未知との遭遇だよ!
こんにちは、ナコです! 実はですね、ここは私の夢の中なんですよ! なので全て私の思い通りに動くわけです! あなたの事も消しゴムとかに出来ちゃうんですよ! 消しゴムいらないからやらないけど! 夢ばっか見ててもアレだし、そろそろ起きますか!
「ヒャーーーーーーーッ!」
皆もやっていると思うが、私は朝起きると甲高い声で叫ぶタイプだ。これは自分の脳に刺激を与えることで、あなたは起きてるんですよ、と教えているのだ。
時計を見るとまだ4時10分。東の空がほんのり明るくなる程度だ。私は日の出に猛反対する。なぜなら、ずっと寝ていたいからだ。8時からお仕事なのだが、どうも行くのがめんどくさい。高校の頃から一緒の大好きなお友達もいるし、みんないい人ばかりだし、お仕事も性に合っている。でもなんとなくめんどくさい、お分かりいただけるだろうか。
⋯⋯ズル休みしちゃおうかな。怒られるかな。いや、具合悪いって言えば大丈夫でしょ。まだ入って3日目だし、環境の変化で体調悪くするなんてよくあることだよね。よし、電話しちゃお。布団から起きるのもめんどいわ。あー眠み。
ガサゴソ、と音がした。おいおい、この擬音はあいつしか居ねぇだろ! 引っ越したばかりなのに、なんであいつがいるんだ! 最初からいたって言うのか!
ガサガサガサ
頭の近くで音がする。頭を動かしてみる。
ガサゴソ
枕から音がしている。手で触るとさらにガサガサいう。枕カバーを開けて中を見て見ると、そこにはみっちりと桜エビが詰まっていた。昨日まではストローを短く切ったやつみたいなのがいっぱい入ってたのに。
分かった、あいつだ。実は私は昨日からある人と同居している。ある人とはあいつのことだ。いや、あいつって何者なんだろうか。昨日お風呂に入ろうとしたら知らないおじさんが入ってたから怖くてそのままにしてたんだけど、まさかこんな事までするとは。人の枕の中身を桜エビにすり替えるなんて、なんて極悪非道なんだ。
「あ、ナコちゃんおはよー」
例のおっさんが風呂場の方から裸でやってきた。風呂で寝てたのかよ。⋯⋯やっぱり私の名前は知ってるんだな。完全なストーカーか。
「あなた一体何者なんですか」
不思議と恐怖心は無い。昨日は突然だったので驚いたが、知っていれば怖さはあまり感じない。
「私は福の神。君の家に住むことで、君に幸福を与えることが出来る」
なんと! 私の家にそんな良い神様が! ありがたやありがたやぁ。
「そうなんですね、これからよろしくお願いします!」
遅刻しそうだったので慌てて家を出た。⋯⋯そういえば、今日休もうとしてたんだった。枕の中身が桜エビになってたせいで忘れてたけど、今日は会社に行きたくないと思ってたんだ。でもいつの間にか向かってた。福の神がそう仕向けたのかな、今日は行った方がいいよって。
会社に着くと、すでに同僚のあさひちゃんが出勤していた。なにやら神妙な面持ちをしている。
『ブッ!』
部署内に大きな音が鳴り響いた。これは誰が聞いてもおならの音だろう。そしてこの音は、あさひちゃんから聞こえた。
「下痢? 大丈夫?」
部長があさひちゃんを心配している。心配するのはいいけど、もっと言い方あるだろ。下痢っておい。レディに向かって下痢って。だいたいおならしたくらいで下痢って発想が生まれるのはおかしいだろ。
「いや下痢じゃないですよ」
あさひちゃんがすました顔で言っている。
「じゃあさっきの音はなんだ! 聞こえてたぞ!」
これってセクハラでありパワハラなのでは? こんなやつ部長にするなよ。
「すみません、下痢です! 逮捕してください!」
結局下痢だったのね。逮捕は行き過ぎなのでは?
部長が通報し、あさひちゃんはやってきた警察官に連れられていった。連れていかれる途中、彼女は私の顔を見た。彼女はとても、悲しい目をしていた。
「少しやりすぎなのではないか」
どこからか現れた福の神が言った。こいついつから居たんだろう。でも部長に物申してくれるならありがたい。
「私は神なのだ。ひどい目にあいたくなければ、あさひの無罪を主張しろ」
さすが福の神様! 私たちの味方なんだね!
「なんだと? 神様だからってなんでも言うこと聞いて貰えると思ったら大間違いだぞ! 俺には何も怖いものは無ぇ! 神様だろうと戦ってやる!」
こいつはこいつでなんでこんなに頑固なんだろう。神様が出てきたら謝るだろ普通は。
「お前は今独身だが、片思いしている女がいるな。その女にすね毛をたくさん生やしてやろう」
神様の本気、エグいなぁ。
「すみませんでした! すぐに釈放してもらいに行きます!」
あさひちゃんが助かるようでよかった。ありがとう福の神。私は安心したのでしばらく寝た。起きると17時を回っていた。定時だ、しかも昼ごはんを食べていないので1時間残業したことになる。
私は得をした気分で帰路についた。その途中、私は見覚えのある飛行物体を見つけた。アダムスキー型UFOだ。本当にこの形してるんだ、UFOって。感動した!
ファンファンファンファンファン
UFOは私の元へ飛んできた。この速度はほぼ音速に近く、地球の技術では不可能だろう。やはりUFOで確定か。
ファンファンファンファンファン
UFOは私の上まで来ると、謎の光で私を照らした。明るっ! こんな明るいの初めてかも。そんなことを思っていると、私の体が浮き始めた。そして、頭が痛い! 今まで味わったことのないレベルの痛みだ! うぎゃぁぁぁぁああああ!!!!
ナコどうなる!?
どうなると思いますか。誰か当てられる人いるのかな。