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9/11

7:風見幽香デー

久しぶりの投稿になってしまいました。

打者・風見幽香が先発する「風見幽香デー」の日です。

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なお今回はおまけで、ネタを一つ投下。


幻想フォーシーズンズ応援歌「燃えよ!フォーシーズンズ」

https://youtu.be/YiSK2STAjNI

 

中日ドラゴンズの応援歌「燃えよ!ドラゴンズ」の替え歌になっています。

 

「どうも、調子はいかがかしら?」

 そして迎えた、命蓮寺テンプルズ戦。

 優勝戦線から外れた2チームの対戦とあって、選手はのんびりムードの中、テンプルズの聖白蓮監督が投球練習をしていた風見幽香に挨拶に来た。

「ええ…無茶な依頼を受けてくださり、ありがとう…。

 最高の一戦をしましょう」

「そうね…それにしても、思い出すわね」

「え、何かあったんですか!?」

 二人の会話に、横で聞いていた控え投手の多々良小傘が口をはさむ。

 レティは、これっ、とばかりに小傘を制するが、幽香も聖監督も柔和に微笑むと、「実はね」と聖監督が話し出した。

「幽香さんが初勝利を挙げたのが、わが命蓮寺テンプルズ戦だったのよ?

 ルーキーなのに貫禄十分でね…おかげで3安打完封でコテンパンに負けてしまったのよ」

 さも懐かしそうに聖監督が答える。

「へぇ…さすが幽香さんですねぇ…」

「いやいや…でも、その3安打ってのがね…。

 その日、テンプルズ打線は完全に抑えたはずが、一人で三安打した選手がいたのよ」

「…もしかして」

 幽香の話を一緒に聞いていたレティはふと思い当たって、横を見た。

「ご名答。

 当時、命蓮寺テンプルズの4番・サード、主砲の聖白蓮選手だったの」

「まぁ、たまたまよ、たまたま。

 あなた方も知っての通り、野球っていうのは一人ではできないものだからね。

 私だけ打っても勝てなかった、それだけよ」

「それでも、8回のホームラン級のファールと、そのあとのセンターオーバー3塁打は肝を冷やしたわ。

 あわやランニングホームランだったし…」

「それでも、後続を抑えた幽香さんはさすがです!」

 小傘が無邪気に幽香をたたえる。

「そうね…まぁ、あなたがピッチャーとして迎える相手が、私達でよかったわ。

 そのリベンジを果たさせてもらいますね」

「望むところ…また完封ですよ?」

 柔和に微笑みながら、アツい闘志を燃やす二人。

 今日はいつもと違う試合になる、レティはそんな予感がした。

 

 そんなこんなで始まった、フォーシーズンズVSテンプルズ戦。

 ピッチャー・風見幽香のコールに、少ない観客はフォーシーズンズファンだけでなく、テンプルズのオールドファンも惜しみない拍手を送る。

「テンプルズの選手も、楽しそうにしてますね」

「みんなお祭り好きだからね。

 昨日、ロッキーズの八坂監督と次の試合の話を電話でしたのだけれど、幽香さんを登板させるという話をしたらうらやましがってたわ」

 四季監督も、お祭り好きの人たちに少し苦笑しながらも嬉しそうに答える。

 

 そして試合が始まる。

 風見幽香の投球はさえていた。

 下手に調子の上がらないアリス・マーガトロイドを登板させるより、テンプルズ打線を抑えられているかもしれない。

 4回を2安打無失点、5回に4番・紅美鈴に甘く入ったカーブを叩かれて一発を浴びるものの、7回までこの1点のみに抑える。

 実はテンプルズ、この1点が風見幽香から初めて奪った1点になる。

 対してフォーシーズンズは、3回にこの日4番に入った堀川雷鼓の一発で先制すると、同点に追いつかれた5回に8番・レティ・ホワイトロックのヒット、9番・幽谷響子のフォアボールでワンアウト1,2塁のチャンスに、1番・秋穣子のライト前ヒットの間に決して足の速くないレティが2塁から生還して1点を加えると、続く2番チルノの犠牲フライの間に幽谷響子がタッチアップでホームインして2点追加して、3-1となる。

