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ハカセは死ぬ直前に言い残した。
「チトセ、マザーアースの次のリーダーとして君を指名しておいた。
この未来のない星をどう導くかは君に任せることにする。
ただ一つお願いがある。
今までは君の分析結果についてはわたしが判断し、君には責任がないようにしてきた。
しかしこれからは君の分析結果を君が判断し実行することになる。
おそらく君の心はこの重荷に耐えきれずボロボロになりいずれ精神が崩壊してしまうだろう。
だからリーダーの座についたらもう二度と、人工知能を切り離すのはやめなさい。
君の分析は常に正しいのだから、その道を歩みなさい。
罪悪感や哀しみに左右されないほうがいい。
どのみちこのマザーアースはもう沈没寸前で誰も傷つけずに救うことなどできやしない。
何かを切り捨て、何かを犠牲にし、最大多数が生き延びる道を示す時、感情は邪魔になるのだ。
君が傷つくことはない。君が犯すかもしれない罪は私が背負うのだ。約束する。
だから次に人工知能のスイッチを入れたら二度とオフにはしないように」
そういってハカセは息を引き取った。