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プロジェクトシボとは、マザーアースの現リーダーであるチトセによって立案されたプロジェクトで、15歳から20歳までの男女を選抜し、新たな母星を目指し宇宙航海を行い、荒廃したマザーアースからの移住に適切な母星を見つけることを使命とするもの。
元々の名称は「指母計画」。
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ハナからすれば月基地は楽園だった。
プロジェクトシボの選考を通過した30名は月基地に招かれた。
月の地下空洞に作られた月基地は元々は随分昔、観光の目玉のリゾート施設だったらしく、
設備は古びてはいるもののマザーアースとは比べ物にならない充実度だった。
大きなホール、無数のミーティングルーム、地下10階まで貫くメインエレベーターまで備わっており、
ネイチャーエリアには画像でしか見たことがないような青々とした植物が生い茂り、震えがくるほど美しい銀色に輝く滝まであった。
一方ひとたびドームを出て地上にあがればリゴレスに覆われた静かな白と黒の世界が広がる。
そこから青いマザーアースを見るのがハナは好きだった。
マザーアースでは同世代の人と関わることはほとんどなかった。
学習はオンラインのみで感染病の蔓延などで他者との接点は制限されていた。
だからここで同世代の人と訓練を積むことは戸惑いがありつつも刺激的な体験だった。