 しかし向かえた8回。

 先頭の7番・永江衣玖にフォアボール、8番・ドレミー・スイートにセンター前に運ばれ、ノーアウト1,3塁。

 ここで、9番・わかさぎ姫はスライダーで三振をとった後、1番・ナズーリンに内角を攻めすぎてデッドボール。

 1アウト満塁となった場面で、レティはタイムを取ってマウンドに向かう。

「幽香さん、どうしました…?」

「…これなのよ」

 レティがいつもと変わらないように見える風見幽香に質問すると、幽香は悔しそうに答えた。

「スタミナが切れるとコントロールが乱れるの。

 やっぱり8回から中継ぎの小傘にスイッチするべきだったわね…8回を抑えれば大妖精に直接任せられると思った私の慢心ね」

「…交代、要求しましょうか」

「…やっぱりアンタは野手一筋の選手ね」

「…?」

 急に、毒づき始めた幽香をレティはいぶかしがる。

「ピンチの時こそ、ピッチャーの檜舞台じゃない。

 それをみすみすほかのピッチャーに任せられますか」

 そう言って幽香は強気の微笑みを見せた。

「…」

 この人は本当に勝負師なんだ…レティはその時そう思った。

 1アウト満塁…盟友の多々良小傘なら、ガチガチに緊張してしまって次の打者にホームランを打たれるような場面だが、この人は違う…レティはそう思った。

「…わかりました。

 続けましょう」

 そう言い残し、レティはマウンドを離れる。

 打席には2番・雲居一輪。

 2番で小技が得意だが一発も期待できる、そんな器用なバッターである。

 1球目、外角低めでボール。

 2球目、内角低めのストライク。

 3球目、真ん中低めに変化球のストライク。

 カウント1-2になったここで、慎重にサインを交換し合う幽香とレティ。

(…まさか)

 三つほどサインを拒否された後、まさかと思いストレートを真ん中高めに投げるサインをすると静かに幽香がうなずく。

(…正気ですか、幽香さん)

 一発も期待できるバッターに、真ん中高めのストレート…間違えれば4点取られて逆転される。

 しかしレティには幽香を信じて投げさせるしかなかった。

 そう、この試合は彼女の晴れ舞台だから。

 そして投げられた、4球目…。

 パシュッ、バシン!

 そして雲居一輪のバットは空を切った。

「ストライク!!バッターアウト!!」

 雲居一輪を三振に仕留めたのがギリギリレティにも分かった。

 見事にタイミングを外す非常に速いストレート。

(…っ!)

 レティはその声とともに、手に痛みが走った。

 幽香の速球が、ミット伝いにレティの手を刺激したようだ。

 150km/s。

 ピッチャーでしばらく投げていなかった選手が投げるとは思えない速球だった。

 そして2アウト満塁に場面が変わり、3番上白沢慧音は、初球の高めの緩い球を打ち上げキャッチャーフライとなって、レティのミットの中に吸い込まれた。

 こうしてピッチャー・風見幽香最大のピンチを抑え切った。

 そして、8回裏のフォーシーズンズの攻撃は3者凡退、9回表のテンプルズの攻撃も風見幽香から変わった大妖精がぴしゃりと抑え、ゲームセットとなった。

 こうして、風見幽香に1勝、大妖精にもセーブが記録され、風見幽香デーと銘打たれたフォーシーズンズ主催試合は幕を閉じたのであった。

 


今回の4番打者が別のポジションをやるという「〇〇デー」は

1980年代の名作アニメ「ガンバレ!タブチくん」で

主人公タブチくんが全ポジションを守る「タブチデー」を

やっていたのから着想を得ました。

 

それにしても私の東宝プロジェクト二次創作、

風見幽香の活躍がすごい。

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