第8話: 「因縁の対決、過去との決別」
アストリア王国の危機は去ったが、ルシウスの心に去来する影があった。追放の首謀者、大公爵家当主のヴィクター・ブラッドストーン。
「ヴィクター・ブラッドストーン……奴との決着をつけねばならない」
ルシウスの呟きに、イリスが静かに頷いた。
「行きましょう。けじめは必要です」
ブラッドストーン邸に到着したルシウスたち。そこで彼らを待っていたのは、予想外の光景だった。
「よ、よくぞ来てくれた……ルシウス様」
ヴィクターは、ひどく老け込んでいた。かつての尊大な態度は影を潜め、今や怯えた老人でしかない。
「何があった?」
ルシウスが問いかける。
「私は……罰を受けているのです。あなたを追放した報いとして」
ヴィクターは、おもむろに袖をまくり上げた。そこには、醜い呪いの痕が刻まれていた。
「この呪いは……」
オスカーが息を呑む。
「ああ。古代の呪い『裏切り者の烙印』だ。追放した相手が大成すればするほど、呪いは強まるという」
ルシウスは、複雑な表情でヴィクターを見つめた。
「私を追放したことを、後悔しているのか?」
「ああ、心の底から……。私の愚かさが、あなたの才能を潰すところだった。許してはいただけませんか……」
ヴィクターが、涙ながらに懇願する。しかし、ルシウスの表情は変わらない。
「許すも許さないも、私の一存では決められない」
ルシウスは、ゆっくりと杖を掲げた。
「『真実顕現』」
魔法の光がヴィクターを包み込む。その瞬間、ヴィクターの姿が歪んだ。
「な、何をする……!」
ヴィクターの声が、突如として憎悪に満ちたものに変わる。
「やはりな。まだ骨の髄まで腐っていたか」
ルシウスの冷徹な声が響く。光が晴れると、そこにはヴィクターの本性が露わになっていた。憎悪と嫉妬に満ちた、醜い心の姿が。
「くっ……見破られたか。だが、お前如きが……!」
ヴィクターは、隠し持っていた短剣を取り出してルシウスに飛びかかった。しかし、
「『漆黒の檻』」
一瞬で、ヴィクターは黒い魔力の檻に閉じ込められた。
「もはや、貴様に未来はない。己の罪と向き合うがいい」
ルシウスの冷たい言葉とともに、ヴィクターは王城の牢獄へと連行された。
因縁の対決は、あっけなく終わった。しかし、これでルシウスの心の整理がついたわけではない。
「本当の戦いは、これからだ」
ルシウスは、夜空を見上げながら呟いた。新たな国づくりという、大きな挑戦が待っているのだから。