第二章 3『はじめての朝』
う、ううん…
どこかから鳥のさえずりのような声が聞こえる。
囁くような、歌うような、心地よい音。
ふわぁ~
ぐっすり眠れたようで、ぐーーっと伸びをすると身体が軽くなっているのが、寝た姿勢のままでもわかる。
ん〜楽しい夢でも見ていたのかな。
ぼんやりしてて思い出せないけど。
あぁ~気持ちいいーーー!
ふと瞼に光を感じ…
ん?光?えええええっ?!
ヤバいっ!!今日は何曜日だっけ?
ゴミ!ゴミ出さないとーー!
こんなに明るいなんて、今何時よ?
ゴミまとめてないよっ!(泣)間に合うかな??
ほんっとヤバいって!!
あああああああ、もおおおおおう!
なぁんで、スマホのアラーム鳴らなかったのよぅーーー
これ、完全に寝坊してるわ!!!
一瞬にして脳がフル回転し始めて、ガバッと起き上がると、見慣れぬ部屋の大きな窓から差し込むやわらかな光。
へ?えっと、ここは……!?
一瞬、どこかわからず混乱するものの、ハッと気がついた。
ここは、めりりの世界っ?!うん。
そう、ここはめりりの世界だ。
あぁ、良かった。夢じゃなかったのね。
それにしても、びっくりした。
あれ?昨夜は私…どうしたんだっけ?
ベッドに潜り込んだ記憶がありませんが?
たしか、お茶を飲みながら、家の模様替えをしよう!って話しになって…
買い物リストを作ってたんだけど、そのうち眠くなっちゃって…
その後の記憶がございません。
ああああ、もしかして、私、スサノオにベッドまで運んでもらったのかしら?
やだぁーーーどうしよ?子供じゃあるまいし!
ま、まさか、お姫さま抱っことか…されちゃった???
ううううう、気まずい。
めっちゃ重かったよね…
イビキ、かいてなかったかな。
大口をあけて、ヨダレも垂らしていたりして。
くぅーーーー!
しょっぱなから何やってんのよ、私!
あーもう、どうするのよ。服もシワシワにしちゃったし。
自分のしでかした失態に、軽く凹みながらベッドを降りてノロノロと部屋を出ると、ドアの外に大きな包みが置いてあった。
ん?何だろう?
これは…私にだよね?
昨夜のルームツアーの時は、廊下には何もなかったし。
一旦部屋に戻って広げてみると…
清楚なブラウスにロングスカート。カーディガンと暖かそうなストールまで。
着替え一式が揃って入っていた。
うわぁ、これ、異世界風というか、私の好きなテイストで素敵!
羽織るものも、昨夜少し肌寒かったから嬉しいな。
早速着替えると、サイズもちょうどいい感じ。
この服…スサノオが用意してくれたんだよね?
昨日の夜にここにきたばかりなのに、これ、どうしたんだろう?
ってか、何でジャストサイズなのーーー?
いつまでも部屋に引きこもっているわけにもいかず、部屋を出て階段を降りていると、ちょうどスサノオが外から帰ってきたところだった。
スサノオ「おはよう!めりり。よく眠れた??」
めりり「う、うん。おはよ。ぐっすり眠れたよ。あの、スサノオ、この服って…」
スサノオ「あぁ、それは昨夜、僕の仲間が届けてくれたんだ。
年頃の女の子に着替えの服もないなんて、信じられない!とか言われちゃったよ。
うん。彼女の見立ては正しかったね。
めりり、とてもよく似合ってるよ。」
めりり「あ、ありがとう。そんなことがあったのね。
あの、私、全然気が付かなくって、ごめんなさい。
この服、とても好き。気に入ったよ。」
スサノオ「だったら良かった!ちなみにめりりをベッドに運んだのも彼女だよ。僕じゃないから、安心して。」
あちゃー
私、怪訝そうな顔してたかな…
スサノオに気を遣わせてしまってるね、色々と。
ごめんなさい。
しかし、スサノオには深夜訪ねてくる女性がいるのね。私、ここに居ていいのかしら…?
ふと、そんなことを思った。
スサノオ「めりり、今日は忙しくなるよ。昨日相談したものとか色々揃えなきゃ!支度ができたら出掛けるよ。」
朝から爽やかな笑顔を振りまきすぎですよ。スサノオさん。
でもその笑顔に、こっちまでつられちゃうんだよね。
めりり「うん!楽しみ!すぐ準備するね。」
はじめての朝が始まった。