。今は買い付けで留守だけど。」


スサノオ「え…と、何故にご主人はめりりのことを?」


ミモザ「あぁ、お兄さんのスサノオさんは聞き捨てならないわよねぇ。ごめんなさい。

あのね、めりちゃんは、バロンが可愛がっている一番下の妹と、可愛らしい雰囲気がとーってもよく似ているんです。

バロンはすっごくシスコンでねぇ。

弟や妹達の事が大好きで、とても大事にしてるんです。

めりちゃんのことも、可愛いなぁ、いい子だなぁって、すっかり大ファンになっちゃって。

ホント、馴れ馴れしくって、ごめんなさいねぇ。」


スサノオ「いえいえ、そうだったんですね。

めりりはこちらに知り合いもいないので、仲良くしてやって下さい。」


めりり「なんか、ちょっと恥ずかしいですけど、嬉しいです。よろしくお願いします。」


ミモザ「うふふ、お二人共ありがとう。

ウチは小さい店だけど、良いものを置いてる自信はあるの。お気に入りが見つかると良いけど。」


そう言って笑うと、ミモザさんは他のお客さんのもとへ行ってしまった。

さて、どうしよう?まずは全体のイメージを決める大きなものを探すかな。

キョロキョロしていると、スサノオが話しかけてきた。


スサノオ「ねぇ、めりり。あのさ…ホントに申し訳ないんだけど、僕はこういうの全くわからなくて…

まだしばらくここに居るなら、僕は他の店に行って日用品や備蓄品を揃えてこようと思うんだけど。どうかな?

すぐに戻るし、二手に分かれようか。」


めりり「あはは。そうだね。そっちの方が効率いいよね。

私はここで色々選ばせて貰ってるから、スサノオも用事を済ませてきて。」


スサノオ「OK!じゃあ急いで行ってくるから。後でね。」


よし!スサノオが戻るまでに色々決めておこう。うーん…あの家なら、ナチュラルで優しい感じがいいよね。

今ある真っ白のソファには、カバーを掛けて、いくつかクッションも置きたいな。

テーブルの下と、暖炉の前にはラグをひいて。床に座れるようにしたらどうだろう?

きっと、くつろげる部屋になると思う!


そんなことを考えながら選んでいると、かなりの大荷物になりそうだった。

うわぁ、どうしよう?まだ、食器もキッチン用品も必要なのに。


そこへ接客を終えたミモザさんが戻ってきて、私の買い物の山を見てこう言った。


ミモザ「めりちゃん、見たところ、お家にはまだあまり物が揃ってないのかしら?

色々必要な物がありそうねぇ。」


めりり「ええ、そうなんです。兄はあまり物に興味がなかったみたいで…」


ミモザさんは少し考えてからこう言った。


ミモザ「もし食器だの鍋だのを買い揃えるのなら、ウチより他のお店をおススメするわ。

ウチの食器は一点物ばかりだから。もし5枚組のお皿のひとつが欠けて買い足したくなっても、同じものがないの。


日常で使うのなら、近くの食器屋さんの品物は、値段も手頃で種類もデザインも豊富でいいわよ。

私もよく利用しているし、品質は雑貨のプロのお墨付きよ。

あと、鍋とかフライパンとかのキッチン用品は、金物屋さんで探すと、品揃えもいい上に掘り出し物が見つかることもあって、私のイチオシよ。


あ、でも、ウチの品物を選んでくれても大歓迎だから、ね?」


ミモザさんの話しは、正直びっくりしたし、嬉しかった。

ミモザさんは、相手のことをちゃんと考えて、適切なアドバイスをくれる人なのね。

こういう人は信頼出来る。

いい人と知り合えて良かったな、私。


ミモザさんのアドバイスに従って、食器やキッチン用品の類いは他のお店で選ぶことにして、スサノオの帰りを待たせてもらうことにした。


“秘密の宝箱”は、なかなかの繁盛店だった。

センスの良い雑貨を、贈り物用に、自宅用にと買い求める客は結構いて、ミモザさんは休む間もなく、クルクルとよく働いていた。


そしてしばらくすると、小さな男の子連れの若いママさんがお店にやってきた。


可愛い男の子だなぁ、3〜4歳くらいかしら?

お買い物には飽きちゃったのか、ちょっぴりご機嫌斜めっぽい。


ママさんは贈り物を探している様子だけど、男の子が足元にいるから迂闊に動けないし、買い物に集中出来なさそう。

ここ、割れ物も多いから心配だよね。


うーーーん、お節介かもだけどっ!


めりり「あの〜こんにちは。

もしよかったら、私、お買い物の間、お子さんと一緒に遊んでいてもいいですか?」


ママ「え…?えっと、あの、いいんですか?」


ミモザ「めりちゃん、いいの?」


めりり「私も兄を待たせてもらっているので。良かったら…」


ママ「ありがとうございます!助かります!

