モーニングコーヒー
父が死んだ。
長生きだったと思う。
別居だった。
二日だけ忌引きを貰った。
すぐに仕事に戻った。
その週の日曜日。
朝起きてリビングに行くと、死が、食卓の椅子に座っていた。
「うちにばかり来ないでくれ」
というと、
「私は前からここにいる。お前が急に私のことを見えるようになっただけだ」
といった。
「屁理屈言ってないで、これ飲んだら出ていってくれ」
と、コーヒーを淹れて出してやった。
「いや、ほんと。ほら、ちょうど、若手の俳優が売れ出すと、実は◯◯っていうドラマがデビューで、といって、そのドラマなら見てたけど、いたっけ?ってなるけど、昔の映像が流れると、確かにいる。あの現象と同じさ」
と死は言った。
例えが鼻についたので、私は淹れたてのコーヒーをぶっかけてやった。
すると死は、小さな断末魔をあげ、みるみる小さくなって、消えてしまった。
そういえば、父はコーヒーが好きだった。
父の影響で私もコーヒーが好きになったのだ。
コーヒーを淹れ直して、仏壇に供えてやった。
父さん、天国でも美味しいコーヒー飲んでるかい。
死はコーヒー苦手らしいよ。
父さんを迎えに来たとき、どうしてぶっかけてやらなかったんだい。
私は、気づくと遺影にコーヒーをかけていた。
当然ながら、父は生き返らなかった。




