焼き芋大戦争
こんにちは、ナコです! 前回私の作った焼き芋が社内で好評だったんですが、1人だけ文句を言っている男がいました! その人が今日本物の焼き芋を持ってくるそうです! なので私も対抗して超本物の焼き芋を作りたいと思います!
勝負に勝つために大事なこと、それは余裕を持つこと。私は今日5時に起きたよ。まずシャワーを浴びる。熱過ぎずぬる過ぎず、身体をゆっくり温める。そして、紅茶を飲む。紅茶を飲み終えたら窓を開け、小鳥さんに挨拶をする。
さぁ、行きますか! 私は気合を入れるため、空を飛んで出勤した。早めに会社に着き、倉庫にある生のさつまいもを取りに行った。そしてまたデスソースを飲み、火炎放射で芋を焼いた。常務が私を見て「経営理念に反している!」と怒っていたが、勝負のためなので、と社長が許してくれた。
さて約束の時間まであと2分だが、ヨレヨレスーツ男はまだ来ていない。私を待たせるのか。ひと足先に私たちは芋を食べていた。
「やあみんな、お待たせ」
時間きっかりにヤツはやってきた。遅れたわけではないので私は何も言えない。
「さぁ、芋は持ってきたんだろうなぁ!」
私は高圧的な態度で彼を急かす。
「ああ、今日はこの芋を使う」
彼の持ってきた芋はとても大きく、そして生だった。
「生じゃねぇか! おめー舐めてんのか?」
新入社員、しかも2日目の私がここまで先輩に対して失礼な態度をとっていることに周りが違和感を覚え始めた。
「今から焼く。みんな、落ち葉を集めろ」
ヤツは皆と落ち葉を集め、芋をそこに隠した。隠したかと思ったら放火したので皆慌てていた。
「焼き芋っていうのはこうやって作るんだ、いちいち騒ぐな」
やがて焼き上がり、ねっとりとした色味の強い芋を口へ運ぶ社員たち。
「うまー」
「うみゃ〜がや!」
「あまーーーーーい!」
「おいち!」
皆喜んでいる。私もひと口食べてみる。
「⋯⋯!?」
なんだこれは、うまい、うますぎる! なんなんだこの甘さは!
「バターもあるぞ」
ヤツの差し出したバターをつけて食べてみると、さらにうまみが増す。私の完敗だ。
「私の完敗です」
「俺の方こそムキになって悪かったな。みんなに美味い焼き芋を食って欲しかったんだ。紅はるかを使ったのは大人げなかったよ、ごめんな」
私たちは仲直りをし、バリバリ働いた。頑張ったので、仕事が終わる頃にはヘトヘトだ。さぁ家に帰ろう。新社会人ということで、私は一昨日から一人暮らしを始めた。
「まずは風呂だな」
家に帰ると真っ先にお湯を張った。お湯を貯めている間にシャワーを浴びて身体を洗う。よし、こんなもんだろ。
私は風呂の蓋を開けた。中には、男の顔があった。そして、湯は全然貯まっていなかった。
「ん?」
私は不思議に思い、蓋を閉めた。シャワーを出してるとお風呂のお湯は出ないのだろうか? そういえば、一番風呂って一人暮らしするまで入ったことなかったなぁ。てか、浴槽におっさんいたよね。
もう一度蓋を開け確認する。あ、お湯出てる! 男の顔も変わらずあった。顔以外もあった。
「キャーーー!!」
「うるせぇー!」
叫んだら浴槽の男に怒られた。なんて理不尽なんだ。怒鳴られたことで、幽霊の類ではないことは分かった。なので余計に怖い。なんでこんなところにいるの? 私が可愛いから? 怖いよ⋯⋯
とりあえずお風呂はおっさんがいるから今日は入れないな⋯⋯明日になったら出てってくれるかな。もやしジュースでも飲んで寝るか。
もやし1袋を鍋に入れ、茹でる。茹で上がったもやしを絞り、汁を抽出する。それをガムシロップで味付けする。これがたまらんのよ。
私はもやしジュースを飲み干し、床に就いた。