この子、ちょっと飽きてしまったみたいで。

この子の名前はロバート。ロビンって呼んで下さいね。」


それならと、ミモザさんが数冊の絵本を持たせてくれた。


ママ「ロビン、お姉さんと一緒に待っててくれるかしら?」


ロビン「うん!わかったぁー」


ママ「すみません。ロビンをよろしくお願いします。」


ミモザ「めりちゃん、店の前と横にベンチがあるから、良かったら使ってね。

そこからなら、窓から中の様子も見えるし。

よろしくね。」


めりり「はい!わかりました。ロビンくん、お外でご本読もっか!どのお話が好き?」


あ、本…大丈夫かな?

子供向けの絵本だから、多分読めるよね?!

日当たりの良い店横のベンチに座って、絵本の読み聞かせを始めると…

ロビンくんは目をキラキラさせて、時々、本の主人公のセリフをマネしたりして、楽しそうにお話を聞いてくれた。

1冊読み終わって、窓から店の中を覗くと、まだもう少し時間が掛かりそうだった。


次は何にするー?なんて、ロビンくんと話していると、路地を歩く2人組の男の声が耳に入ってきた。


男①「ピーーへんにいい感じの店がガーーだよ。」


男②「ここか。珍しいガーー物もあるし、品揃えが良さそうピーー」


男①「街にピーーいけば、いい金になガーー」


え、今のはなに??あれっ?翻訳機能が壊れちゃったのかな?


声の聞こえた方見ると、その怪しい雰囲気の二人組が“秘密の宝箱”の扉に手を掛けた所だった。

なぜか嫌な予感がして、そのまま様子を見ていると、男たちは二手に分かれて店の品物を物色し始めた。


あぁっ!こんな時に限ってミモザさんとママさんは店に奥の方にいて、入口付近はガラ空きだ。


ロビン「めりたんーごほん、もっとー!」


めりり「あ、うん…ごめん!ロビンくん、ご本、ちょっとだけ待っててくれる?」


ロビン「えーー?ごほんよむぅーー」


まずいな、あの男たちから目が離せないし、ロビンくんも…

あ、そういえば…!


めりり「そうだ!ロビンくん、飴は好き?食べたことある?これなんだけど。」


ロビン「あ!モーモーのあめ!!

これすきーーママといつもたべてるのー!」


スサノオから貰った飴ちゃんが役に立った。

粒も小さいし、いつも食べてるなら大丈夫かな。勝手に食べさせちゃったこと、後でママに謝らなきゃ。


めりり「ロビンくん、ご本はこれを食べてからにしよ?」


ロビンはこれすきーって、にこにこ笑顔で飴を舐めている。

私はその間も店の中の様子を伺っていたのだけど…

あ!あれ、万引きだ…!!

男たちは、お高めな品物を手に取っては、素早く服の内側に隠している。

どうしよう?どうしたらいい?

今乗り込んで行くべき?

もしママさんとミモザさんに何かあったら?

ドキドキしながら見ていると、男たちは互いに目配せして出口に向かい、ニヤニヤしながら店から出てきた。そして、私たちのいるベンチとは反対側の広場の方へ向かって歩き出した。


めりり「ロビン!すぐ戻るから、ここにいて。」


見渡すと通行人も何人かいるし、この路地にはここの他にも何軒も店があるし、お客さんもいる。人目もあるし、今しかない?!


咄嗟に叫んでしまった。


めりり「どろぼうーーー!!!

どろぼうですっ!!!

この人たち、万引きしました!!!!

捕まえてー!!!」


自分でもびっくりするほどの大声が出た。

私に指をさされ、振り返った万引き犯の二人は一瞬怯んだ様子だったが…すぐさま広場の方へ走り出した。


「どろぼう??」


「万引きだってよ!」


「待てゴラァーー!」


私の叫びに、道を歩く人や店から飛び出して来た人たちが加勢してくれたけど。

それでも逃げ足の早い二人はもう、路地の出口付近まで辿りついていて、追うのは無理かと思ったら…、


???「この先は行かせねぇよ!!!」


見ると出口を塞ぐように停められた1台の馬車と、飛び降りてきた黒マントの謎の男。


慌てて止まろうとした万引き犯の一人がその場で転び、もう一人は踵を返すものの、追いかけてきた人達に取り押さえられ、二人は呆気なく捕まった。


謎の男「おい!盗んだものを全部出しやがれ!」


万引き犯は、近所の人であろう数人の男たちに囲まれて、もう逃げることはできないだろう。

この隙に、私はそろそろお店に…と、思ったら。


謎の男「そこのお嬢ちゃん!ちょっと待ちな!」


謎の黒マントに呼び止められた。


ひゃい!!わ、私、何もしてませんから!

いや、むしろ何もしなくて、すみませんっ!

どろぼーとか、思わず叫んだけど、なんのお役にも立ってません!

あ、もしかして、それがまずかった???


恐る恐る振り向くと…


謎の男「ん??お嬢ちゃん?あれ?めりちゃん?めりちゃんじゃねぇか!」


え…?私をめりちゃんって呼ぶ人って…


めりり「あ、あの、もしかして…バロンさん?」


バロン「おー!やっぱり、めりちゃんだ!ってぇことは…めりちゃんがコイツらを?」


めりり「えっと、この人たちがバロンさんのお店で万引きするのを、この目で見ました。

でも、ごめんなさい。見ていたのに何もできませんでした。それに…あ!ロビンくん!」


慌てて見渡すと、人だかりの中にママと手を繋ぐロビンくんと、ミモザさんの姿を見つけた。


めりり「あ、ロビンくんとママさん!ミモザさんも。ごめんなさいっ!!

私が言い出したことなのにロビンくんを一人にしてしまいました。それと、飴も勝手に食べさせました。

ロビンくん、びっくりしたよね。ごめんね。」


ママ「いいんですよ。めりちゃんさん、この子を守ってくれたのでしょう?

聞きました。ロビンに『ここにいて』って、言ってくれたんですね。騒ぎに巻き込まれないように。」


ミモザ「めりちゃん、こっちこそごめんなさい。あの二人が店に入ってきたのはわかってたけど、まさか万引きするなんて…怖かったでしょう?

勇気を出して声をあげてくれて、ありがとう。」


バロン「めりちゃん、お手柄だったよ。アイツらウチの商品だけじゃなく、他の店でもやってやがった。今、自警団がきたからもう大丈夫。安心だよ。」


めりり「そうですか。私は叫んだだけだから。捕まえられたのは、バロンさんや皆さんのおかげです。」


バロン「まあ、一旦店に戻ろうや。スサノオさんも、もう戻ってくる頃だろうよ。

さっき偶然スサノオさんに会って、めりちゃんが大荷物で店にいるだろうって聞いたから、馬車を回してきたのさ。タイミング良く役に立ったな。

俺は馬車を持ってくるから、先に戻ってな。」


ロビンくん達とはお店の前で別れ、ミモザさんと二人でお店に戻って来ると…程なくしてスサノオがすごい勢いで飛び込んできた。


スサノオ「めりりっ!めりり!大丈夫か?!

今この辺で窃盗団の大捕物があったって…」


めりり「うわ、あ、スサノオ?!びっくりした…え?大捕物?確かに、万引き犯が二人、捕まったけど、窃盗団って…」


ミモザ「スサノオさん、おかえりなさい。

あはははは。窃盗団に大捕物って!あっという間に話が大きくなってるわねぇ。

スサノオさん、その大捕物はね、めりりちゃんがお手柄だったのよ〜」


スサノオ「え?どういうこと?めりり、何があったの?」


私たちが事の顛末をスサノオに伝えていると、バロンさんがマントをひるがえしながら戻ってきた。


バロン「よぉスサノオさん、いらっしゃい。馬車は店の横につけてあるよ。

いやぁ〜めりちゃんが大手柄でよぉ。

ウチは今日が初めてだったけど、このところ、あちこちの店が万引きの被害にあってて、それも結構な額で困ってたらしいんだ。

どうやらそれが奴らの仕業らしくて。自警団も警戒してたんだと。


めりちゃん、やったな!みんな感謝してるって言ってたぜ。本当にありがとな。」


…ん?みんな??もしかしてバロンさん、この短時間に、話、めっちゃ広めてます???


ミモザ「ねぇバロン?あなた、まさか、めりちゃんのこと、あっちこっちで話してないわよね?」


バロン「え?あ〜だってよぅ、近所の奥さん連中とか野次馬とかが聞いてくるからよぅ…」


ミモザ「話してるのね?予想はしてたけど。

あ〜もう!スサノオさん!めりちゃん!ごめんなさい!

たぶんね、めりちゃんはもう、ここら辺で知らない人が居ないくらい有名人だわ。もしかしたら、話に尾ひれが付いて、えらいことになってるかも…」


スサノオ・めりり「………はい?」


なんだか、すごいことになってしまいました。

まだ村にきて数時間なのに。

ランチも食べていないのに。

買い物も済んでいないのに。


とりあえず、二人には世話になったお礼を言い、選んでおいた品々のお支払いをした。

バロンさんは、今日は代金は要らないとか、もっと持っていけ〜とか言っていたけど、スサノオが上手く話してくれて、定価より少しだけ値引きして貰うことで決着した。


ミモザ「スサノオさん、めりちゃん、これに懲りずに、またいつでも顔を見せてね。

それとこれ、お近づきのしるしと、めりちゃんが今日お手伝いしてくれたお礼よ。受け取って。」


ミモザさんから手渡されたのは、月と星のモチーフがデザインされた美しいペアのマグカップだった。


めりり「うわぁ…きれい!なんて素敵なカップ!ありがとうミモザさん、嬉しいです。

…でも私、お手伝いと言っても中途半端で…

申し訳ないです。」


ミモザ「いいのよ。今日は私が嬉しかったんだから。そのデザイン、素敵でしょう?スサノオさんと、めりちゃんのイメージに合ってる気がしたの。

うん。我ながらいいチョイスだわ。是非、二人で使ってね。」


ミモザさんもバロンさんも、元の世界の私より、おそらく歳下だけど…なんて心の広い温かい人達なんだろう!


改めてお礼を言ってから、私達は“秘密の宝箱”を後にした。

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